攻め来る罠にご用心-2 手下A
「磯姫?」
金城さんの呟きで、この俺、堤下栄にも、魔方陣から出て来た人が何者だったのか理解したッス。
「磯姫って言うと、あの髪の毛で血液や精気を吸い取る、日本版吸血鬼みたいな妖怪だったッスよね?」
「そうよ。本来なら海辺の街なんかに本拠地を置いてる妖怪なんだけど……」
俺の問に答えてくれたのは妖怪猫女の金城さんッス。金城さんは美人だけど貧乳だし、性格が壊滅的に自己中……ヒギッ………な、何でもないッスぅ……。
「こいつの能力は?」
そう聞いたのは、金城さんの恋人で水無月裕太さんッス。
この二人、テレパスとか持ってないッスよね……ガクガクブルブル……。
「怪力と魅了系の術、後は髪の毛が本体みたいな奴だから髪の毛にだけ注意を向ければOK。つーか髪の毛以外見んな。鼻の下伸ばして見んな!」
金城さんがこめかみに血管を浮き上がらせ、そうツッコミを入れたのも無理はないッス。磯姫は清楚さを醸し出す和服美人で、血を連想させる赤い瞳と唇でぞっとするほど美しい笑みをその顔に浮かべてるんスよ。
しかも巨乳。
しかも巨乳。
しかも巨乳!!!!!
大事なとこだから3回言ったッス。
金城さんのツッコミは、水無月さんがそんな相手を見て怯むどころか、だらしなくニヤつきながら眺めてることに対するツッコミッス!ある意味尊敬ッス!!
「伸バシテナイヨー伸バシテナイ。コレ普通。オレイケメン嘘ツカナーイ」
つまり水無月さんにとっては鼻の下が伸びてる状態が普通ってことっすね?あと、水無月さんは特別イケメンって訳じゃない……ヒゥゥゥ!!
「堤下君」
「ははははははははハイッス!おおお俺、水無月さんの悪口なんて言ってないッスぅぅぅ!」
しまったぁぁぁ! 間髪入れずの呼びかけに、慌てて返事しちゃたっすぅぅぅ!!
「……あとでじっくり話し合おうか……」
あ……顔は笑ってるのに目が笑ってないッス……こ、怖いっすぅぅぅ!! やっぱりこの人、テレパス持ってるッスよね?!
「クックックックッ……いるわいるわ、
その言葉に、俺も水無月さんも一先ず意識をそちらに向けたっす。
「誰から妾に、恐怖という名の甘美な果実を捧げてくれるのかへ?」
そう言って
その視線が、とある場所を通過した瞬間、ピタリと留められたッス!
つまりは……この俺ッス!
獲物を俺に見定めたっすね? ふっふっふっ……望むところっす! 忘れてる人もいるかもしれないッスが、俺はこう見えても風使いの端くれッス!! こいつを倒してたまにはいいとこ見せ……る?
何か磯姫の様子がおかしいッス。何やらその顔には驚愕の表情が張り付いてるッス。
……なんか嫌な予感かするッス……
「だ……」
だ?
「だぁぁぁりぃぃぃぃぃん♡」
「誰がダーリンッスかぁぁぁぁぁ!!」
突然飛びかかってきた姫を何とか寸前で躱し、追撃に備えて俺は一歩跳び退いたッス!
磯姫はゆっくりと艶めかしい動作でこちらを振り返ると、その色白な顔に壮絶な笑みを浮かべてこちらに歩み寄ってきたのだったッス。
この堤下栄、人生最大のピンチッスぅぅぅ!!
「ふふふ……お主は今から
「い、いつッスか! いつからあんたの物になったッスか! ここここかここういう事は気を急いでは仕損じるって学校で習わなかったっすか?!」
「お化けにゃ学校も~」
「試験も
「そうね、いるわね、そんな奴らがうじゃうじゃと。まぁ、それ以前に学校で習うこっちゃないでしょ? この辺が、童貞の思考回路のレベルの低さの悲しさよねぇ」
「妙なツッコミ入れる暇あったら助けるッスよあんたらぁぁぁぁぁ!!」
「童貞? 童貞……うふふふ……」
こっちは何か益々妖しく目を光らせてるしぃぃぃ! そんなに童貞がいけないことッスか?! 童貞は生きていちゃいけないんでしょうか?!
「まぁ、堤下の犠牲を無駄にせず、他のみんなで周囲の警戒しようかね? それか堤下のフォロー?」
「フォロー……何をフォローすれば良いんでしょうかね?」
「二人の想いが見事遂げられるように優しく見守れって事じゃねーか? 犠牲前提みたいだし」
「コクコク」
「ガウ」
「ちょっと待つッス! 犠牲前提ッスか?! 俺の人権は?! 俺の自由恋愛論は?! 俺の貞操はどうでもいいんすかぁぁぁ!!」
やっぱり犠牲前提ッスか?つーか『二人の想い』って、俺は遠慮願いたいって思ってるってさっきからの態度で分かってるッスよね?! つーか我関せずって感じで世間話始めんのやめるッスよそこぉぉぉ!!
磯姫の動きは激しさと鋭さがましてるッス! 息
「しっかしさぁ……日本の妖怪なら日本の妖怪らしく呼び掛け方も『あなた』のほうがよくね? 『ダーリン』だなんて変に西洋にかぶれやがって」
「あんた意外にそういう事にこだわりあるもんね。考え方古くない? グローバルな世の中なんだから、妖怪の世界にだって国際化の波が訪れてても別にいーじゃない。それにあの
「『ダーリン』は日本語じゃないでしょ?」
「……『だぁりん』の表記がひらがな……」
「んなもん俺に分かるかい!」
「つーか、んな事どうでもいい……し、しまったッスゥゥゥ!」
思わず二人に突っ込んだ瞬間、とうとう俺は、磯姫の右手に捕まってしまったッス!
「ちょ、ちょっと待つッス! 先ずは清く正しくアドレス交換から……」
「だぁぁぁりぃぃぃん♡ んん~♡」
「んんぅぅぅぅぅん!!」
がぁぁぁ! 唇を奪われてしまったッスぅぅぅ!!
ち、力が抜けていくッスゥ……。
しかもメチャクチャ巧いッス……。
「うふふ……これでお主は妾のもの……クックックッ……久々だわよ、いただきま~す」
や、
ギャァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァっすぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ
~・~自主規制~・~
「こうして一人の尊い犠牲の基、このミッションはクリアされた。
手下A……君のことは忘れない……
手下A……君はもう童貞なんかじゃない……
手下A……でも君はいつまで経っても手下A……
手下A……ああ手下A……
君の伝説は永久に受け継がれることでしょう……」
「俺は死んでないっすぅぅぅ!!」
「泣きながら抗議する手下Aに少しばかり同情の念を覚えたあたしなのであった……って感じで締めはいいかな?」
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