返す手を取って君と踊りたい

ある日の男子高校生①ナリと鳥頭オカン


ナリ「ねえ鳥頭。『右の頬を打たれたら左の頬を差し出せ』ってどういう意味?」


鳥頭「暴力に暴力で対抗する事は不毛だというキリストの教えではないのか?」


ナリ「ふーん。右を殴られたら左を差し出すふりして出された手首掴んで顎にカウンターの蹴り、じゃないんだ」


鳥頭「それもありだな。分かったぞ、ナリ。犯人は左利きだ」


ナリ「ええ?謎は全て解けたの?ぐっさんの名にかけて?」


鳥頭「誰だよ、ぐっさんて。まあいいや。とりあえず左利き説は置いといて。通常右利きの人間ならば左頬を殴るだろ?」


ナリ「確かに」


鳥頭「ところが奴隷制の残っていた頃だったら、高貴な者が奴隷を手の平で触るのは不浄という考えがあったとする」


ナリ「ほうほう」


鳥頭「多分、不浄に触りたくないから右の裏拳で殴るんだよ」


ナリ「ああ…」


鳥頭「で、奴隷は反抗心を持ってないふりして左頬を差し出す訳だが、出されたら勢いで右の手の平で殴るかもしれない」


ナリ「なるほど」


鳥頭「その瞬間奴隷は『高貴な者と下賤な奴隷』が『対等』であるという『屈辱』を相手に与える事が出来る。『服従による復讐』の完成だ」


ナリ「え?エゲツな…その考え大丈夫?誰かに怒られない?」


鳥頭「ただの想像だよ、ぐっさん」


ナリ「ワトソン君みたいに言う?ぐっさんて誰だよ」


鳥頭「君が言うたんやないかい」

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