100「帰還」

街を歩いている時、仕事の合間のふとした時に


心の中に


「かえりたい」と


ぽつりと浮かぶ


その声がだんだん大きくなる


もう随分と長く地元から離れて生活していて


家族も自分の拠点をすでに別の場所に持っていて


誰も待ってはいないというのに


地元が恋しくなったのか


ただ懐かしいのか


住んでいた時は、


それほど思い入れがあるとは思ってはいなかったが


進学や就職の時も


積極的に


地元を離れようとは、思わなかった


ほどには


愛着を持っていたのだろう


ごく地味な


派手さもない


ただの地方都市の田舎なのに


今まで住んでた場所や今住んでいる場所も


いいところだとわかっているのに


当たり前にある


微妙な差が


違和感を感じさせるのだろう


仕事なんだから仕方ないとか


どうせならもっと都会に住んだら便利とか


他のひとはどうだとか


そんなのはどうでもよくて


ただ私が


ふと心から漏れ出る


「かえりたい」気持ちを


ただ受け入れて


「住みたい場所に住もう」と決める


いつだって


私が望んで、私が決めるんだ。


そして、あの場所も、


私がそう答えるのを、


待っている気がするんだ。




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