第7話[姉貴]

言葉が喋れる様になり、俺が発した第一声は「母さん」だった。

あの時の母さんの表情は何か複雑そうだったなぁ。

気を利かせて「ママ」とでも言うべきだっただろうか……。

何にせよ俺が「ママ」と言っていれば、姉貴に「何か可愛くない」って言われビンタされなかっただろうな。


「まあ、それは別にいいとしても……」


俺は思わず溜め息を吐き出した。

夢にまで見た異世界転生。

母と一緒に外へ出て来たはいいが、道ゆく人間全て、三次元じゃねーかよ。

まあ、母さんや父さんを見て何となくは気づいていたけど、ちょっとショックだわ。

はぁ、この世界でも死ぬまで童貞なのか……。

先の未来に絶望しながら家に帰宅する。


「タッティーナ、お帰り」


「ルリ姉、ただいま」


俺は抱きつく姉に笑顔を向ける。

また可愛いくない事を言ってビンタされたくないからだ。

勇者の姉だけあってか、子供なのにヤケに力強い。

転生する前の俺でも簡単に泣かされてしまう程だ。


「ルリ、夕飯の支度するからタッティーナをお風呂に入れてあげて」


「うん、分かったよママ」

「さあ、タッティーナ」

「一緒にお風呂に入りましょうね」


はっ?

何言ってんの?

嫌に決まってんじゃん。

俺は全力で抗った。

だが、ルリ姉の力は凄まじく、俺は担がれながら無理矢理お風呂に入れられてしまった……。


第7話 完

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