第60話 やれるっもっとやれる!
「はいっ右!左っ!もっと動けるっ!」
「ひぃ……はぁ……」
やっぱり、ジェシカ隊長のしごき……イエ、訓練は半端なかった。
しかしいきなり剣を持たされることはなく、受け身と当て身の練習からだった。所謂、空手や合気道などの型のような動きの指導を延々と受けた。
良かった、最初から双子相手に組手とかやらされるかと思ってた。
けれど、地味な型の動きだけなのに全身の筋肉を使っているのか、とてつもなく疲れる。
「はひぃ…………」
少しでもへばった所を見せているとジェシカ隊長がすっ飛んで来て、耳元でこう叫ぶのだ。
「大丈夫だ!リジューナは出来る!まだまだ限界は見えない!」
マジでどこかの某ムキムキの隊長みたいです…………ハイ。
締めで裏庭を10周走らされて…………その日は終えた。
聖女の治療魔法が使えて良かった。自分の魔法で自身の筋肉痛を癒した。
「疲れた……」
ヨロヨロしながら着替えてガゼボに戻ると、ジェシカ隊長と双子がお茶の準備をして待っていてくれた。
「お疲れ様~」
ジェシカ隊長は全然疲れてなさそうですが……
「リジューナ、すぐへばっちゃう~」
「へばっちゃう~」
おまけに双子達も全然疲れてなさそうなのですが……
隊長……ジェシカお姉様はお茶を飲みながら、恐ろしいことを言ってきた。
「リジューナもっと体力つけないと駄目よ~マグリアスから聞いたけど、ジュ・メリアンヌ学園の模擬戦って毎年内容を変えているんですってね?そろそろ『鬼ごっこ』の順番が来そうだと言ってたわよ?」
「おっ、鬼ごっこぉ!?」
あまりの懐かしいワードにジェシカお姉さまに聞き返した声が、ひっくり返ってしまった。
「そうだよ、ルールは知っている?クラスで『鬼役』を4人選んで残りの生徒を追いかけさせて鬼に捕まったら負け。追われる方の生徒は逃げ切ったら点数を貰えるんだって。鬼役の生徒も捕まえた生徒の数に応じて点数くれるんだって。マグリアスの時も『鬼ごっこ』だったけど、ずっと鬼役に立候補してて、模擬戦に参加していた生徒を大量に捕まえたとか言ってたわよ?リジューナもソレくらいを目指さないとね!」
無茶言うな!!あんな戦闘能力に特化したおっさんと一緒にされちゃ困る!
しかし、ジェシカお姉様から有益な情報を得たよ。
鬼ごっこか……要するに鬼から逃げ切って、見付からなきゃ模擬戦の加点対象になる訳だ。ジェシカお姉様の話の中にチラッと出てたけど、鬼役は立候補するみたいだしそもそも追いかけなきゃいけない鬼役なんて、体力の無い私には関係無いしね。
これで対策が練れるってもんだね。
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「……嘘でしょ?」
模擬戦の日程がジュ・メリアンヌ学園の廊下に貼りだされていた。
『模擬戦 鬼役:リジューナ=オーデンビリア、ジルファード=キールドラド、ベルフェリア=クシアラ、ルミエラ=ファーモル 以上四名』
「どうして私が鬼役なの……」
「あら、成績上位生徒が鬼役だって聞いたけど?」
「リジューナなら仕方ないじゃない~」
サラッとルミエラとベルフェリアが恐ろしいことを言ってきた。
「聞いてないよぉ!?」
「入学の時に貰った講義年間スケジュールの別紙に『特別課外授業の詳細』があったでしょ?そこに書いてあったわよ。『模擬戦の授業の際に各生徒の成績を考慮した採点形式に致します』って。それに模擬戦って実技試験なんでしょ?成績優秀者のリジューナが隠れる側に回っちゃったら、一生見付けられないし逆に鬼役が闇討ちで全滅しちゃって不公平になるでしょ?」
いや……ちょっと?パメラさん?
ルミエラもベルもパメラも大分砕けた感じの距離感になってきてくれて、私的には嬉しいのだけど、それとは別で言い過ぎではないかい!?
「闇討ちなんてしないよぉ」
心外だっ!と思って反論をすると、ベルフェリアがニタリと笑ってみせた。
そのゲスイ笑顔は令嬢の笑い顔じゃありませんよ……
「あらそう?私、リジューナって怖い怖い~と言いながら一番怖い反撃して返してきそうなんだもの。あなたって防御魔法系は完璧じゃない、きっと反射魔法も使えるじゃないかと思って」
「「反射魔法!」」
私とルミエラとパメラの声が重なった。
反射魔法とは……防御系魔法の最高位ランクの魔法の一つで、文字通り攻撃された魔法を反射して攻撃をしてきた術師に返す魔法……らしい(ウキウキペディア参照)
異世界の呪詛返しなんだけど……
「いやぁ流石にそれは難しいんじゃないかな?アハハ……」
な~んて答えてたけど、実は使えると思うんだよね。
絶対言わないけど……
しかし、参ったな。私が鬼だなんて他の生徒を走って追いかけるんでしょう?無理だと思うんだけどなぁ。
そうして鬼になっちゃったよ無理無理…と、ジェシカお姉様に報告したら笑い飛ばされた。
「なんで無理なのよ~逆にリジューナには有利じゃないのさ!」
「どうしてよ?走ったり飛んだりとか苦手なのよ?」
「そんなことしなくても、魔力を見ながらゆっくり追いかけて行けばいいさ!相手がどんな所に逃げ隠れしたってリジューナなら魔力が目視出来るんだから、一発で見付けられるでしょ?」
目から鱗とはこのことだ。
私ってば自身の能力のお陰で鬼ごっこの覇者になれるじゃない!
「我こそは……はっ!?」
あ……イカン。どこかの馬鹿と同じことを叫びそうになったわ。気を付けないと。
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