第194話 【救世主・3】


 宿に戻ると、丁度出掛ける準備をした姉さん達と遭遇した。


「あれ、ジン君もう帰って来たの? 私達、今からちょっと買い物に行くけど一緒に来る?」


「あ~、行きたいけど俺と一緒だと騒がしくなると思うから、今日は止めとくよ。姉さん達だけで楽しんできて」


 姉さんからの誘いに対して俺はそう言うと、姉さんは残念そうな顔をして「落ち着いたら、また一緒に買い物に行こうね」と言って宿を出て行った。

 姉さん達と別れた後、俺は部屋に戻りハンゾウの所で買った資料に目を通す事にした。


「……あいつ、なんでこんな物まで一緒に」


 資料の束の一番前には、俺が救世主と呼ばれている地域を現した地域が入っていた。

 あいつ、俺が来る事を予測してこんな嫌がらせを用意しておくって、どんだけ嫌な奴なんだよ……これで腕が良く無かったら、関わらなかったのにな。

 正直、ゴブリン商人だけの情報だと抜けてる部分があって、それを補えるのはハンゾウ達位だろう。


「ゲームしてる時は、そこまで気にしなかったけどもう少しましな性格で作ってて欲しかったよ……」


 そう俺は愚痴りながら、資料の束に目を通すと俺が欲しかった情報が載っていて、クロエ達に伝えておく事を紙にまとめながら読み進めて行った。

 それから数時間後、資料を全て目を通して必要な情報をまとめ終えた俺は、ずっと机仕事をしていた為、体が硬くなっていたので少し体を動かそうと空島に移動した。


「あれ、ジンじゃないどうしたの? 今日は、来る予定だったかしら?」


 空島に移動すると、外でなにやら作業をしていたヘレナーザにそう声を掛けられた。


「いえ、ちょっと机仕事をしていて体を動かしたいと思ってきたんです。師匠は今、居ますか?」


「……マリアンナなら、弟子ちゃんに必要な物を取りに行かなきゃ! とか言って、数日前に何処かに行っちゃったわよ。多分、あの様子からして直ぐには戻ってこないと思うけど」


「あ~、そうなんですね。師匠が居ないなら、どうしようかな……」


「ジン。訓練の相手をマリアンナしてもらおうと来たんでしょ? なら、私が相手になってあげるわよ。私も丁度、暇してたし相手になるわよ」


 ヘレナーザからそう言われた俺は、是非お願いしますと言って、久しぶりにヘレナーザと戦う事にした。

 その後、久しぶりに魔女相手に戦った俺は、体を沢山動かせて満足した。


「経った一月でかなり変わったわね。修行が終わっても、ちゃんと鍛えていたようね」


「鍛えてもいますけど、多分レベルアップが強くなって原因だと思います。師匠達の元で修行していた時は、レベルが76でしたが今は80を超えていて、一ヵ月前よりもかなり能力値が上がってるので」


 この一ヵ月、俺は沢山の魔物と戦い経験値を沢山得てレベルアップをしている。

 そのおかげで、かなり能力値は上がっている。


「たった一ヵ月でそんなにレベルを上げたの? 凄いわね」


「まあ、殆ど【成長促進】と馬鹿な魔王軍のおかげですけどね。魔王軍は危険では無いですけど数が多いのでその分、沢山経験値になってくれました」


「そう言えば、ジンには成長を早める力があったわね。本当にその能力は便利ね~」


「はい、本当に便利で色々と助かってます」


 そう言った後、そろそろクロエ達も宿に戻って来てる時間だと思い、ヘレナーザにお礼を言って転移で宿の部屋に戻った。

 そして宿に戻ると、丁度夕食のタイミングだったので下に降りると、皆揃っていたので後で話があると言ってまずは夕食を食べる事にした。


「ジン君、話ってなに?」


 夕食後、クロエ達には俺の部屋に集まって貰った。


「今日、前に迷惑をかけられた情報屋の所に行って、魔王軍の情報を買って来たから、それの伝達をしようと思って皆に集まって貰ったんだ。魔王軍の動きが最近活発だから、少しでも多くの情報が欲しいと思ってね。購入した資料から必要な部分を抜き取って書いた紙を渡すから、それに目を通して欲しい」


「迷惑を掛けられた情報屋って、あの隠れるのが上手い人達? ジン君、あの人達のお店知ってたの?」


「ああ、前に向こうから出迎えてくれて知ってたんだ。クロエ達に話してなかったっけ?」


 あれ、クロエ達にも伝えていたつもりだったけど、伝え忘れていたのかな?

 そう思った俺は、取り敢えずハンゾウの店の場所については後で話すとして、まずは魔王軍の情報を書いた紙を皆に見てもらう事にした。


「凄い、こんな事まで情報屋の人達は情報を集めてるんだ……」


 レイは紙に目を通すと、その情報量に凄いと感心していた。

 レンもレイと同じ様に、その紙に書かれている情報の多さに「情報屋って名乗ってるだけあるな」と言った。

 それから情報に目を通したクロエ達に今後の動きとして、もしかしたら俺達個人で動く可能性もあるから準備はしておいて欲しいと頼んだ。

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