第129話 【成長の確認・3】
「それにしても皆のステータスを久しぶりに見たけど、皆良い感じに成長してきたな」
「そうだね。最初の頃はジン君との差が開きまくってたけど、今じゃ魔力以外はそこそこ食らいついてるよね」
「ジンの魔力は異常だからな、魔法そんなに使ってないのに何でそんなに上がってるんだ?」
まあ、そう思われるのは仕方ない。
何せ俺はここ最近の戦闘では、そこまで魔法に頼った戦い方をしていない。
「他で魔力を使ってるからな、【魔力視】を使ってたり【空間魔法】を多用してるからだろうな」
この期間で、一番手に入れて良かったスキルは【空間魔法】だと断言できる。
まだ長距離の転移は出来ないが、ちょっとした移動なら可能で戦闘でクロエと交代する時なんか本当に役に立っている。
まあ、このスキルを使えるようになって嫌な事も一つあったが……。
「そう言えば、最近減ったよね。レーヴィン様の勧誘」
「前回来た時に、レーヴィン様のポケットに手紙を書いて入れていたんだよ。それをエイレーンさんが見つけてくれたから、レーヴィン様を止めてくれてるんだと思う」
一番の厄介事、それは【空間魔法】を使えるようになってからのレーヴィンの勧誘だった。
【空間魔法】はこの世界では貴重な魔法の一つで、空間系の能力を持っていたとしても手に入れられるのは数が少ない。
そんな中、知人である俺が手に入れたと知ったレーヴィンは、リオンにも内緒でずっと俺の所へ勧誘しにやってきていた。
流石に面倒だと思った俺は、エイレーンさんが見つけてくれる事を祈って手紙を送った。
ったく、あの爺さん何処にいても俺の魔力を辿って転移でやってくるから、マジで面倒だった。
「そう言えば、リコラちゃんからそろそろ金級冒険者に上がらない? って聞かれたけど、どうするジン君?」
「上げないよ。銀級冒険者にも本当は上がりたくなかったけど、フィーネさん達からどうしてもって言われたから上げただけだし」
既に昇格記録内ではないからそこまで目立つ事は無いとは思うが、面倒事を避けるなら上げない方がいいだろう。
ただでさえ、現状でも勧誘話は色んな所から来ている。
「正直、ジンのその〝目立ちたくない行動〟って偶に自分から目立つ行動してるから、意味あるの? って思うんだが」
レンはそう言いながら、目立ちたくないなら隠居すればいいしなと言った。
「それは自分でも分かってる。ただ自分の考えでは、目立たない様に行動しようって常に考えてるんだよ。それと隠居は今の所考えた事もあるけど、俺には難しいと思う」
「難しい?」
「ああ、だって俺は上手い飯を作れないから、一人で隠居は難しい。レンが一緒に隠居してくれるなら、話は変わるけど」
この約三年間、本当だったら俺も料理の腕を磨こうと思っていた。
だが料理本を渡したらレンは自身の探求心から一気に料理の腕に目覚めてしまい、俺は料理をする機会が全く無かった。
そのせいでもし隠居する場合、俺は一から料理を勉強しなきゃいけない。
まともに飯が食えるようになるまで、俺は多分耐えきれないだろう。
それ程、俺はこの約三年間レンの料理に舌が鍛えられ、美味いもん食えなくなるという行動はとれなくなっている。
「……取り敢えず、これからはジンにも料理する機会をやるよ」
「別にレンが一緒に隠居してくれてもいいんだぞ?」
「……ねえ、クロエちゃんジン君がレンにしか声を掛けない、なんか悪意感じるんだけど?」
「うん、私も感じる。でも、料理に関しては仕方ないよ」
女性陣からの視線を感じるが料理に関しては仕方がない。
何せ料理が上手い順は、スキル持ちのレンが一番上手くその次が俺、そしてその次がクロエで、料理とも言えない物質を作るレイが一番下だ。
レイの作った料理、魔物すら食べようとしなかったから本当にヤバい物だったな、今思いだしても、匂いを思いだして寒気がする。
「でもまあ、料理が上手くなったのも錬金が出来るようになったのも、全部ジン達のおかげだけどな、出会った頃の俺はそれこそ何も出来ない奴だったし」
「……一番この期間で変わったのは、レンだろうな。何せ何もない所から、ここまで成長出来たんだから」
俺はレン達と出会った頃の事を思い浮かべながら、天井を見上げながらそう言った。
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