第2話 後悔

 魔人の国に戻ったブラックはアクアを会わせるために、他の幹部達を城に召集させていた。


「アクア、生きていたのですか?

 さすが、ドラゴンの血を引く種族ですな。」


 執務室にいたネフライトは驚いて駆けつけたのだ。


「本当、驚いたわ〜」


 ジルコンもアクアの頭を撫でながら、声をかけたのだ。

 アクアも嬉しそうにジルコンに抱きついていた。

 スピネルは遊び仲間が戻って来たかのように、喜んで話していた。


「アクア、また一緒に遊びに行こうよ。

 この世界は我らだけしかいないから、気にせず飛ぶ事ができるぞ。」


「何と、そうなのか。

 スピネル、ではドラゴンの姿でも飛んでいいのだな。」


 アクアは以前の世界では人間の国もあるので、魔人の国を超えて本来の姿で飛ぶ事を禁止していたのだ。

 まあ、そう言っていたのだが、守っていなかったため私からの制約を受ける事になったのであるが。

 他の幹部達も執務室に訪れ、アクアとの再会を喜んだのだ。


 私はこの国についてやルールをアクアに教えた。

 また、現在の人間の国との付き合い方も問題を起こさないように伝えたのだ。

 今回も私との約束を破った場合の制約も話そうとしたのだが・・・


「ブラック、もう、わかっているから大丈夫だぞ。

 さあさあ、スピネル、この国を案内してくれるか?」


 相変わらず話を最後まで聞けないようなのだ。

 まあ、わかっていたことではあるが、昔と何も変わらないようだ。

 他の復活した魔人と違い、アクアは城の地下にいたため500年間核だけの存在でいたらしい。

 肉体が復活するまではほとんど眠った状態だったようだ。

 だから、人間への憎しみなどもプランツのように増幅する事は無かったようだ。

 その為人間に対して、どうこう思う気持ちは無いようなのだ。

 それよりも、自由になり何処にでも行けるという事が嬉しくてしかたないのだ。

 

「では、スピネル案内を頼むよ。

 ルールもちゃんと教えてあげておくれ。」


 私はため息をつきながら、出かける事を容認したのだ。


 その時、舞がこの世界に来た事を感じたのだ。

 私が送ったペンダントの石の気配があるのだ。

 自分の世界に帰る時に会いに来ると言っていたので、挨拶に来るつもりなのだろう。

 もう少しこっちの世界にいてくれればと思うが、彼女の都合もあるだろう。

 ハナとは違い、別の世界に本来の生活もあるのだ。

 引き止めるわけにはいかないのだ。


 私は仕事も一段落したので、迎えに行く事にした。

 あのペンダントがあれば心配ないだろうが、迎えに行きたいのだ。

 そう決めた時だった。


「ブラック様。

 ちょっとよろしいでしょうか?」


 ユークレイスが執務室に入ってきた。


「どうしたのですか?」


 どうも深刻な話であるのが、雰囲気で分かったのだ。


「ここ最近調査をしていたのですが、黒い影についての目撃情報はありませんでした。

 しかし・・・昨日、大きな黒い鳥を見たとの情報が何件か入りまして。」


「この世界は、本来私達が連れてきた魔獣しか存在しないはずですよね。

 大きな黒い鳥の目撃とは問題ですね。」


 やはり、あの時見た黒い翼の者が動き出したのかもしれない。

 これまでの500年、少なくとも我々の前には姿を見せてこなかったのに、なぜ今になって・・・。

 この500年で変わったことといえば、あの森。

 ・・・舞。

 嫌な予感がする。

 ペンダントの石の気配はあるので、無事ではあるだろうが、早く迎えに行こう。


「ユークレイス、引き続き警戒を強めてください。」


「わかりました。」


 ユークレイスが部屋を出ると、私は舞の居場所を探った。

 瞬時に移動しようと思ったのだが、どうも高速で移動しているようなのだ。

 これでは場所を特定しづらく移動出来ないのだ。

 何かの乗り物に乗っているのだろうか。

 私は止まるのを待っていたのだが、しばらくしても高速移動が続いていたのだ。

 待ちきれず、そのポイント付近に移動しようとした時、なんと、ペンダントの石の気配が消えたのだ。


 私は愕然としたのだ。

 まずい、きっと舞に何か起きたのだ。

 何ですぐに迎えに行かなかったのだろう。

 私はとても後悔したのだ。


 

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