第17話 【ランク上げ・1】

 冒険者に登録してから数日が経ち、クロエとのパーティーとしての連携も大分良くなってきた。


「クロエ、こっちの担当の採取は終わったけどそっちはどうだ?」


「うん、終わったよ~」


 そんな俺達は本日は、討伐系の依頼ではなく採取依頼を受けていた。

 何故、今更採取系の依頼を受けているのか、それはランクアップの為の依頼だからだ。

 クロエと俺は現在、同じランクの〝鉄クラス〟で銅クラスに上がる為の依頼をこなしていた。


「そう言えば、銅クラスに上がる為の依頼で先に討伐系を終わらせたのは、私達が初めてってリコラちゃん達が言ってたよ」


「まあ、鉄クラスの討伐依頼はどれもそのランクに見合った者達だときつい所があるから、必然的に採取系が先に終わるんだろうな。俺達の場合、どっちでも良かったけど紹介される依頼が討伐系ばかりに偏ってたからな」


 実際、俺達はどちらが先に終わっていいという考えで動いていた。

 しかし、フィーネさん達に紹介された依頼はどれも討伐系ばかりで、結果的に俺達は採取の依頼達成が足りない事になってしまった。

 そうして俺達は現在、採取系依頼を同時に受けて一気に消化していた。


「リコラちゃんから聞いた話だと、早い内から色んな魔物と経験を積んで欲しいって思いで討伐系を増やしてたって言ってたよ」


「俺も同じ事を言われたな……俺達だったらすぐに上に行くと思うから、その為に討伐系を多めにやって欲しいってな」


「私達、新人の中でも活躍できる方だから期待されてるんだね~。まあ、新人って言っても私は半年前から冒険者だけど」


「半年もまだ新人の内だろ? 普通の冒険者は、一年間は大体〝鉄・木〟で止まってるのにクロエは俺と一緒に銅の昇格を目指してるんだから」


 そう俺が言うと、クロエは俺の顔をジト目で見て来た。


「確かに半年で銅クラスに行く冒険者は滅多にいないけど……ジン君の場合、登録して一ヵ月も経ってないのにもう〝銅クラス〟にいこうとしてるから、そんなジン君から言われてもな~」


「俺だって、まさかこんな早くに上がる予定は無かったのはクロエだって知ってるだろ? アスカの奴が、フィーネさんに要らん事を言うからだ……」


 ギルドマスターであるアスカと出会い、気に入られてしまった俺は何かとアスカから依頼を頼まれる事があった。

 別に断っても良いのだが、アスカの出す依頼はどれも報酬が良く、依頼自体そこまで難しくなかったせいで、つい受け続けてしまった。

 その結果、ポポンッとランクが上がってしまい、いつの間にか〝銅クラス〟への昇格ラインまで来てしまっていた。


「冒険者に登録して直ぐに、パートナー登録をしていて正解だったよ。普通の冒険者だったら、受付で昇格の速さに驚かれるところだったし」


「ジン君の事、冒険者ギルドが結構隠してるみたいだもんね」


「そうお願いをしてるからな、変に目立つのは嫌だからな」


「そうだね。私も隠して貰ってるから、周りの変化は特にないね。でも知り合いの子達には、最近頑張ってるけど調子どうなの? って少し探られちゃった」


「報酬で装備も一式変えたから、うまくいってるってバレたんだろうな」


 俺と違いクロエは半年前に購入して付けていた装備を最近一式、上位の装備へと切り替えた。

 そのせいで周りから〝上手くやれている〟という目で見られたのだろう。


「その点、ジン君は上手く隠せてるよね」


「まあ、元々知り合いが居ないってのも隠せてる強みだな。ほぼ家から出てこずに過ごしてきて、そのまま外の世界に来たから知り合いと呼べる人間も両手で足りるからな」


「両手で足りるってジン君、本当に交友関係少ないよね……私以外に冒険者の知り合いっていないの?」


「今の所は居ないな、別に作ろうとも思ってなかったが……まあ、居たらいたで情報交換も出来るし、今後は作ってみようかな」


 そう俺が言うと、クロエから「だったら、私の知り合いの子紹介するよ」と提案をされた。

 別に断る理由も無いし、普通の冒険者がどんなものなのかも知っておきたいと思った俺は会う約束をした。

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