数多の天職の中で世界最強
@umiru
第一章 バルハザード王国
第1話 異世界召喚
春が過ぎ、夏になろうかという季節。
「よう」
「おはよう」
「今日、帰りカラオケ行かない?」
「いいね、カラオケ! 行こう、行こう!」
隣で盛り上がっている同じ学校の制服を着た連中の横を、
〝煩わしい人間関係なんてごめんだ〟
その事件とは、
入学式の日、クラスメイトから声をかけられても、
逆に女のクラスメイト達からは、顔がイケメンなことと孤高の雰囲気の相乗効果から、モテモテ状態になっていた。当の本人は気づいていない。
クラスメイトの男どもの殺意に満ちた視線は、日に日に強まっている。もっとも、
教室の前までやって来ると、中から騒がしい声が聞こえてくる。
「おはよう。渡部君」
彼女の名前は
「ああ。どうも」
「おはよう。伊織、渡部君」
挨拶してきた彼女の名前は
「おはよう。雫」
「どうも」
伊織の返事とは対照的に、
「渡部君も大変ね。朝から伊織に絡まれて」
「もう! 別に絡んでないし!」
「はいはい」
雫のからかいに、伊織は顔を赤くして頬をふくらませる。そこに一人の男子生徒がやって来る。
「そんな奴放って、こっちで話そう」
彼の名前は、
「もう! 別にいいでしょ! 私が渡部君と話したいから話してるんだよ!」
「ふふふ」
伊織の怒ったような声に、雫はつい笑ってしまう。
「おい、そろそろチャイム鳴るぞ」
彼の名前は
「ああ」
「じゃあね。渡部君」
伊織はそう言い、雫を連れて離れていく。
「これわかるやついるか」
数字教師が黒板に書かれた文章問題を手で叩く。誰も手を上げなかった。かなりの難問だったからだ。数字教師の目に窓の外を見て呆けている
「おい、渡部。これ解いてみろ」
数字教師のご指名に、
「終わりました。もう戻っていいですか?」
「ああ」
「凄いね。渡部君」
「そうね」
伊織のはしゃぐ声に、前の席の雫は苦笑いする。はしゃぐ伊織を遠目から見ていた
午前の授業が終わり、昼休みになる。
袋を開け、パンをかじっていると、弁当を持った伊織が声をかけてきた。
「一緒に食べてもいいかな?」
「好きにどうぞ」
もじもじしている伊織に、
「うん。ありがとう」
嬉しそうに伊織ははにかみ、
「私も一緒にいい?」
「どうぞ」
「渡部君って休日何してるの?」
「別に何も」
素っ気ない
「この伊織の卵焼き美味しそうね!」
「ああうん。良かったら食べる?」
「貰おうかな。渡部君もどう?」
雫の言葉に、
「そ、そう」
雫は会話が続かないことにうだなれた。そんな中、三人の風景に割って入る男、苛立ちの表情を浮かべた
「おい、渡部。俺と勝負しろ」
「断る」
「ちょっと、二人ともどうしたの? そうだ。
「ええ。私は構わないけど」
雫は困った顔で、不機嫌そうな
バァ!と爆発したかのように光る。
数秒後、光が収まると教室には誰もいなくなっていた。残されたのは蹴倒された椅子に、食べかすの弁当、床に散乱する箸やペットボトル、教室の備品はそのままにそこにいた人間だけが姿を消していた。
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2021年10月30日。3時46分。更新。
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