義妹ができるから不良を卒業してガリ勉になろうと思うけど、なかなか卒業できない。
ポテふ
第1話 不良、卒業するってよ
「俺、今日で不良辞める__」
シン__と辺り一帯が静かになる。
それを見ながら、直も口を開いた。
「そんでガリ勉になる_」
その言葉を皮切りに、辺り一帯に怒声が響き渡った。
* * *
風間由貴、15歳。俺は今日、不良を卒業した。
それはなぜか、俺に新しい義母さんと義妹ができるからである。
母さんが亡くなって4年、父が仕事にのめり込み家に帰らなくなることが多くなってから、俺はグレた。
けれど時々感じる父の気づかわしげな視線と確かな愛情に、俺は悶々とした後悔を抱えていた。
今更辞めるに辞めれない不良生活。家に帰らない日もあった。けれど決まって次の日の朝は俺のことを叱るでもなく心配する父に、俺はとうとう我慢ができなくなっていた。
そんな時父がわざわざ話したいと言って時間を作ると、「新しい恋人ができたんだ、結婚したいと考えてるんだがどうだろうか_」とそんなことを言ってきたのだ。
勝手にすればいいのに__。
素直にそう思う。けれど父はちゃんと俺の意見を聞いて決めようとしている。
なら俺は父を応援しなくちゃだめだ。そう思って、父には結婚の話は前向きに進めてもらうように言った。
それからだ、父は何かと俺に意見を聞いてくるようになった。失った3年間を取り戻すように。
ぎくしゃくした父との会話も今なら笑い話のように仲良くなった。とても嬉しかった。
だからそんな優しい父親のために、またこれから新しい家族となる二人に迷惑をかけないために、俺はヤンキーを卒業し、県内有数の進学校への入学を目指して勉強を始めたのだった。
一年間俺は頑張った。
金に染めていた髪は黒髪に染め直し、着崩していた制服もきちんと着るようになった。
一年生から三年生の初めまでの勉強を隅々まで復習し直し、毎日毎日勉強した。
父が時々休みを取って何処かに遊びに行かないか?と誘ってきても断り、俺は勉強し続けた。
けれど、それだけでは当然合格など夢のまた夢。
いくらテストの点数が良いからと簡単に受かるほどあの学校は甘くはなかった。
何といっても、俺は内心点が絶望的に低かったのだ。
驚異のオール1である。もはや笑ってなどいられない数字。
2年間まともに勉強してこなかったせいで実質小卒レベルの頭の俺。それに加え、素行の悪さから下がるばかりでいた内申点。点数の高い副教科でさえまともに授業に出ることなく遊び歩いていた俺にとって、残り一年で爆発的に内申点を上げるのは正直血反吐を吐くほどきつかった。
通知表を受け取った記憶などない、おそらくどこかに捨ててしまったのか知らないが、自分の内申点を確認することなく進級してきた俺は完全に失念していた。はっきりいて阿保だ。
「やっべ、俺オール1じゃん!!」
中学校最後の夏休み前。
初めてと言って差し支えないほど久しく見ていなかった通知表をもらい、過去の分を確認すると自分の内申がすさまじいことになっていること気が付いた。
かろうじて一年生の初めはまともだったため5や4があるのが救いだった。
「おいおいやべーよ、は、はは、はっはっはっは」
思わず乾いた笑いが出た。
そんでなんだあいつみたいな目で見られた。かなし__。
清瀧高校。県内有数の国立高校。
偏差値は72。
俺の過去の内申を思えば絶望的。
そこで俺は勉強方法を大幅に変更し、受験で問われる教科の勉強を夏休みのうちに終わらせ、英検に全振りした。受ける級は1級である。
2級ですら受かったらすごいところを俺はそれをすっとばし1級を受けることにした。
なにも俺は無謀なことをしているのではなく、確かな自身があって受験した。
父は外科医。母はアメリカ人と日本人の両親を持つハーフ。
母の教育もあり、俺は問題なく英語が話せる。
問題なのは久しく英語を使っていなかったため、スペルがあやふやなことくらいだ。
以上から、俺は片手間に5教科分の勉強をこなし、定期的に行われる模試を受けながら、出題されるであろう単語の暗記に力を注いだのだ。
そのかいあって、無事に俺は英検1級を勝ち取った。
そしてそれに伴うように、俺は清瀧高校に合格することができた。
これはもう検定の力が大きいと思う。いやぁよかった。マジで。確実に落ちると思ってたから。
そんな訳で、無事俺の更生計画は着々と進み、明日はいよいよ新しい家族との顔合わせである。
どんな人達なんだろう。
漠然とそんなことを思いながら、暫し回想に浸り終えると、今だ怒声や泣き声が響き渡る建物からそっと抜け出したのだった。
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