第43話
そのことを思い出すと、いまでも顔が上気して赤面してしまう。
命じられていること? いや、乃蒼からすれば面白いからやろうぜ、という提案を頭の中で繰り返し考えると、即座に顔から血の気が引いていく。
恥ずかしい。
なによりバレたら停学どころの騒ぎではない。下手したら退学だ。
そうなったら両親も妹も自分を見下し、家族から追放するだろう。
……牧那にだけは負けたくない。
いまここにはいない実妹の顔がふと脳裏に浮かんで、季美にしてはいけない決断をさせてしまう。
退学になったら俺と結婚すればいいじゃん。
そんな曖昧で空疎な適当に言ったに違いない乃蒼の言葉が、さらに背中を押した。
やっぱり怖いよ……。
やだやだと小さな子供がするように、季美は瞳を伏せて首を振る。
乃蒼はそれを快く思わなかったのか、彼女が自分に従わないことが不満なのか、軽く蹴りを季美の座るイスの下に入れてきた。
ダムッ、と体の芯の底から突き上げるその衝撃に、異物を胎内に収めている季美の肉体が、無意識に強張る。
それを解きほぐすように、再度、軽くイスの底が蹴り上げられた。
「ンッ……」
と、まるで野生の肉食動物が唸るような声。
どうするんだ、やるのか。やらないのか、やらないならお仕置きだぞ?
そんな意味を含んだそれが、後ろから問いかけてきた。
「また、食らいたいのかー……ちっ」
吐き捨てるような一言。ついでに鳴らされた舌の音は、彼がなにかに期待外れだったと見切りをつける寸前によくやる癖だったことを思い出し、季美は慌てて両膝を開いた。
丈の短いスカート。
教師からよく見えるようにと腰を突き出されたそれは、普段は閉じられて決して見ることを許さないはずの奥まで、ゆっくりと開かれていく。
もちろん下着はつけているし、外観からはそれといって変な、なにかは見当たらない。
かといって、だらしがない生徒が椅子の背もたれに身体を預け深く沈むようにするその行為は、前の席の男子の頭越しに……季美の下半身を徐々に露わにしていく。
「上げろって」
乃蒼の命令が飛ぶ。
教師はまだ板書している最中で、こちらには気づいていない。
体勢を戻すなら今しかないし、これが最後通告だ。
乃蒼の口ぶりはそう言っていた。
「……はい」
もう逃げられないと観念して、周囲の女子たち二人の視線を集めながら……季美のスカートは静かにお腹の方へと捲り上げられていった。
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