第4話 親愛なるものへ-4
上岡駅の前を抜けて、自転車置き場を物色した後、ぶらぶらとスーパーへ向かう。途中パチンコ屋の喧騒が聞こえてきたので、その駐輪場へ回って落とし物を探してみる。手提げがひとつ落ちているのを見つけると、やった、と思って手に取ってその場をさっさと後にした。しかしその中にはポケットティッシュとメモが入っているだけだった。ポケットティッシュを自分のポケットに入れるとその手提げを川の土手に捨てた。
川沿いにスーパーに辿り着くと、店内をぐるりと回ってトイレにもぐり込んだ。置き忘れの荷物もなく、落とし物もなかった。店を出て泉央一号線に出て、駅の下の通路をくぐり抜けて寮へと道を歩いた。途中、売土地の看板が立てかけられている空き地があったので、足を踏み入れると、捨てられたショルダーバッグが落ちていた。何かないかとまさぐると、中から宝くじが出てきた。もしかしたら当たっているかと思い、一応ポケットに突っ込んだ。
寮に帰って、寝ころがって天井を睨みながら、ぼんやりと考えた。せっかく自由に歩き回れる土日より、ゴミの日の方が身入りがいい。かといって、平日にうろうろしていると補導されるかもしれない。そうすれば、家出していることもばれて連れ戻されることは覚悟しなければならない。歳をごまかして、十六ということにしてみようか。背は高い方だからごまかしようはある。それでも身分証明できない以上補導されるのは確かだ。美生は、あれこれと思いめぐらしているうちに眠くなってきた。お腹も空いてきたな、と思いながら、明日はためしに昼間うろついてみようと決心すると眠りについた。
太陽が高く上がった下の風景は、案外閑散としていた。はるか先まで道を見渡してみても、ほとんど人気がない。いや、確かに老人や主婦の姿はあるのだけど、そう、活気がない。こんなものかと思いながら、美生はぶらぶらと道を辿った。どこへ行くともなく歩いた。ふと見上げると近くにマンションが見えた。思い立ってその方向へ道を変えた。
マンションのゴミ捨て場に行くと、目ぼしいものを物色した。マンガや玩具。子供が買いそうなものかりを探す。高級品が見つかっても業者に売り捌こうとすると未成年は親の同意書が必要になるから、今の自分の状況ではどうしようもない。とりあえず子供に喜ばれそうなものを捜し尽くした後、衣類の詰められた袋を見つけた。それを引き裂いて中から手頃なものを選別してリュックに詰めた。入りきらなかったものは用意してあった紙袋に入れてその場を後にした。あまり長居するのは、人目につくのでできるだけ手早く済ますことにしていた。緑道に入って休憩所のベンチで昼食にした。コンビニで買っておいたおにぎりとジュース。緑に囲まれた休憩所は、遠足にでも行ったような気分を味合わせてくれる。満足してごろりと横になると、うとうととしてしまった。
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