第7話 【新人冒険者ジン・2】
「まあ、でもそうですね。ここまで強いと、逆に討伐系の依頼でも安心して渡せますね。といいますか、多才なのでどんな依頼でも任せられますね……」
俺のステータスが書かれた用紙を見つめながら、フィーネさんはそう言った。
「ジンさん先に聞いておきますが、不得意なものとかありますか?」
「不得意ですか?」
「はい。苦手だなと思う魔物だったり、匂いに敏感だから臭い所は行きたくないとか、偶に冒険者の中に血を怖がる方が居たりしてそう言った方には採取系の依頼を渡したりしてますので、先に聞いておこうと思いまして」
成程、確かに人それぞれ苦手な事があるからな。
この世界の〝パートナー〟には、そう言った事前調査もあるのか。
「あ~、別に苦手な事は無いですね。ただまだ対人経験は無いので、盗賊等の討伐捕縛依頼は難しいかもしれません」
「……確かにジンさんはまだ12歳ですから、対人経験がないのも当たり前ですね」
フィーネさんは一瞬、首を傾げたがステータスに載ってる年齢を見て俺の歳を思いだし、納得気味にそう言った。
「対人経験ってどうやったら、訓練出来ますか?」
「そうですね……知り合いの冒険者の方に訓練をお願いしたり、一緒にパーティーを組んで貰って盗賊討伐に連れて行ってもらって慣れるやり方が一般的ですね」
「……三日前に家から出たばかりで、知り合いの冒険者何て一人も居ないんですけど」
というか、そもそもこのジンというキャラには〝友人〟という存在が一人も居ない。
婚約者は建前上、というかストーリー上存在したが、ジンは殆ど家から出してもらえない生活をしていた。
その為、婚約者とも顔を合わせたのは数回で、他の子供なんてジンの存在すら知らない者の方が多かった。
「でしたら、こちら側でご用意致しましょうか? 初心者育成に力を入れてる冒険者の方を紹介してもらえるかもしれないので」
「あっ、出来るのだったらしてほしいです。自分が人と戦えるのかすら、分からないので経験だけでもさせて貰えるなら助かります」
「分かりました。それでは、そちらの手配が出来ましたらご連絡しますね。他に何か必要な事とかありますか?」
そうフィーネさんから聞かれた俺は取り敢えず今はないと答え、今日の分の依頼を用意してほしいと頼んだ。
それからフィーネさんは、俺のステータスを見て判断した依頼書を持ってきた。
その依頼の報酬金は、かなり良さげで俺はその依頼を受ける事にした。
「やっぱり、パートナー登録して正解だったな……早い内から討伐系を受けさせてもらえるなんて、普通の新人冒険者だと無理だからな」
紹介してもらった依頼内容は、王都付近に生息するオークの5匹を討伐するという依頼。
宿屋の店主からの頼みで既に討伐経験がある俺は、依頼分のオークをサクッと討伐して王都へと帰還した。
「えっ、もう。終わったんですか?」
時間にして約一時間程しか経っていないからか、フィーネさんは驚いた顔をした。
正直移動時間の方が長く、討伐の時間は10分も掛かっていない。
「ステータスを見て強いとは思ってましたが、まさかこんな早くに終わらせて来るとは思いませんでしたよ……そもそも、オークを見つける事自体も難しいのに」
「まあ、そこは冒険者になるにあたって勉強をしましたから」
その言葉は勿論嘘で、ゲームの知識を使わせてもらった。
ゲーム時代、主人公も冒険者として活動をする為、メジャーな魔物の生息地帯は大体頭の中に入っている。
まあ、一昨日狩り過ぎて多少見つけづらかったが、それでも依頼分のオークは直ぐに見つける事が出来た。
その後、魔物の素材を解体・鑑定してもらう為、昨日も訪れた地下へとやってきた。
「あんたは昨日の?」
素材の移動問題の為、俺も一緒について行くと作業場で昨日、薬草の鑑定をしてくれた作業員の女性が俺を見て首を傾げながらそう言った。
「昨日振りですね。ジンと言います」
「あっ、どうも私はルネ。この作業場のリーダーだ」
これから世話になるだろうと思い挨拶をすると、向こうも返してくれた。
挨拶を交わした後、今日来た理由を説明をしてオークの死体5体分を出した。
「お~、こんな綺麗に倒されたオーク、初心者の奴が持ってきたのか! 凄いな!」
作業員の一人がそう言うと、他の作業員もオークの状態を見て感心した言葉を言った。
「ルネさん、こちらのオークの鑑定と解体をお願いします」
「了解。ただこんな状態が良いから、いつも以上に慎重にやらせてもらうから少し時間が掛かるかもしれんよ」
「あっ、そうですか。ジンさん、お時間掛かるみたいですが大丈夫ですか?」
「大丈夫ですよ。何なら、報酬は明日取りに来ましょうか? この後は、予定は無いので」
そう提案すると、フィーネさんは「そうして頂けると助かります」と言い、依頼の報酬は明日受け取る事になった。
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