第456話 【弟子の成長・3】


 その後、本選まで一時間のお昼休憩があり、俺達はイリスと姉さん達を迎えに行った。


「お兄さま、お姉さま! 本選に上がれました!」


「上から見てたよ。凄く良い動きだったじゃないか、姉さんと初めて一緒に戦うのに連携もちゃんと取れていたな」


「それはヘレナさんのおかげでもあります。序盤、様子見をしようって提案してくれなかつたら、周りに流されて戦ってて連携も取れずに敗退してたかも知れません」


 イリスはそう言うと、一緒に歩いている姉さんの方を見ながら「助言、ありがとうございました」と頭を下げてお礼を言った。


「私こそイリスちゃんには感謝してるよ。第一試合を見て第二試合は共闘して勝とうとしてる人達が居る中で、私の仲間は居ないしどうしようかって凄く不安に思ってた時にイリスちゃんを見つけられたから、あのまま戦ってたら私も予選で敗退してたよ」


「そう簡単に姉さんとイリスが、予選で落ちる事は無いと思うよ。姉さんは魔法使いなのに、異常に体力があるから逃げながら遠距離で対応出来たし、イリスなんて俺達の訓練で予選にいた人達以上の強い魔物と戦っていたからな」


 その言葉にルル姉はウンウンと頷いた。


「ヘレナの体力は、私達パーティーの中でも異常よ。元貴族令嬢って偶に忘れるわ」


「そうね。旅慣れしてるからか、山道でも平気な顔をして歩いてる姿を見た時は、流石ジンの姉だなって感じたわ」


 ルル姉とフィオロは、姉さんに対してそう言うと、二人の言葉に姉さんは恥ずかしそうに照れた顔になった。

 その後、場所は移動して会場の建物の一角にある高級食堂へとやって来た。

 既に多くの貴族や冒険者が食事をしており、俺達も店員の案内で席に着き注文した。

 試合に出ていた姉さん達はガッツリとした食事を食べ、俺達はアッサリめの海鮮を食べる事にした。


「昨日からずっと海鮮続きだけど、やっぱり飽きないな」


「そうだね~。久しぶりって事もあるからだと思うけど、さっぱりしてて美味しいんだよね」


 海鮮続きだか飽きは無く、逆にもっと食べたいと思っている。

 転移で海の近くに行く事も出来るには出来るが、態々飯の為に行く気も無い。

 

「そうだ。イリスと姉さんに聞こうと思ってたんだけど、第二試合に出てた金髪の男。どんな感じだった?」


「本選に残った人の事だよね? う~ん、どう思ったかといえばパッとはしない感じだったかな? 勿論、本選に残る腕は持ってるんだけど地味だなって」


「私もそんな感じです。特に大技みたいなのは無くて、淡々と敵を倒してるって感じでした。ただ無駄な動きは一切なく、試合終了まで息を切らした様子は無くて相当実力が高いって事は分かりました」


 二人の話を聞く感じ、派手さは無いが実力は確かという事が分かる。

 イリスがここまで、他人を褒めるのも珍しい。


「まあ、念の為に作戦を練って方がいいな……」


「えっ? ジンの強さなら、別に作戦とか必要ないんじゃない?」


「そうでもないよ。能力が高くても、油断をしてたら負ける可能性もあるよ」


 そう俺はルル姉の言葉に返すと、何故かその場にいる全員は首を傾げ。


「ジンが油断したからって、負ける筈はないよ」


「ジン君が油断で……うん。ないかな~」


「ジンお兄さまなら油断してても勝てますよ!」


「ジンが油断して負ける未来は想像出来ないな」


 という感じに全員から、俺の言葉は否定された。

 同時に言われた俺は、驚きすぎて返す言葉も出なかった。

 その後、食事を終えた俺達はそのまま暫く食堂で雑談をしていると、別の席で食べていたルークさん達が近くに寄って来た。


「ジン、さっきの金髪についてちょっとわかったぞ」


「えっ、本当ですか?」


 昼食の時間、ルークさん達は知り合いの冒険者に情報を聞きに行っていたらしく、予選を突破した金髪の男について調べて来たらしい。

 男の名前はデイド年齢は20代前半、出身は隣国の竜人国の普通の街で竜人とヒューマンのハーフ。

 得意な武器は槍で身体能力が高く、魔法も多少は出来るがあまり使わないらしい。


「あの、こんな細かな情報ただで貰っていいんですか?」


「別にジン達から金をとるつもりは無いし、俺達も知り合いから無料で教えて貰ったからな、情報は共有しておきたいだろ?」


「それに普段から、ジンには色々と教えて貰ってるからそのお礼でもあるのよ」


 ルークさん達にそう言われて俺は、情報を教えてくれた事を感謝して、改めて作戦を練る事にした。

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