第56話 落成式?ってか宴会だ!

         落成式?ってか宴会だ!

「キース達は先にギルドに戻っててよ、私は詰めてやりすぎてたから体中ペタペタするし、湯浴みしてから行くわ。」

 この世界に来たら、一番真っ先に困ったのがお風呂だったのである。

 なので、泊ってる宿に地下室を作らせて貰って、そこにお風呂を建設して居たのだ。

 ナノマシンに作らせていたのだが、丁度カイエンに全身義体作ってあげてる合間に完成して居た。

 その様子は番外編でも書いてやってみようかな。

「あ、エリーさんお帰りなさい。」

 宿屋に戻ると、看板娘のジェシカちゃん16歳がお出迎えだ。

 この子かなり可愛いのよ、歌でも歌ったらすぐにトップアイドルに成れそうな程。

 私には敵わないけどねっ!

 コラそこっ! えぇ~っとか言うなっ!

「ただいま~、ああそうそう、今日更新料払わないとダメだったね~。」

「エリーさんからは貰えませんよ~、あんな立派な大浴場作って貰ったのに。」

 この世界には温泉とかはこれまで無かったのだ。

 つまり温かいお湯に浸かると言う文化は存在して居なかったのだが、この提案をこの宿の女将さんは食い気味に食いついて来てくれたので、お陰で色々やり易かった。

 しかも運良く温泉の水脈もあったし地下大空洞みたいな排水に最高に適したもの迄近くにあった、ので、何十キロとか掘らなくても良かったのである。

 あ、一応地下大空洞の中には浄水施設みたいなものは作ったよ?

 元々大空洞の中に巣くって居たスライムが水質を浄化するのに役に立っている事が判ったのでその効率を上げられるように溜池作ったりしただけだけど。

 あ、ちなみに、スライムって言うと最弱の魔物と言うイメージが強い人も少なくは無いと思うんだけど、あれは某RPGが作り上げた幻想みたいなもので、全っ然そんな事は無いんだよね。

 この世界には魔法が今の所存在し無い事も手伝って居るとは思うけど、剣はなかなか通らないし、その上運良く切る事が出来たとしても再生してしまう、槍で核を突くしか倒す手立てがないのだ。

 その核は小さく、スライムの消化液は何でも溶かせるらしく、槍自身も核を4つも突くと溶け始めて使い物に成らなくなる。

 ミスリル製の槍なんか溶かされた日には費用対効果が逆転してしまい泣くに泣けない。

 この、何でも溶かす所はオマケに女性冒険者からは特に不評で、討伐依頼がで出ても誰もやりたがらないのである。

 脱線したので元の路線に戻します。

 当然、源泉かけ流しである。

 シャワーまでは作って居ないけど、その内作っても良いかなとか思えるほど立派な浴室になったのだった。

 石鹸やシャンプーも、柑橘系の果物が市場で売ってたので界面活性剤に成るなって思って、試行錯誤して完成させたから、私にとっても良いお風呂環境が出来たのだ。

 そしてそのお風呂に入る事がこの子の楽しみになって居た。

「ダメだよ~、商売人がそんな簡単にサービスしちゃ。

 そんな事してると詐欺師に騙されて居たい目にあうぞ~。」

 と言いつつ、中金貨一枚出して受付カウンターに置く。

「エリーさん、間違ってる!こんなにあったら二ヶ月くらい泊って貰っても余る!」

「良いの良いの、ちょっと領主様からの依頼のお陰で小金貨どころか大金貨が大量に入って来ちゃったからね、使い切れないし、いつも私の部屋だけは特に念入りに掃除してくれてたりお世話になりまくってるからチップと思って取っといて。」

「ええ~、こんな大金どうしたら。」

「お小遣い貰っておめかしして、この宿のサポートしてくれそうな良い男捕まえたら良いんじゃない?」

 と言ってニヤニヤ笑っておくことにした。

 困惑してるジェシカに背を向けつつ、

「お風呂頂いたらちょっと出かけて来るね~、今日はギルドで宴会なのよ。」

 と言うと、

「エリーさんは実年齢よりも年下に見えるんだから又お酒ダメって言われちゃうね~。

 同い年なのにね。」

 くそっ!私もこの宿に16って言ってあったんだ、反撃された、ちくしょう。

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「みんなお待たせ。

 私の奢りだよ~、みんな好きに飲んで食べてね~。」

 ギルドの戸を開けると同時に高らかに宣言してみた。

「えー、又エリーの奢り~?

 俺何にも返せねぇじゃん。」

 とか、なんか不評?

「何か不評みたいだけど何でよっ!」

「ちげーよ、なんか俺らがウダツ上がらねぇみたいに思えて凹んでんだよ。」

 何だそんな事か、そんなの気にしなきゃ良いのに、ってか気にする前に仕事すりゃいいんだけどねw

「おばちゃ~ん、調理場貸して~、私が部位ごとに切り分けた肉を最適な焼き方で出したいから。」

「おや、珍しいね、私にもくれるのかい?」

「勿論、おばちゃんも今日は休んでていいよ、ってかホールやってて欲しいかな、すげぇ良い肉が有るのよ、これが。」

 そして並んだ部位毎のステーキや焼き肉、そしてもつ鍋にレバ刺し、これよこれ、これが食べたかったんだって!

 レバーの刺身!

 私のストレージに入ってたから新鮮な上に、反則技のストレージの機能で雑菌だけ丁寧にそぎ落とした最高級のレバー!

 これなら絶対旨い上に中る様な事は無い。

 レバ刺しと言ったら塩ごま油なんだけど、この世界に来て未だにごま油に出くわしたことが無いので、代用品として薫り高いオリーブオイルのEX—Virginに、偶然見つけたピンク岩塩を砕いたピンクソルトだ。

 大方の予想通り、誰もレバ刺しに手を付けないので私の一人占めだ、やったね!

 レバ刺しを山盛りにして自分の席に持って戻ってオリーブ岩塩で食べようとした瞬間、目の前にザインとクリスが、しかもガン見してる・・・

 え~っとぉ。

「な、何?二人とも。」

「食べ物にも詳しいエリーちゃんが何を食べるかなーって思って見てたのよ、絶対に美味しい物に辿り着くと思って狙ってたんだ。」

 ああそうですか、確かに私の食べる物を追いかけたらおいしいでしょうとも、だけどね、そこまでガン見しなくても、未だレバ刺し残ってるじゃん?

「同じのまだ残ってるよ?」

「でもそれ生でしょう? だから様子見てからね、ザインもそうだよね?」

「ハイエルフ様、それ、食べられる?」

「美味しいよ?試しに鑑定して見たら良いのに。」

 と言って一枚口に運ぶ。

「んン~~~~~、美味しい~っ!」

 私のこの一言を聞いた二人が我先にとレバ刺しに群がると、不思議そうに見ていた酔っ払い軍団の一角がそれに気が付いて興味津々で見ている、あ、これはハマるグループが出て来そうだな、自分でレバー手に入れて自爆しないようにして欲しいな・・・

 レバ刺しを持って戻ってきたザインとクリスは、早速オリーブ岩塩に付けて一口。

 二人とも目が飛び出して転がり落ちるんじゃ無いかって程に見開いたかと思うと、見事なハモリを聞かせてくれた。

「「何これぇぇぇっ!うっまぁ~~~~!」」

 ザインもこの時ばかりは少しだけ饒舌になってる、普段の喋り方あんななのにね。

 ってかエルフって肉食うんだね。

 あれか、エルフは菜食しかしないっつーのはファンタジー小説全盛期の作家さん達とかが作った幻想って事かな?

「一応言っとくけどさ、私みたいな細かい鑑定が出来ないと捌けないから勝手に食べちゃダメだよ? お腹壊すだけで済めば良いけど下手すると死ぬからね?」

「「美味し過ぎてもう死んでもいい!」」

 いやそういう問題じゃ無いから! ガチで死人出た事あるんだからね?

「エリー! あんたお料理上手だねぇっ! うちで働かないかい!?」

 おばちゃん、流石にここのお手伝いは出来ないってば。

 こうして希少部位の宴は夜中まで続くのだった。

 あれ?落成式って話は何処に立ち消えしたんだろう?

 まぁいいか・・・

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