第175話 【使者・3】
それからグラムスは鱗を従者に渡して、鍛冶師の所に持っていくようにと指示を出した。
そうして俺は役目は終わったので帰ろうしたのだが、グラムスから止められてしまった。
「折角、来てくださったのに何のおもてなしも出来ないまま帰すわけにはいきませんよ。どうか、お食事だけでもご一緒してもらえませんか?」
そうお願いされた俺は、まあ食事位ならと言って俺はグラムスと共に部屋を移動した。
案内されて連れてこられた場所は、かなり広い部屋で何故かパーティーの様な感じになっていた。
「……えっと、今日来る事って事前に知っていたんですか?」
「はい。王が決まってから約束の日に必ず代理人を向かわせるとノア様から聞いていましたので、我々も代理人の方が来るのを楽しみに待っていました」
「……聞いてないぞ、ノアさん」
絶対この事はノアは知っていた筈だ。
知っていて、俺に教えなかったという事は俺がパーティーとかを嫌がって断るかもしれないと考えたからだろう。
……まあ、でも別にデュルド王国やその関係してる国でのパーティーだったら俺は断っていた。
だけどここは、ドラゴニアで俺はここの国のキャラには好きなキャラもいたからこれは逆に嬉しい。
「ジン様、こちら私の息子のグライアです」
「はじめまして代理人様、私はドラゴニア国第一王子のグライアという者です」
「デュルド国で活動してる冒険者のジンです。……それと、俺は確かにノアさんの代理で来ましたけど、普通の平民なのでそんな畏まった風に挨拶はしなくてもいいんですよ」
親子揃って王家なのに、平民に対してそんな感じなのは流石にヤバいと思いそう言った。
しかし、俺の言葉を聞いたグライアは「代理人様はノア様と同等の扱いをするようにと言われているので」と言って態度を変えない感じだった。
その後、ドラゴニアの貴族達からも挨拶をされる俺はその中に一人の男性に目がいった。
男性の名前はリュドラといって、緑の髪を長く伸ばし綺麗な目をしてるその人は一見女性に間違われる程、美形な顔をしている。
そんな彼はドラゴニアでグラムスの次に強い力を持つ人で、グラムスの側近として常に傍についている。
「代理人様、私の顔に何かついていますか?」
「あっ、いえ……そのリュドラさんって剣術が得意なんですよね。実は俺も剣が得意でして、もし時間が合う時があれば剣を教えてもらいたいなと思いまして」
「私が代理人様に剣をですか?」
リュドラは俺の申し出に驚いた顔をして、そんなリュドラの反応に気付いたのか遠くにいたグラムスがやってきて「なにかありましたか?」と聞かれた。
「……その代理人様。私の剣術は普通の方が使う物とはちょっと違うんです。ですので、剣術を習いたいのでしたら他の方に当たって貰えないでしょうか?」
そうリュドラから断られた俺は、【異空間ボックス】から刀を取り出した。
その刀にリュドラは、ハッと驚いた顔をした。
「実は俺も普通の剣術ではなく、こちらの刀を使った刀術を得意としているんです。ですので、同じ刀剣使いのリュドラさんに教えて貰えないかなと思いましてお願いをしたんです」
「それなら早く言ってくださいよ……」
リュドラからそう言われた俺は「すみません」と軽く謝罪をすると、リュドラは笑みを浮かべて「その申し出、受けさせてください」と言って来た。
よしっ、これでドラゴニアに来た最大の目的が達成出来たぞ!
魔法や能力面は今の環境や、師匠でどうにか出来るけど刀術の技に関してはリュドラ以外に俺は考えつかなかった。
いつか会おうとは思ってたけど、こんな形で会えて本当によかった。
「まさかこんな形で、刀剣使いの方に会えるとは思ってませんでした。刀剣は今の時代にあまり多くいないようで、私も私自身の師匠だった人以外は見た事が無かったんです」
「そうですね。刀剣自体、違う大陸の剣なのでこっちで使う人は本当に居ませんからね。俺もリュドラさんが刀剣使いと知った時は、どうやってあったら技を教えて貰えるか考えていました」
「私もいつか自分の技を教える相手が出来るか不安でしたが、こんな形で出会うとは本当に思ってませんでしたよ」
それから俺は一旦他の貴族達の所に挨拶周りをした後、リュドラの所に戻って来て刀について色々と話し込んだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます