牡蠣鍋とマトンビリヤニ
今日は寒いからあなたのすきなお鍋にしようとおもって
加熱用だけれども宮城県産の牡蠣を買ってきたの
ぷるぷると引き締まった身
あなたのほほえみが浮かぶわ
玄関に足音が響く
あなたが帰ってくるの
自然と気持ちは高鳴って
あなたに牡蠣を食べてほしくて
なのにあなたは
マトンビリヤニを買ってきた
テイクアウトで買ってきた
駅前のインド料理屋で
マトンビリヤニを買ってきた
明日はお鍋にしましょうって
昨日の晩に言ったのに
あなたはちっとも覚えていないの
きっとわたしのことばはもう
あなたには届かないのね
別々だったら
美味しいと一言もいったでしょう
でもあなたは
マトンビリヤニを買ってきた
テイクアウトで買ってきた
駅前のインド料理屋で
マトンビリヤニを買ってきた
私とあなたもきっと
牡蠣鍋とマトンビリヤニのように
ちぐはぐになって
離れて行ってしまうのよ
きっとあなたは
牡蠣鍋では満足しないのね
あなたの心はマトンビリヤニを求めて
世界を駆け巡っていく
でも私は牡蠣鍋からちっとも動けないの
私は牡蠣鍋の女
寒いから鍋にしようってそう思ってしまう
単純な女なの
でもね
言ったじゃない
浮気はしてもいいけど
ばれないようにしなさいって
エビフライなら許せたわ
ハンバーグなら見逃したわ
でも
マトンビリヤニは許せないの
どうしてビリヤニなの
ターメリックの香りがそっと
私の鼻腔を苛める
ノロウィルスに当たって苦しみなさい
きっと私たちの愛には加熱が足りなかったのよ
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