第9話 The osmanthus of morning



山の奥にあるこの街では

既に金木犀は散っているはずなのに

私の庭にだけは金木犀が咲いている


彼女が家に来た時も

金木犀の香りが

彼女を包みたいから咲いているような気がする


彼女が仕事に行く時の緊張感のある顔

そこには昨日の優しい笑顔は消えている


失職している私には

金木犀の花や香りは

最早感じることも出来ず


ただ気まずい私の心を

優しく見守っている

生命の根源としか感じられないでいる

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