第315話 【神聖国の動き・2】


 カルムから聞いた内容は、ある程度はレドラスの予想通りの内容だった。

 魔物を使って襲撃を行い、混乱に乗じて神聖国が更に混乱を助長させる予定だった。


「予想を聞いて腹が立ったが、本当にそのつもりだったと改めて聞くと神聖国を消しても良いような気がしてくるな」


「まあ、それは俺も思うがそうすると神聖国を信じてる馬鹿な奴等から、お前が敵だと思われるぞ? 今でさえ、こうしてお前は何体も悪魔を使役してるんだからな」


「使役って……まあ、確かに傍から見たらそう思われるかも知れないな」


 ゲームでは悪魔に気に入られ悪役落ちしたが、この世界だと悪魔を下に付けて使い勝手のいい駒の様に扱っている。

 傍から見たら、悪魔と繋がりのある危険な奴だってのはレドラスの言う通りだな。


「……待てよ。おい、カルム。さっき、緑色の悪魔は悪魔界に戻ってるって言ってたよな?」


「えっ? あ、はい。今は悪魔界に戻ってますが、それがどうしましたか?」


「なあ、レドラス。召喚されて、悪魔界に戻った悪魔はまた別の所で召喚ってされるのか?」


「んっ? 出来ない事は無いと思うが、それがどうした?」


 その言葉を聞いた俺は、レドラス達に「師匠の所に行ってくる」と言って転移で空島へと移動した。


「弟子ちゃんじゃない、どうしたの?」


 空島に移動すると、家の中に入ると読書をしていた師匠が居た。


「すみません、読書中でしたか」


「いや、良いわよ。丁度、暇してたから、それでどうしたの?」


「はい。ちょっと、試して欲しい事がありまして」


 そう言って俺は、先程のレドラス達との会話を師匠に伝えた。

 そして俺のやってもらいたい事、悪魔界に帰っている緑色の悪魔を呼び出して力の封印をしてほしいと頼んだ。


「成程……力が弱すぎて、こっちに来ていた事を知らなかったわ。わかったわ。呼び出せるか、私でも分からないけど試してみるわね」


「お願いします」


 それから師匠と俺は、家の外に出て師匠は〝悪魔の書〟を取り出し、召喚を始めた。

 そして、少しして召喚に成功すると、その場には緑の髪色をした女性の悪魔が現れた。


「えっ? な、何で私こっちの世界に? って、マリアンナ!? ど、どうして貴女が!?」


「ふふ~ん、話はまず力の封印をしてからしましょうか」


「い、いや! 止めて!」


 悪魔は師匠から逃げようとした。

 しかし、師匠から逃げるなんて出来るわけもなく、あっさりと捕まり悪魔の力は封印された。


「わ、私が何をしたっていうのよ……」


「あら、私にまだ隠し通せてると思ってるの? 貴方が神聖国に手を貸していることは、もう知っているのよ?」


「な、何でマリアンナがその事を知ってるのよ!?」


 緑色の悪魔ルゼラは、師匠が神聖国の話をすると驚いた顔でそう反応した。


「その反応をするって事は、話はどうやら本当のようね……まさか、貴女が神聖国に手を貸していたなんてね~。悪魔の中でも頭が良い方だから、こっちの世界に来ないと思ってたんだけど」


「あっ、いや、その~」


 師匠の言葉にルゼラは、目を泳がせた。

 しかし、そんなルゼラの頭を師匠は魔力で正面に固定すると真顔で詰め寄った。


「いつから、手を出していたのかしら? ここ最近じゃないわよね?」


「えっと……」


 ルゼラは師匠からの質問に対し、目に涙を浮かべて全てを白状した。

 師匠の予想通り、ルゼラはずっと昔から神聖国と繋がっていたらしく、度々人間界に混乱を起こしては楽しんでいたのが分かった。

 そして今回も、同じように魔王が倒されて世界が平和になったから、混乱を起こそうとルゼラは遊び感覚で始めたと白状した。


「……正直、分からないな。師匠に敵対されたら、お前もヤバいって分かるのに何でこんな馬鹿な事をしたんだ?」


「私だって、最初はここまでするつもりは無かったわ……でも、マリアンナ達が気づかないから、少しずつ事が大きくなってって……」


「それで最終的には、神聖国って神を称えてる国を根城にして、世界に混乱を起こしていたと」


 正座しながらそう全てを白状したルゼラに対し、師匠はニコッと笑みを浮かべた。


「神聖国の情報、全て言いなさい」


「はい……」


 それから師匠と俺は、ルゼラから神聖国の情報を全て聞き出して、神聖国の事が終わるまで師匠の家でルゼラは監禁しておく事が決まった。

 その後、王都へと戻ってきた俺はレドラス達にルゼラを呼び出し、師匠の所で監禁して来たと伝えた。


「まさか呼び出して、力を奪えるとはな……〝悪魔の書〟を作ったあの馬鹿悪魔が馬鹿で本当に良かったよ」


「確かにな、それこそルゼラに渡っていたらこの世界は終わっていた可能性もあったな」


 その後、宿屋に戻った俺はクロエ達に聞き出した話の内容を伝え、今後の動きについて話し合いを行った。

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