第6話 ユウタの質問
今僕たちはテーブルに向き合って座っている。
「僕から先に聞きたいんですけど…でもその前に…ちょっと口
そう言って僕は2人にティッシュを差し出した。
だって二人とも口がベタベタなんだもん。
ティッシュを渡したら、な、何だこの柔らかさは! これを使い捨てるだと! なんて贅沢な! とかティッシュの話題で先に進めなかったので割愛しました。
「お二人は勇者と魔王と言っていましたが…あの…大丈夫なんでしょうか?」
「大丈夫とは?」
「えっと言いずらいのですが…血みどろの争い中というか、どちらかの命を取るまで何万何千という兵で殺し合う泥沼的な? 関係なんでしょうか…ね?」
「…お前の中での魔王と勇者の定義がどうなっているのかじっくり聞きたいぞ。」
「何でそんな物騒な発想になっているんだ?」
カミラさんもレインさんもいぶかしがる。
「だって最初に会った時2人とも驚いていたじゃないか?」
「そりゃあ驚くぜ、アルメロ国の最終兵器“消し炭のカミラ”と恐れられる火魔法では世界で唯一第10界魔法が使えるらしい伝説の魔王にお目にかかれたのだからな。…まあ今の印象はただの大食いつり目バカだけどな。」
「誰が大食いつり目バカだ! こっちこそ何年か前に新しい勇者の称号と勇者のみが使える必殺技、大撃波烈斬剣アルファを受け継いだと噂で聞いていた男が“旋風の貴公子”だと知って驚いたぞ。もちろん今の印象はただのスイーツ筋肉バカだけどな。」
二人はしょうもない事で言い争う。っていうかその二つ名というかキャッチコピーの方が受ける。“消し炭のカミラ”“旋風の貴公子”とかビミョーにダサい。
なんて思ってほくそ笑んでいたら。
「今、お主ビミョーにダサいとか思っていただろう?」
「我達だって全然納得言ってないんだぞ! 無理やり付けられたんだぞ!」
と二人同時に抗議してきた。そうか勝手に付けられたのならしょうがない。本人のせいじゃないもんな。ほくそ笑みながら話を戻す。
「じゃあ2人の国は戦争とかはないの?」
「そうだな、別に今は戦争はしていないぞ。小競り合い程度はもちろんあるが勇者のメルニーク王国とは離れてもいるしな。」
「こっちも魔王の国アルメロ国とは別に遺恨みたいのはないぞ。まあ他の国同士のきな臭さはあるけど…帝国とか。」
「そうなんだ。僕たちの国の小説…作り話の物語では、魔王が世界を滅ぼすために悪行の限りをつくし人間を滅ぼそうとするのを、勇者が食い止めるという話が主流でしたのでつい勘ぐってしまいました。」
「…何だその魔王の風評被害は。人間も魔物も種族の違いというだけで全くの異物というわけでもないから滅ぼす気は全くないぞ。少ししか…ないと思うぞ。」
「少しでもあるのかよ! こわっ。勇者も称号みたいなものだ。もちろん勇者にふさわしい力を得る事が条件だが…まあ何だ、魔王と一緒で最終兵器的な抑止力的な意味合いが強いかな。だから本当に俺が参戦するのはマジで国を滅ぼす時か滅びそうな時だな。」
良かった、僕の危惧で。最悪の雰囲気のままだったら引っ越すところだったよ。だって命のやり取りをしている人達の間にたつ気まずさといったら…いや、気まずいどころじゃないだろうけど。
「じゃあ今度はこっちから聞いてもいいか? ユウタ。」
「いや、我が先に聞こう、ユウタ達の…」
「俺が先に切り出したんだから、お前は後で聞けよ魔王。」
「なんだ、その口の利き方は! 年長者をもっと敬えよ若造!」
「年長者って魔王いくつなんだよ?」
「よくぞ聞いてくれたな、なんと128歳だぞ! 敬ってくれてもいいんだぞ!」
「えっ128歳っておばあちゃんじゃあ…。」
「バカもの! 魔族は人間と違って長命なのだぞ。人間でいうとまだ17、18歳ぐらいだぞ!」
「犬でいうと何歳?」
「1歳位だぞ。」
「というわけでユウタは職業は何をしているんだ?」
「なぜ年齢を犬に換算させたんだ! そしてなぜどさくさに紛れて先に質問を?」
カミラさんはレインさんにおちょくられてるな…まあカミラさんはいじられキャラっぽいしな。いじりがいがありそうだな。
「僕は学生です。高校に通っています。」
「ふむ、まだ学生か。高校とは?」
カミラさんの質問に答える。
「僕達の世界、住んでいる国日本での事になりますが、7歳から12歳を小学校、13歳から15歳までを中学校に通います。合計9年間を義務教育という形で全国民に教育を施しています。中学を卒業するとさらに3年間高校という学校で学べるのです。僕は今高校2年生ですね。」
「ふーん、17歳でまだ勉強するなんて俺じゃあ耐えられねーな。メルニーク王国では12歳から入学、15歳で卒業して職につく感じだな。」
「ああ、我の国もそんなものだぞ。」
「次にユウタは貴族なのか?」
「えっ僕は一般市民ですよ。平民です。」
「ふむ、これが平民レベルならよっぽど日本という国は強大国なのだろうな。」
カミラさんの意見にレインさんも同意を示す。
「ああ、それは俺も感じた。部屋が狭すぎるから貴族って事はないだろうと思ってはいたが、その辺に転がっている物や服の質が高すぎる。俺たちの国では侯爵レベル、いやそれ以上の品質の良さだぞ。」
「そうだ、その黒い四角い物はなんだ? 昨日から不思議に思っていたのだが、額縁にしては何も絵が入ってないし。」
カミラさんが指し示したのは40型のTVだ。僕はリモコンを操作し電源を入れる。
「うわっ何か動いておるぞ。なんだこれは…」
「ん、街並みか? なぜ部屋の中なのに外の風景が映し出されているんだ。」
「これはテレビジョンという映像を映し出す機器です。う〜ん説明すると長くなるんですが、映した映像を電波で飛ばす事によって家で映像を映し出す事のできる機械です。わかりづらいですかね?」
…二人は僕の説明を全然聞いてね〜。映し出された映像を間近でかぶりつきで、食い入るように魅入る美男美女。そんな二人をこちらの手元にあるリモコンで時折チャンネルを変え驚かし、密かにほくそ笑む僕であった。
…性格悪い?
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