拾壱

 放課後の夕焼け空の下、伊久実と稲荷餅小学校の友人達と共に稲荷餅に蔓延る買収の闇を暴くため、稲荷餅美少年調査隊が結成された。

 通常、食堂の仕事で忙しい伊久実だが、稲荷餅の為と思い休みの合間に稲荷餅内の調査を行う。玉穂とこむぎも誘ったが、二人とも忙しいからと断られてしまった。

 そして、学校終わりの彼らが集合場所として集まったのは、小学校の敷地内ではなく、銀月神宮外宮だった。

 伊久実は焼酎瓶達が入っていたボックスを裏返しにし、上に伊久実が乗る形となった。古めかしい光景を思い当たらせるものだった。

 そして、伊久実は口を開いた。

「では、点呼を取るぞ一!」

「二!」

「三!」

「あっ、四!」

「よし、今回から稲荷餅の平和と風紀を守るため、この稲荷餅美少年調査隊が結成されたー! そして、これからこの稲荷餅の平和を脅かそうという団体と戦わなければならないー! しかーしぃ私は決して、この脅威に屈したりなどしないのだー!」

「「「\\\おおーー!!///」」」

 伊久実の演説に調査隊員達は拍手をした。

「これから、私たちは稲荷餅のパトロールへ行くー!準備はいいかー!」

「「\\はい!!//」」

「\Yes, sir!!/」


 まずは、銀月神宮・外宮をパトロールする。

「いいか、盗聴器などがあれば、見逃さずに取れ!」

 伊久実は率先して指揮をとる。

「隊長!」

 隊員の声に伊久実は反応した。

「なんだ?」

「これは、盗聴器でしょうか?」

 それは平然と素手で触っていたのは生きた蛇だった。

「いやー!」

 伊久実は思わず絶叫した。

「あ、これは本物の蛇だから、逃がしてあげて」

 もう一人の隊員に蛇を開放するように言われた。

「はーい」

 掴んでいた蛇を草むらへ逃がした。

 その後も探したが、不審物は見つからなかった。


 次は外宮に流れる川へ来た。

「さーて、ここも探すぞ」

「「\\おーー!!//」」

「\Yes, sir!!/」


 暫く探していた稲荷餅美少年調査隊。隊員の一人が普段見かけたことの無い黒猫が川で水を飲んでいた。

「隊長!」

 隊員は再び伊久実を呼んだ。

「なんだ?」

 伊久実もその声に反応した。

「あそこに見かねない黒猫がいます」

「そうだな。しかし、私たちの目的は黒猫なく、不審物だ」

「ですが、あの猫はあまり見かけない魚を咥えています」

「なんだって!?」

 伊久実は興味を示した。

「よし、追うぞ!」

((あれ、パトロールは?))

 そして、パトロールをそっちのけで黒猫の後を追った。


 そして、稲荷餅美少年調査隊は山の近くにある河川敷へやって来た。

「あれ? 猫は何処でしょうか?」

「ちょっとちょっと」

 隊員の一人が指を指した。

 調査隊全員で指し示す方向を見る。そこには先ほど境内にいた黒猫。そして、彼女には子猫達がいた。子猫達の母はミルクを与えるために河川敷へいた。

「結局、計画とは全く関係なかったですねー」

「まあーいいじゃない」

 調査隊は和やかな雰囲気となった。


 そのような空気も束の間のことだった。

「は!」

 隊員の一人があるものに気づいた。

「隊長、あそこ~~あそこ~~!!」

 伊久実に指さす方向を見るように促す。

「なんだ~~、そんなコソコソと話さなくても、私は普通の声でもいいと思うのだが」

「いや、小さい声で……。そんなことよりも、見てください」

「はいはい、えっと」

 伊久実は見た先を見た。


 その先には黒服姿の男達が集まっており、二台ほど黒色の高級車が止まっていた。

 彼らは別々の方向から来たのか、シルバーカラーのアタッシュケースを渡していた。

「たっ隊長……、あっアレって……」

「今はまだ息を潜めていよう。見つかったらまずい。いいか、静かに草と化すのだ」

「「はい」」

「Roger」


 十数分後経過し、黒服達は周りを警戒しながらもコンタクトが成功したのか、彼らは河川敷を後にした。

 伊久実率いる稲荷餅美少年調査隊は銀月神宮・外宮まで一緒に帰り、その後は解散となった。

「今回の活動はここまで!」

「「\\ありがとうございました!!//」」

「Thank you very much」


「ガラガラガラー!」

 建物の扉を開いた。古めかしい、ガラスと木でできたものだった。

「いらっしゃ……」

「ここにいたー! はっ、はっ、はっ……」

 伊久実は証拠写真のデータを持って玉穂のお店である甘味処・玉月に勢いよく入店した。その時の伊久実は獲物を狙うような目をしていた。そして、顔の筋肉は鋭い歯を見せつけるような表情をしていた。

「こっここにいると思ったのが、当たったは……。私、優秀すぎ……はっ、はっ、はっ」

 伊久実は自分の感が合たっていたことを自画自賛した。

 そして、そこには伊久実、玉穂、こむぎ達小学生三人と仲のいいイケメンの刑事さんがいた。

「伊久実ちゃん。そんなに急いでどうしたの? それに、よく僕がここにいるって分かったね」

「それはもちろん。散々こむぎから刑事さんの情報が欲しいって言われてるから、暇なときは皆と情報交換くらいしますよ」

「それは、凄いね。僕にもそんな力を仕事に活かしたいくらい……」

 刑事さんは伊久実達小学生の情報網の有能さに警察官という立場にいながら恐れをなした。

「まず、月、水、金の夜は私のお店。月、金、土は玉月。火、木、日はむぎまめ。それで、金の深夜はなんか、綺麗なお姉さんが看板の露出が多いような……」

「あー! そこはいいからー!」

(なんか、こむぎは人のプライバシーとか考えないのね。後で注意しよう)


「で、何かあった?」

 玉穂は話を続けるように促した。

「あ、そうだった! さっき、銀月神宮の外宮を流れる川を通ったら、河川敷に黒服の人たちがいて……」

「伊久実。それってもしかして……」

 玉穂は事前に調査隊の結成目的を知っていたため、稲荷餅・買収計画の黒幕を発見したのかと思った。

「あっ、なんか、怪しいなと思って写真とか動画とか撮っておいただけだから、断言はできないけど……」

「そのデータ、僕に渡してくれるの?」

「あ、うん。どの道、警察の人達には渡すつもりだったし」

 伊久実は手持ちのカメラから画像が保存されているSDカードと動画を納めたSDカードの二つのデータを刑事さんに渡した。

 その後、商工会議所などからも話を聞いた警察署は稲荷餅・買収計画の捜査に着手した。

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