第184話 番外編15.テイマー?キース

      番外編15.テイマー?キース

 ‐マカンヌ‐

 ムキ―!

 うちの旦那の気を引こうだなんてなんてムカつく女だったのよ!?

 私よりもずっと獣率の高い亜人の分際で生意気よぉっ!

 そもそもあの女獣臭かったわよ?

 うちの旦那は匂いフェチでは無い筈だから大丈夫だとは思ってるけどね。

 それに、テクニック勝負なら負けない自信はあるけど。

 でもまずは、胃袋を掴まないとダメよね。

 私の料理+エリーちゃんのレシピで無敵のはず、旦那は渡さないわよ。

 村を出てから、食事当番は私がずっと担当しているの。

 うちの旦那は私の料理と知って褒めてはくれないけど、絶対美味しいと思ってる筈なのよ。

「マカンヌさん料理うまいっすよね~。」

 キース君だってこんなに褒めてくれてるのよ、負ける筈ないじゃない!

「あのさあ、お母さん?

 そんなに神経質に考えなくてもお父さんはお母さんを裏切ったりしないから大丈夫よ。」

 カレイラが私を励ましてくれる、うちの娘良い子!

 そうよね、あんな女に取られたりするはずが無いわよね、カレイラの言葉で少しだけ溜飲が下がったわ。

「マカンヌさんは良いわよね~、今じゃ旦那さんが浮気する心配なんか何一つないんだし。

 だってあれでしょう?カイエンさんの新型義体って、もう変なオモチャ付いて無いんでしょう?」

 あ・・・そう言えばそうよ・・・電脳空間で楽しめるからもう必要なく成ったんだった。

 私ったら何取り越し苦労してたのかしらぁ~?

 いやぁ~ねぇ~。

 私とした事が、何でこんなに怒ってたのかしらぁ~?

 ----------------

 -キース-

 あの村を発ってから三日、こんなに魔物が多いとは思わなかったぜ。

 鹿や猪、兎が特に多いから、食い物には不自由しなさそうだけどな。

 丸一日も走り続けたら京なんてすぐだと思ってたのに思うように進めない。

 やはり街道沿いを行くべきだったかもな。

 でもそうなるとクリムゾンスパイダーと別行動になって食事時が少しなァ・・・食材と調味料皆積んで有るしよ。

 って、あれ?

 俺も貰ったストレージだけどよ、装備品で一杯だけどさ、そう言えばクリスも、エリーにストレージのスキル貰って無かったっけ?

 しまったぁ~!

 装備品が殆ど嵩張らないクリスのストレージに調味料とか入れといたら良いんじゃんか!

 何で気が付かなかったんだ、俺。

 でもまぁ良いか、もうすぐ京の近く、このデケェ湖を超えたらもう目と鼻の先だもんな。

 それにしても水平線が見える湖ってどうなんだよ。

 クリムゾンスパイダーのホバーモードとか言う奴使ったら特に問題無く渡れるっぽいけどよ。

 ここまでデケェ湖だと、サーペントとか住んでそうでちょっとヤバそうなんだよな。

 何れにしても、今晩はこの湖畔でキャンプだ。

 電脳の能力をフルに使って、ナノマシンとか言う奴に湖の中を探索させておけば明日の朝には終わってるだろう。

 さて、今日はさっき狩ったばかりの一角猪が美味そうだったのでそれを焼いて食べる事に成って居るので俺の今の仕事は七輪の準備と七輪に入れる為の薪拾いだな。

 後は火をかけるだけにして置けば、マカンヌさんが火遁で火を着けてくれると言う算段だ。

 小型の七輪だから一人に一つ、俺達なら5個と言う事に成るので用意も割と手間だ。

 まぁ、喧嘩に成らないようにする意味もあると言って居たけど、何と無くそれも判らんでも無い気はする。

 七輪5個分の薪を集めて帰る途中、何やら魔物同士が争うような声が聞こえて来た。

 ちょっと興味が湧いた俺は、その様子を見に声のする方へ行ってみる事にした。

 すると、そこには、グリーンバイパーと言う蛇と対峙する、土竜だった。

 何故か地上に出ている事もそうなのだが、何故土の竜と書くのかという疑問を俺は持った。

 だが今は明らかに不利なモグラを助けてやりたいと思った。

 薪を投げ捨てて、背中に背負った二本の大剣の内の片方、右手で扱って居る方を抜いて切りかかった。

 背後から切りかかる形になった事もあり、モグラに集中して居たグリーンバイパーは反応し切れず、アッサリと俺の剣に掛かり首を切り落とされ、その動きを止めた。

 そして、咬まれてボロボロのモグラに、エリー製のアンチドーテ薬とハイポーションを使い、回復してやる。

 そして、投げ捨てた薪を拾い直して立ち去ろうとすると、モグラが何故か俺の後を着いて来る。

 モグラは目はあっても弱視でほぼ見えていないと聞いた事があるのに、それでも着いて来るのだ。

 ついて来て居るのは知っては居たが、今はこの薪を持って戻らなければいけない俺は、とりあえず無視をして歩き続けた。

 森を抜けて湖畔に出る。

 すると流石に着いて来て居ないかに見えた。

 七輪の支度を終えた俺は、少しさっきのモグラが気になって、ちゃんと帰って行ったか確認しに森の方へと戻って見たが、既にモグラの姿は無く、一つの穴が掘られていた。

 ちゃんと戻って行ったか、と、安心して、食事の支度をしようと戻って行くと、クリスが、肉の切り分けを手伝って欲しいと言うので、ストレージから解体用ナイフを取り出し、部位毎に切り分けてから焼き肉用の厚さに切って行く。

 暫くすると、食器の用意と野菜の準備をしていたカレイラが小さな悲鳴を上げた。

「きゃっ!」

「どうした?」

 カイエンさんがカレイラの元に走って行く。

「あ、うん、何でも無い、大丈夫よ、お父さん。」

「そうか?」

 少し気に成ったが、放って置く事にして夕食の支度に没頭する事にした。

 粗方支度が終わった頃、カレイラが走って来た。

「クリスさん!見て下さいよ、可愛いですよ!」

 カレイラが抱えて来たのは、俺が助けたモグラだった。

 あいつ、逃げなかったんだな・・・

「これって、モグラ?」

「そうみたいです、人懐っこくてかわいいですよね。」

「ああ、そいつ、俺がさっき助けた奴だな。

 グリーンバイパーに襲われてたからな、ちゃんと毒対策もしてやった。」

「もしかして、この子ってキースを追いかけて来たの?」

「そうみたいだな。」

「じゃあさ、キース、この子ってテイム出来るんじゃない?」

 魔獣使いは、かなり稀なジョブで、滅多に見かける事は無いが、居ない事は無い。

 そして、ハッキリ言ってテイム出来て初めてそのジョブの適性が有る事が判る為に尚の事希少なジョブだった。

「しかしなぁ、モグラじゃなァ・・・」

「でも、キースを頼って着いて来たんだから、きっとキースにはテイマーのジョブの適性が有るのよ、試しに契約して見たらどうかな?

 可愛いんだから無理に戦わせなくても良いじゃない。」

 すげぇ無責任な事言い出したクリスに呆れつつ、きっとペットが欲しいんだろうと思って、契約とやらをやってみる事にした。

 確か、魔獣側の承諾が有れば、名前を付けてやることで成立するって言ってたな。

 既に承諾が有るんだろうからなァ・・・うーん、名前つけるのとか苦手なんだよな~・・・

 どうせだからスゲェ大袈裟な名前でも付けてやるか・・・モグラ・・・確か、鑑定した時に出て来た漢字が、土竜・・・

 土の竜か、この際だ、伝説の地龍の名前でも付けてしまおうか。

「よし!お前の名前は、今日から、ヨルムンガンドだ!」

「え? ちょっとキース、何無茶苦茶大それた名前つけてんのよ!」

「何だよ良いだろ?俺の従魔になるんだから俺が勝手に付けたってよ。」

「言霊に、大気中の魔素が反応して、その名前の持つ強さが従魔に反映されるかもしれないってエリーが言ってたでしょう?」

「え?そんな話してた?俺聞いてねぇぞ?」

 モグラ、ヨルムンガンドの体が光り輝く。

「うぉっ!?」

 その姿は、小さな地龍へと変貌を遂げた。

「あーあ、やっちゃったね、キース。」

「「「あーあ。」」」

 いつの間にか周囲に集まって居たマカンヌさんとカイエンさんも同時にその一言を・・・

 まじか・・・進化しちゃったよ。

 モグラって、地龍に進化するんだね・・・

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