第三章
第121話 【知らせ・1】
自分がよく遊んでいた世界に似た異世界に転生して、約三年の月日が流れた。
旅立つ前に色々と準備をしていたおかげで、本来だったら困っていた場面も難無く乗り越えてきた俺達は遂にとあるダンジョンを攻略しようとしている。
「レイ、変わってくれ!」
「りょう、かいッ!」
王都を旅立つ前、声を掛けた双子の冒険者の妹の方のレイ。
彼女の持つ固有能力【怪力】には、この旅の期間何度も助けられている。
「ジン君、はいポーション」
「ああ、ありがとう」
そして、双子の冒険者である兄の方のレン。
持ち前の記憶力で大金を使って覚えさせた薬学の力を発揮して、これまで多くの場面で助けられてきた。
マジであの最後の時に声を掛けて正解だったと、今でも思う。
「っと、昔の事を思いだしてる場合じゃねえな! クロエ、準備は良いッ!」
「勿論、いつでも撃てるよ!」
「よし、いまだ!」
俺の掛け声と共に、俺とクロエは同時に魔法を戦っていたダンジョンのボスへと放った。
「——!」
「皆、下がれッ!」
ボスは俺達の魔法を位、大ダメージを受けると最後の足掻きで暴れ始めた。
しかし、ボスはそれから数秒後には体が崩れ、俺達は金級冒険者でもクリアが難しいとされている〝絶海のダンジョン〟を攻略した。
ボスを討伐して報酬を受け取った俺達は、ダンジョンの外に出て一先ず休憩する事にした。
「はぁ、マジで今回は死ぬかと思った……レイ、大丈夫だったか?」
「もうあちこち痛い! レンの薬が無かったら、本当にいつ死んでもおかしくなかったよ」
「ああ、マジでそうだな、今回は今までで一番レンの薬に助けられたな」
そう俺とレイが言うと、レンは「それが仕事だから」とニコリと笑いながら言った。
今回、攻略したダンジョンの名前は〝絶海のダンジョン〟という海の中にあるダンジョン。
海の中という事もあって出入りが難しい為、俺達はそのダンジョンに一月程ずっと探索していた。
「それにしても、今回は本当によく勝てたと思うよ。準備をしてたとはいえ、ここのダンジョンは誰も攻略した事が無かったのに、ジンが最初ここを攻略するって言った時は流石に頭が悪くなったのか心配になったけど、本当にクリアしちゃうなんてね」
「それ私も思ってた。流石に四人でここは無理でしょって、諦めてたけど、ジン君とクロエちゃんが行ける! って自信満々に言うから、付いて来たけど本当に勝てるとは思わなかった」
「ジン君が自信満々の時は、大抵ちゃんと準備が整った時だからね。何度も見て来たんだから、レン君達もそろそろジン君の事は信頼しても良いと思うよ」
「いや、信頼はしてるよ? ただ流石に、ここを攻略できるとは思わなかったんだよ。だってあの、剣聖からも「無茶だよ!」って止められてたでしょ?」
クロエの言葉にレンがそう返し、俺の方へとレンは視線を向けた。
「よく、あれだけの準備してきたよね。時々、俺達が知らない道具まで使ってて……あれが言ってた〝ゴブリン商人〟の道具なの?」
「ああ、レン達はあいつらの事を信頼できないっていうけど、あいつらは今噂されてる〝魔王軍〟じゃないからな。そろそろ信用してやって欲しい」
「う~ん……」
俺の言葉にレンは悩み、そのまま会話を終了した。
あれから約三年の時が流れ、世界は徐々に俺の知るゲームの世界へと変わって来た。
転生初期には無かったダンジョンが現れたり、地殻変動が起きて新たな大陸が出来たりと、世界は変わって行った。
そんな中、俺は着実に魔王軍との衝突に向けて、目立たない様に準備を進めている。
その一つにこのダンジョンの攻略が必要だった。
「それよりここも攻略したし、一月間も手紙を出して無いから街に戻るか。姫様からの催促手紙が来てそうだしな」
「「は~い!」」
今回のダンジョンはゲームでは別に攻略しなくても、ゲーム自体はクリアできる。
だがここのダンジョンの攻略報酬で手に入るアイテム。
それは、魔王軍との戦いで役立つ物だと知っていた俺は、それを手に入れる為に長期間の準備を行い攻略に行った。
最初、このダンジョンの魔物に苦戦する事もあったが、四人で力を合わせて乗り越え、ボスを討伐する事が出来た。
俺とクロエでは本当に攻略する事が出来なかったな、レン達の力があってこそ攻略が出来た。
そう俺は改めて思いながら、海の街レーシアの冒険者ギルドへと向かった。
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