第413話 【噂・3】


 自分の部屋に戻ってきた俺は、早速今後の事について色々と考えをまとめて、自分達の部屋で待機していたクロエ達を呼んだ。


「そんなに噂が拡散されてたんだ。知らなかった」


「私も有名になってから、視線が増えてて特に気にしてなかった……」


「俺はまあ、拠点と宿の行き来してるだけだから、気付いてすらいなかったが、今思い返せばギルドに顔を出した時に今まで以上に視線があったな」


 俺の話を聞いたクロエ達は、最近感じていた事をそう言うと、イリスは申し訳なさそうに顔をして下を向いた。


「わ、私のせいでお兄さま達にご迷惑をおかけしてしまって、すみません……」


「いや、イリスのせいじゃない。有名になってある程度の噂に慣れていたせいで、周りに迷惑を掛けてしまったのは俺達の認識の甘さが招いた結果だ」


「そうだよ。だからイリスちゃんが謝る事じゃないよ」


 謝罪したイリスに対して、俺達はそう言って励まして、これからについて話し合いを始めた。


「それでどうするんだ? また今回もいつも通り、噂が無くなるまで姿を消すのか?」


「いや、今回はそれはしないつもりだ。というのも、既に俺達が隠れて噂が無くなるような規模感ではなくなってきているからな、逆に俺達が姿を消したら、知り合いの所に更に人が集まってくるだろうからな」


「えっ、それじゃどうするの?」


 そうクロエが聞いて来たので、俺は考えたある作戦を皆に伝えた。

 その作戦というのは、弟子志願の者達を集めて一斉に審査するというものだ。


「えっ、ジン君それってイリスちゃん以外にも弟子を作るって事になるけど、大丈夫なの?」


「正直、凄く悩んだけど一度弟子を取った事で、自分ももしかしたらと思う者は今後も現れると思うんだ。ならいっその事、一度弟子になれる可能性を作ってやって満足させようと思ったんだ。これは俺が考えただけだから、クロエ達が嫌なら俺だけがするつもりだ」


 正直、これ以上周りの人に迷惑を掛けたくはない。

 それなら、自分が責任を持って騒動を止めようと俺は考えた。


「ジンだけに責任を押し付けるつもりは無い。そういう事なら、俺も一緒に手伝うよ」


「私も手伝うよ!」


「ジン君だけの責任じゃないから、私達も協力するよ」


 俺の提案にクロエ達は一緒に協力してくれると言ってくれて、俺はクロエ達に「ありがとう」とお礼を言った。


「ジンお兄さま、私以外にも弟子が出来るんですか?」


「可能性があるってだけで、実際に取るかはまだ分からないよ。イリスの場合、当時の境遇とか俺達もイリスと仲良くなってたから弟子にする事にしたけど、全く知り合いでもない相手だったら俺達もある程度、審査はするつもりだ。特にレンの場合、錬金術師として国が頼むレベルの力を持ってる訳だからな」


「厳しく審査するつもりだ。正直、これまで散々言われ続けてきていたからな、審査を厳しくしてそれに残ったら少し考えてやるつもりだ」


 レンは大分鬱憤が溜まっていたのか、怖い笑みを浮かべながらそう言った。


「レン君の場合、色んな国から来そうだよね」


「一応、今回の弟子志願に関しては一度きりと明言して、大々的にやるつもりだ。これで知らなかったとか通用させないようにして、次にもし知り合いや俺達に迷惑を掛けたらそれ相応の対応をするっていうつもりだ」


「成程、それはいい案だな」


 レンは〝相応の対応〟というのを聞くと、次にもし来た時にどんな対応をしてやろうかと考えていた。


「ジン君、それでいつからこれは始めるの?」


「まず、国に頼んで俺達が弟子の審査をするというのを流してもらう。それと同時にハンゾウにも同じように流してもらって、イリスの訓練等も考えて一週間後に一斉に審査をしようとおもう」


 既に俺達に弟子が出来て、弟子志願の者達の多くは王都に集まっているから、移動時間についてはそう考えなくても大丈夫だろう。

 それに移動でこれないとなっても、それはそいつ自身の運がないという事にもなる。

 そうして俺達は、一週間後の弟子審査の準備をそれぞれ始めた。

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