第343話   Lovers Of The World



Man Domain。(男の領域)


貴族服に帯剣という3人が王都をのし歩く。グレンツ、アイン、アルベルトのロスレーン領の若獅子だ。


「この辺も変わったなぁ」

「健全になってますね(笑)」

「こんなに違う街に見えるとはな(笑)

「そんなに変わったんです?」

「怪しい空気で頭が痺れる感じでした(笑)」


「暗闇の魔法ランプに扉が浮いて怪しかったよな?今は街路灯で扉も建物も丸見えで風情が無いな(笑)」


「(笑)」


「闇に浮く扉が別世界に見えましたからね」


ミナミは別世界だったなぁと思い出す。


「アル、これから行く所は貴族専用だ、女も素性が良く口も堅い、錬金薬ではらむ事もない、子種を持ち去られんようにり手婆ぁが貴族の種を残さず処理する。貴族専用以外は行くなよ」


り手婆ぁ:客引きの老女、女を管理する老女。男女の秘め事の万事を切り回す。


「あとアル様、入り口出口でどの様な貴族と会っても目を逸らし見て見ぬふりをして下さい。挨拶も不要です、若い者は無言で結構です。話しかけて来る貴族もいますが流して相槌で済ませて下さい」


「はい!」先輩って素晴らしい。


「料金は0時まで銀貨8枚だ(8万円)、野花(小さな女の子の世話係)の心づけも入ってる」


「はい!」


「今日は俺が出してやる、アインも出してやる。どうせジャネットが俸給握ってるだろうしな(笑)」


「お兄様、お世話になります」ぺこり。

「その通りです!」


「アインお小遣いなの?」

「月銀貨10枚です」

ひどい!」

「親がジャネットなら全てお見通しだ」

「月に一回しか行けません・・・」

「領都なら二回は行けるだろ?」

「従士連れて飲ませるとなかなか・・・」

「(笑)」


学院出身の騎士なら序列7位の筈だ。


貴族の初任額。執事、メイド、執政官、従士、守備隊は叙爵までは吏員(貴族家の使用人:現代の公務員)貴族院任官義務で王家に叙爵され、領地に帰ると領主に叙爵される。(平民の叙爵は準男爵叙爵で一代貴族)


執事は叙爵で6位 (貴族の初任序列)

副執事長初任5位

執事長が3位


メイド初任7位 

副メイド長初任が6位

メイド長の初任は4位


貴族院退任の騎士なら7位 (貴族の初任序列)

従士出身の騎士なら10位 (アルの初任序列)


・・・・


重厚な装飾ドアから宮廷音楽が漏れている。


明るくもなく暗くもない魔法ランプが灯る中、エントランスを進むと六人程執事が並ぶ。ムーディーみたいな執事が歩み寄ってきた。


「今日は如何いかがいたしましょう?」


「選ばせてくれ。そこの小さいのは学院の若い衆だ、慣れて無いので任せる。直系だ、相応しいのを頼む」

※直系:国王に謁見を許される貴族家の子


「それはそれは!かしこまりました」


「俺たちはあっちのホールで飲んでから行く、お前は執事に付いていけ。明日も仕事だから朝までは無理だ。今日は0時に案内される待合に出て来い」


「はい、ありがとうございます」学院の若い衆を演じる。


「それではこちらへどうぞ」


2F~3Fと階段を上がって待合の様なラウンジに若いお姉さんたちが十人程いた。


「お好きな飲み物を頼んで、こちらでお待ちください」


「はい」


「何なりとお申し付けください」

お姉さんたちが世話を焼いてくれる。


「何か美味しいワインとか有る?」

「ベークス(侯爵)領の口当たりの良いワインが」

「それで!」元締めの土地のワインか(笑)


「かしこまりました」


視線を感じたので視た。

特に評判の良い女の人に声を掛けてくれていた。執事から聞いた女の人達が俺を品定めしている(笑) 三人が私が私がとカップリング希望を言ってくれるので嬉しい。


お兄様が王都で選んだ店なら、女の人は綺麗に決まってる。初めてだから丁寧に教えてくれるなら正直誰でも良かった、特に評判が良い女の人なら大丈夫だ。


しばらくしてムーディーな執事が呼びに来た。


「用意が出来ましたのでこちらへ、お名前は何とお呼びしたらよろしいでしょうか?」


「え!あ?え?」名乗るのか?ここで!


「結構でございます、こちらへどうぞ」


「あ!はい」スックと立って後に続く。


「レティーさん、お客様がお見えですよ」


「はい、今すぐに」


ドアを開けると貴族令嬢が立っていた。背もあんまり高くない、俺より少し高いぐらいだ。栗色の髪が少しカールして肩に掛かっている。そんな事を思っていると、そのまま手を握られて招き入れられる。すごいドレスだ・・・なんだ?コスプレか?違う、この世界はこうだ。


普通の貴族の部屋だった。普通の女の人の部屋。お茶や酒を出す野花もいなかった。少し話と違ったが、そういうコースなのかも知んない。


あっちで聞いてた、お風呂が有って洗い場があって、マットレスとか椅子とかは全然・・・そんな事はどうでもいい!


「お名前は何ておっしゃいますの」


「お、お名前は・・・アキラ」


ギャー!偽名名乗っちゃった。


慌てるアルをビビる初心者と勘違いするお姉さん。


「アキラ様、お待ち申し上げておりました。いつ来て下さるかと首を長くしてお待ちしておりました」


あ!そこから?何か最初の会話のそこから教えてくれる感が凄かった。


「アキラ様、いつものように口づけをしてくれませんの?」


「あ!はい」と言った刹那に抱き寄せられてキスされる。


それはそれは優しくて、愛に満ちた素晴らしいキスだった。本来のキスはこういうモノなのだろう。俺のキスは激しいだけで優しさの欠片もリズに渡せて無い事にショックを受けた。


「・・・もう一回いいですか?」

「はい」


従順でおしとやかな女性を演じている。貴族が好みそうな優しそうな雰囲気をまとって・・・キスしてくれた。


「もう一回!」

「はい」


「もう一回」

「はい」


ラーニング完了した。アルはスキルとろけるキスを手に入れた。


「こんなにドキドキしています」


手を取って胸に当ててくれる。ふにふにだった。触る手が震えた。


その後はドレスの脱がせ方のレッスンだった。覚えるまで三回も練習した。知っているのと実戦は全然違う。服の構造が違う、こんなもんを着てるのか?あのお屋敷の女どもは(笑)


平民の服はせいぜいワンピースドレスに腰のあたりにちょんとベルトで絞る感じだが、貴族のドレスは全然違った。服を脱がすとかではない。後ろ首から胸の裏の背までの紐を解いていて行く感じだ。多分服のこれが変形して腰絞りになるとコルセットドレスになって行くと思う。こちらの貴族のドレスは腰を締め付けずに胸下を絞って胸を豊かに見せている。そういうこと全然知らなかった。


お風呂に入れてくれた。男と女の構造や感じ方、ついばみ方を丁寧に教えてくれた。聞くと深く解説してくれた。剣と鞘の大切さと子孫の作り方。貴族の子弟は貴族学院でこういう大切な事を学んでいた。

※少し違います。


アルは繁栄の仕方をラーニングした。


めくるめく5時間だった。

そろそろお約束のお時間ですと言われるまでとろけていた。ハッと気が付きクリーンを掛けて服を着る。こういう場所では自分でクリーンは掛けてダメだと優しく怒られた。


部屋を出ると下に降りる階段が違った。これから入って来る客と鉢合わせしない様に作ってある。三番のサロンと言うので入ったらお兄様とアインが待っていてくれた。


「良かったか?(笑)」

「最高!夢の時間でした(笑)」

「良かったな(笑)」


「俺たちは追及が待ってそうだな(笑)」

「ですね」

「え?」


「今から家に帰れば、大体読まれるな(笑)」

「それは大変です!盗賊捕まえて帰りましょう!」


「そう言えば、お前盗賊得意だな?探せるのか?」

「得意って!(笑) 場所ぐらいは分かります」

「分かるのか?」

「少し待ってください」


GPS検索でロスレーン方面の盗賊プロットを拡大して行く。


「ロスレーン領にも居ますね」

「行くぞ!」途端に顔が騎士団になった。

「はい!」


0時に騎士団の応接に跳んだ。部屋は真っ暗だ。


「用意する。待っててくれ」

「はい」魔法ランプを点灯させた。

俺は平民冒険者ルックに着替えた。


お兄様が来たので、聞いてみた。


「3時頃までやって盗賊一杯捕まえたら、仕事は休みになります?」


「昼まで寝る事は許されるな(笑)」


「厳しい!」


「まぁ、場所が分かるなら全部やれ、お前一人で100人ぐらい捕まえると聞いたぞ(笑)」


「噂の手練れを見せてもらいます(笑)」


「・・・」二人共俺を当てにしてた(笑)


「行きますよ!」

「おぅ!」


シャドが巻いて最初の盗賊の住処に行く。モルド近郊山間の廃屋にいた。そのままズンズン歩いて行くのをお兄様が驚いて止まる。


ガラ!「ごめんくださいー!」


「お兄様、アイン来てー!」


お兄様とアインが来る。


「そんなに溜め込んでないですね」


8人が大人しく寝ている。鹵獲品と馬と荷馬車をシャドが巻いて南門の守備隊の詰め所に跳んだ。


「グレンツ様!アル様!」

「盗賊だ。ふん縛ってぶち込んでおけ」

「は!」


三人で南門外まで走る。


走りながら跳んだ。


シレンの以前捕まえた事ある洞窟に18人居た。

アルが洞窟に突っ込んで行く。見送る二人。


「お兄様ー、アインー!」


二人が呼ばれて行くと転がる18人の盗賊。アルは手早く鹵獲品を奪って今度は北門の守備隊に預ける。


サルーテの北の男爵領にもいたので捕まえておく。真っ暗の山の中なので越境してる事もお兄様達は気が付かない。


6人で少ないのでまた南門に持って行った。


ミリスの街中に大きな窃盗団がいた。

さすがにお兄様が気が付いた。


「ここ騎士団いるだろ」遠回しだ(笑)

「今までクレーム来た事無いです」

「領主家にクレーム言えねぇよ(笑)」


23人の盗賊団を一気にシャドが巻いて関係遺留品を強奪して東門の守備隊詰所に跳んだ。馬が23頭居た。


「次最後です」


ヘクトとヘルメラース領の境界のヘルメラース側にいた。越境で19人捕まえる。ヘクトに置いて行きたかったが今回はアリバイ工作なので東門の詰め所に置いてきた。


最後に騎士団の倉庫に寄って鹵獲品の山をザバッと出す。馬や荷馬車は全部守備隊だ。


ロスレーン領に74人の盗賊がいた。一時期領内で約400人の盗賊がいたと思うから、マジ少なくなっていた。馬は60頭、ロバ7頭、(となかいのような)大きな鹿4頭。荷馬車19台。


全て終わったのは2時過ぎだった。


騎士団のお兄様の部屋で鹵獲品は盗品ばかりな事。みんな人殺しなので、いつもはヘクトの代官オスモさんに即日裁判してもらい鉱山奴隷にしてもらってる事を伝えた。痛めつけたら労働力にならないのでそのままヘクト送りが一番だと教えておいた。


74人も檻に入れてヘクトに運ぶのは大変なので、自分達で勝手にヘクトに申し出る様に隷属しておくから旅費とついでに街への通達を持たせたら良いと言っておく。



「今日はありがとうございました!」

「いいよ!ご苦労だったな(笑)」

「アル様、凄い魔法だったです!」

「ありがとう、賢者伝説みたいだった?」

「はい!」


「最初は危ないってやらせてくれなかったの(笑)」


ビビッて何もやれなかったのを忘れている。


お兄様は目が冴えてしまった様で色々と不寝番に言い付けて帰って行った。



毎回死を感じていたあの頃のアルではない。


男の世界まで知っているアルだった。


すぐにエルフの丸薬を飲んだ。痕跡は消す。



メルデスのハウスに帰り、朝から一日顔を出してなかったのでアロちゃんに交感会話で出来事を聞いた。いつもは会話状態でそのまま寝るのがフッと交感会話が切れた。


「?」


いつの間にかフィオちゃんも一緒にいた。


「アル様!」

「え!何?何かあった?」


「Good Job!」二人が親指を見せて言った。


二人に枕をぶつけて部屋から叩き出した。

数万のメイド部隊が男の世界を知った。




次回 344話  出玉調整

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               思預しよ

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