第256話  【聖女の力・2】


「剣聖と勇者、こ二人は迷わず渡せたわ。だけど、それ以降誰に渡せばいいいのかずっと悩んでるのよ」


 クロエの質問に対して、小声でボソッと言った後にそう続けて姫様は言った。


「渡す相手を迷ってるんですか?」


「ええ、正直な話。ユリウスと勇者は王国の戦力の中でもずば抜けているわ、だから彼等には直ぐに渡せたわ。で、残り二枠の内一つはジンに渡そうかと考えてたけど、ジンに回復魔法は必要そうに見えないのよね。私としては、貰って欲しい所だけどジンはどうかしら?」


「俺に渡すなら、クロエかレイに渡してくれた方がいいですね。魔力に関しては、かなり多い方だたと思いますし、回復能力もレンの魔法で間に合ってます。なので俺に渡すより、レイかクロエのどっちかに渡す方がいいかなと思いますね」


 姫様の申し出に対して、俺はそう自分の考えた事を口にした。

 それを聞いた姫様は、「やっぱり、断られたわね……」と少し落ち込んだ様子でそう言った。


「師匠との修行前なら、欲しいと思っていたと思いますよ。ただ今の俺は人よりも魔力は多いですので、俺が貰うのは自分で考えてもあまりおススメはしませんね」


「ジン君の魔力が人より多いのは確かだけど、昨日のユリウスさんの力を見て断るのジン君位だよね。いくら魔力が高くても、あんな一瞬で治療できる回復魔法普通なら絶対に欲しいのに」


「本当にジンは変わってるわね……ただまあ、私も昨日のジンとユリウスの戦いを見て、若干そんな事は思ったわね。そもそも祝福の力を使ったユリウスを倒す時点で、ジンにはほぼ必要じゃないようにも見えてもの」


「実際の所、一瞬で魔力も回復出るのであれば便利だと思いますけど、俺に使うよりかは他に強い人に渡して更に強化した方がいいとは思いますね」


 それこそ俺の考えでは、クロエかレイのどちらかに渡して欲しいなとは思っている。

 二人共、戦いが好きだしそれなりに力もあるから、祝福を貰ったら更に強くなるとは思う。


「……よしっ、それならクロエとレイに残り【祝福】を渡そうかしら」


「「えっ?」」


 暫く考え込んでいた姫様は考え込んだ答えをそう口にすると、クロエとレイは驚いた顔をして姫様の方を見た。


「二人にですか?」


「ええ、戦女の子達の誰かに渡すか、クロエとレイに渡すかで迷ったけどクロエ達に渡した方がいいと思ったのよ。それに戦女の子達の中から決めたら、貰えなかった子と差を感じると思うし、それならクロエ達に渡した方がいいと思ったのよ」


「成程、ですけどいいんですか? アンドルさんとか、国の兵士に渡してもいいと思いますよ。それこそ、国の兵士の中でもトップクラスの魔法の力を持つレーヴィンさんとか喜んでもらうと思いますけど」


 姫様の言葉に対して、俺は思っていた事をそう口にした。


「大丈夫よ。もしも、ジン達が貰うならそれでもいいって先にレーヴィンさん達とは話をしてるわ」


「話し合い済みなんですね……まあ、俺としても仲間が強くなることは嬉しいですけど、本当に良いんですか?」


「ええ、今まで色々とやってくれたお礼も兼ねて渡したいと思っていたのよ。ただ二人分しか空きが無いから、レンには渡せないわ」


「別に良いですよ。そもそも俺はあまり戦いに積極的では無いですから、戦いを楽しんでるクロエとレイに渡してあげてください」


 レンは最初から貰うつもりが無かったのか、姫様の言葉に対してそうハッキリと言葉を返した。

 まあ、レンに関して言えば後衛で皆をサポートしつつ、体力・魔力が無くなってきたらいつでも薬で回復出来るからあまり必要性を感じなかったのだろう。

 それから姫様はクロエとレイに対し、【祝福】を受け取るか最終確認を行い。

 クロエとレイの二人に対して、姫様は聖女だけが使える【祝福】を使った。


「わ~、なんだか体の奥から暖かさを感じる~」


「こんな感覚初めて……」


 【祝福】を受け取った二人は、祝福の力を感じて体を確認しながらそう言った。

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