第362話 【深層へ・2】


 家に戻ってきた俺は、執事に手紙が来ていないか尋ねた。

 既に迷宮の家には、俺の知り合いは何組か住んでいる。

 ユリウス・アンジュ・アンセルのパーティーに続いて、ハンゾウの部下達も金の家では無いが、住宅街の権利書を手に入れていた。

 そして姉さん達や、ルークさん達も無事に権利を手に入れていた。


「はい。今は来ておりません」


「そうか、クロエ達は裏庭か?」


「いえ、20分程前に商店街の方へ買い物に行かれました」


「買い物に行ったのか、分かった。ありがとう」


 俺は執事にお礼を言うと、自分の部屋へと向かい運動用の服に着替えて裏庭へと向かった。


「体動かしてないと、夜眠れなくなってきてるからな……ちょっとだけ、やるか」


 連日、攻略続きで疲れないと眠れなくなってきてる俺は、少し体を動かして夜寝やすいようにしようと思い運動をする事にした。

 そして一通り運動をして体を温めた俺は、家に戻り風呂に入って汗を流した。

 それから少しリビングで休んでいると、クロエ達が帰宅してきてそれから更に少しして、レンも戻って来た。


「そう言えば、50層でメイちゃんに聞いた話だともう直ぐで深層地域に入るよね。何か変わるのかな?」


「まあ、魔物の強さは変わるだろうな……後は、素材に含まれる魔力も多くなるらしいから、この深層地域で採れる素材は更に価値があるらしい」


「そうなのか? それは、楽しみだな」


 俺の言葉にレンは笑みを浮かべてそう言うと、レイが「もっと強い魔物と戦えるんだ。楽しみ~」と喜んでいた。

 深層地域と呼ばれている場所は、この迷宮の場合は70層以降の事だ。

 現在俺達が60層ばかりなので、残り10層で更に迷宮の難易度が上がる。


「それなら、今の探索メインじゃなくてその深層地域を目指す動きに変えても良いんじゃないか? 言うても、探索メインから切り替えてもちゃんと攻略するし、俺としては早くその魔力を帯びた素材に会いたい気持ちが高いから」


「レン君がそう言うなら、私も深層地域に早く行きたいかな~。探索も楽しいけど、やっぱり折角なら強い敵と戦いたい」


「私はどっちでもいいかな? 今でも十分いいし、ジン君はどうかな?」


「ん~、まあレン達二人が行きたいみたいだし良いと思うよ。アンジュさん達も大分、追いついて来てるみたいだからここらで数を稼いでおいて、先に深層地域に入って満足いくまで探索するのもありだと思うし」


 そう俺は言って、一旦探索メインを止めて攻略に集中する事に変えると発言した。

 それに対して皆ものり、明日からの攻略は攻略メインで深層地域を目指す事に決まった。

 そうして俺達はその日は早めに休む事にして、次の日は朝食を食べた俺達は準備をして61層から攻略を始めた。


「ねえ、ジン君って昨日王都に行ってたんだよね? 何か変わった事とかあったの?」


「いや、特に変わった所は無かった。ただでも迷宮に惹かれて、人が集まってるとは言ってて、現に見た感じ人は増えてはいたな」


「そうなんだ。人が増えるとどうしても、小さな問題とか起きるから王都の人達大丈夫かな……」


 そうクロエが心配していたので、俺は「今の所、そこも大丈夫みたいだよ」と教えた。


「何か王都には、俺が居るから下手に騒ぎは起こせないっていうイメージが付いてるみたいで、小さな問題も今は起きてないらしい」


「まあ、確かに悪魔倒した人間が居る街で暴れようとは、少しでも考えられる頭がある奴は思わないだろうな……それにジンの場合、知り合いの中に魔女とドラゴン族が居る事も知られてるから、ジンが王都に居る限りは面倒事は早々に起きそうにないだろうな」


「今は良いけど、時が経てば忘れる奴もいるかも知れないけどな」


「それが人間だからね~」


 その後、俺達はそんな他愛もない話をしながら攻略をしていき、今日は67層まで攻略を行った。

 俺達レベルでも難なく行けるとは言え、迷宮も広くなっていて探索する範囲が広い為、一日の攻略階層も序盤と比べたら下がっている。

 頑張れば70層まで行けそうではあるが、それで行ったとしても楽しみが減るだけだからと話し合って、今日の所はここで終わりにした。

 そして俺達は迷宮の家に帰宅して、風呂に入り夕食を食べると、明日も朝早くから攻略に向かう為、早い時間に休む事にした。


「よ~し、今日は残りの階層とボスを討伐して深層地域を探索するぞ~!」


「レイは朝から元気だな……」


「レイちゃん、昨日から凄く楽しみにしてたからね」


「レイ、煩い……」


 一人騒がしいレイに対して、俺とクロエは見守るように言うと、レンは頭に手を当てて睨みながらそうレイに言った。


「……レン。お前もしかして、寝不足か?」


「ちょっと、夜遅くに研究の事が気になって本を読んでしまった。だけど、大丈夫だ。少ししたら、眠気も覚めると思う。ちゃんと数時間は寝てるから、体調には問題ない」


「う~ん……まあ、レンは後方だし大丈夫だとは思うけど、クロエは一応レンの事を気にしてやってくれるか?」


「うん。分かった」


 レンの言葉を聞いて俺はクロエにレンの事を頼むと言い、クロエはそんな俺の言葉に返事をした。

 見た感じ、少しだけ寝不足ってだけで体調にも問題ないし、歩行もしっかりしてるから大丈夫だとは思うが、念の為にもリウスを出しておくか。


「キュ~」


「リウス。悪いけど、レンに付いてやってくれるか? もしも魔物に襲われたら、リウスも戦っていいぞ」


「きゅ!? きゅ~」


 リウスはここまで何度か迷宮で出しているが、戦闘は駄目だと言っていた。

 その理由はリウスの攻撃は、かなり強く手加減も覚えきれてない為、過剰攻撃となるから召喚はしても見てるだけと指示をしていた。

 しかし、今回は特別措置の為、レンを守る為なら戦っても良いと許可を出すと、リウスは嬉しそうにレンの近くに寄った。


「よし、それじゃあ探索をはじめようか」


 俺の言葉に皆は返事をして、俺達は68層から探索を再開した。

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