023奴隷と神様のお風呂

12月も上旬ともなると寒い。

部屋はエアコンがあるので比較的暖かいが、風呂とトイレが寒い。

寝るときになるとエアコンを切るので、部屋自体も寒くなる。


困っていることの一つは風呂だ。

シロがこの部屋(いえ)に来てからずっと風呂に入れている流れで現在も風呂には一緒に入っている。


ただ、ワンルームの狭い風呂。

身体を洗うスペースも湯船も一人分。

二人で同時に入るのは難しい状態になっていた。


シロもご飯をしっかり食べて元気になってきたし、一人で風呂に入ることが出来るはずなので、別々に入ろうと提案した。


そしたら、シロが物凄く落ちこんだので、渋々継続が決まった。

まずは、シロが服を脱いで風呂に入る。


俺は服を着たままで風呂に入り、シロの頭と身体を洗ってやる。

最近では、頭から大丈夫になってきた。


女の子の髪を洗うのは大変だ。

自分(男)とは全然違う。


シャンプーを使う量も全然違う。

俺の場合は1プッシュで十分だ。

シロの場合は、3プッシュか4プッシュ必要だ。


洗うのも俺の場合は10秒とかで大丈夫だと思う。

シロの場合は、3段階に分けて10分くらいかけて洗っている。

だからこそ、こっちが裸だと寒いのだ。


そして、トリートメント。

俺の場合は10秒だな。

シロの場合は、5分くらいかけている。


洗われている間、シロは目をぎゅっとつぶっている。

漫画で言うとバッテンになっているくらい目をつぶっているので、シャンプーやトリートメントが目に入るのが怖いのだろう。


とてもかわいいのと、髪を洗うのは意外と忙しいので邪な気持ちを持つ余裕がない。

シロの身体も冷えないように定期的にシャワーを浴びせる必要もある。

せっかくシロは全裸でそこにいるというのに・・・


髪を洗った後、背中から洗い始める。

この辺りから心に余裕がなくなってくる。


風呂に入ろうが、泡だらけになろうが、シロはかわいいのだ。

覗きどころか、同じ部屋からガン見できるのだから、無反応でいろという方が無理というもの。


なんか、罪悪感も同時に発動するので、こんなことが続くと俺の心がどうにかなってしまいそうだ。


そして、次は前。

背中はまだいいのだが、前は自分で洗ってほしい・・・

ただ、最初のうちは自分では立ち上がれない程、憔悴しきっていたから俺が洗ってやっていたという経緯がある。


シロがくるりとこちらを向く。

いつもニコニコしている。

どういう心境なのか理解できないが、聞いたら何か取り返しがつかない気がして聞くことが出来ない。


手はまだいい。

しっかり洗ってやれる。

首は・・・シロが上を向くので、何とか大丈夫。

その後、胸を洗うとき少しうつむいて、うっとりした表情になるので何とも言えない。


ちなみに、俺は服を着ているから、まだ何とか誤魔化せていられるが、この時は既に下はガッチガチだ。


段々下に下がってお腹を洗い、足を洗い、当然足の付け根も洗う。

時々、シロが座ったままつま先立ちになるので、変なことしか考えられない。


視線を下げたらシロの全てが見えてしまうこの状況でもヘタレの俺はどこか視線をそらしてなるべく身体を見ないようにしている。

本当はスポンジじゃなくて、素手で隅々まで洗ってやりたい。


でも、シロの信頼を裏切ることはできない。

これが毎日だから俺の精神力ハンパない。


下手な修行僧よりも耐える訓練を続けている気がする。


ここでやっと、シロが湯船に入る。

俺は一旦風呂の外に出て、服を脱ぎ、もう一度風呂に入る。

ここの作業はゆっくりだ。

一応恥ずかしいから、腰にタオルを当てて入っているけれど、何となくシロにガン見されているような気がする・・・


俺の場合は、頭を洗うのも身体を洗うのもすごく早い。

シロがのぼせるということはない。


ただ、逆に俺が湯船に入れないのでシャワーを浴びながら時間を調整する。

そう、服を脱ぐときあまり早いとここで寒い思いをするのだ。


「かみさま、シロ、いいこと考えた」


「いいこと?」


「はい」


(ざばー)っと落とさせながらシロが湯船から出てきた。


「かみさま、お風呂に入って」


湯船に浸かってくれということだろう。


「分かった」


素直に言われた通り湯船に入ってみる。

ワンルーム用の風呂なので、足を伸ばすこともできない狭さだ。

あぐらをかいて座ったら、もうスペースはない。

身体を寄せても2人入るのは無理な広さだけど・・・


俺が入っている『上』にシロが入ってきた。

お湯が(ざばー)と音を立てて湯船の外に流れ出る。


俺のあぐらの上にシロが体操座りで座っている状態。


「コレダメダ・・・」


背中とはいえ、素肌と素肌が触れ合っている部分が多い。

心臓の鼓動が速くなってきた。


「し、シロ、これは・・・」


「シロ重たいですか?」


「いや、重くはないけれど・・・」


「じゃあ、シロ動きます」


シロがくるりとこちらを向いた。

こ、これは・・・『正面前座位』だよ。


お湯はシロの胸下までしか浸かってないし、シロが頭1つ上からこっちを見ている。


「シロっ!これだめだ!これ!」


これで反応しない男がいたら見てみたい。

ガチガチだし、入り口もすぐ近くだし、角度によっては入ってしまう事故もあり得る。


「あ、かみさま、大丈夫です。ほら、こうやったら」


シロが首に手を回してきた。

大丈夫とは?


完全に身動きが取れない上に体制が良い!いや、悪い!


しかも、シロとの『その時』のことを少し想像して、シロの腰に手を当ててみた。


「ひゃうっ!」


くすぐったかったのか、シロが変な声を上げて飛び上がった。


「し、シロあったまったから、あがります」


シロがそそくさと上がっていってしまった。

本当はタオルで髪と身体を拭いてあげないといけないのだけれど・・・さすがにお湯から出られない。


今日は自分で身体を拭いているようだったから、任せた。

何だよ『その時を想像』って!


そんなときが来るのかよ!?

色々と長風呂になった。

もう、シロと一緒にふろに入るのは限界だよ。



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