第29話 ソフィア・タッカー

【240日目 東京時間8月4日(木)1700頃 ワシントン時間 8月4日(木)0400頃】



名前 ソフィア・タッカー  

種族 人(女性) 吸血鬼

年齢 23  体力 G  魔力D

魔法 ー

身体強化 ー

スキル 精神操作E 噛みつきE 飛行E 

   変身E 血液操作E 怪力E

   鑑定E 吸血鬼の種

称号 亜神(時空)アリスの信者



「ではソフィア・タッカーさんを起こしましょう。


 ーー生命体干渉ーー「治癒!」



 私の「治癒」の効果で目を覚ましたソフィアさんはパチリと両目を開けると目をキョロキョロと動かして周りを見る。私の顔を見てハッとした顔になったのでニッコリとほほ笑んであげる。



「ソフィア・タッカーさん、こんにちは。あなたは吸血鬼男爵の支配から解放されました。おめでとうございます」



 ソフィアさんは両手のひらを顔の前に持ってきてジッと見つめて。顔を手のひらで覆うとグズグズと泣き始めた。



「うわーん! 吸血鬼男爵の眷属じゃなくなってるー良かった、もうアイツの言うこと聞かなくていいの?」


「もう聞かなくていいのです。たかが吸血鬼男爵風情、この私、異世界イースから来た亜神(時空)アリスにかかれば一撃です。私は神の中の神、時空神なのですよ? あなたの称号にあった『吸血鬼男爵の眷属』という称号は私の『亜神(時空)アリスの信者』という称号で吹っ飛ばしてやりました。安心して良いですよ?」


「ありがとう~去年の12月にはしつこく付きまとってごめんねえ~吸血鬼男爵に指示されていたことは拒否れないのよ~私の本意じゃないから許して~」


「はいはい許しましょう大丈夫です。あの時は海岸からタンパ市内まで車に乗せてくれて楽でしたからね、こちらこそ勝手に姿を消してごめんね?」


「わーん! アリス様~ありがとうございますう~」  



 ソフィアさんはガバッと上体を起こすと私に縋り付いて泣き出した。一瞬血を吸われるか!とヒヤリとしたけど問題なかった。ただただ私に縋っているだけらしい……



……しばらくして。



「あのーアリス様? 私はこれからどうしたらいいのでしょうか……吸血男爵の眷属では無くなったのはいいんですけど、あの男は私のことを『一億人に一人の才能の持ち主』って言ってましたし……また吸血鬼に狙われたらと思うとどうしたらいいのか。

それにまだ吸血鬼のスキルが残っているし……吸血鬼の種というのも未だにあって怖いです」


「フーム……吸血鬼の種というのは多分消せると思います……消してあげましょうか? でもそうすると吸血鬼スキルが消えてしまう可能性があるからなー。吸血鬼のスキルは色々と調査して確かめておきたいんだけど……どうしようか?」



 私が悩んでいるとエマ園長から提案が。



「アリスちゃん、このソフィアさんは南フロリダ大学の教育を出て保育園に就職する希望があったとのことですので日本に来てもらって大使館直営保育園に就職してもらったらいかがでしょう?

ソフィアさん良かったら日本に来ませんか? 日本に来れば私やミラ・アンダーソン海兵隊軍曹、コリンズ海兵隊大将もいて、茜ちゃんも居ます。

私たちとしてもあなたが再び吸血鬼の眷属にされてしまうと困りますし吸血鬼のスキルの分析もしたいのです。いかがですか?」


「はいーぜひお願いします! 私も亜神アリス様の近くにいたいです。吸血鬼男爵の眷属だった時はあの男の近くにいたいとか欠片も思わなかったのに……やっぱりアリス様が神様だからでしょうか?」



 ここでコリンズさんが警告を発した。



『アリス様、ソフィアさんの「吸血鬼の種」については不明点が多いため慎重に対応するべきです。吸血鬼スキルの検証は今日中に、直ちに実施して速やかに「吸血鬼の種」を消去すべきと思います。吸血鬼スキルも消してしまった方が良いでしょう……ソフィアさんもその方が良いでしょう?』


「はい、吸血鬼なんて大嫌いですから直ぐに消して欲しいです!」


『では家の中で吸血鬼スキルを確認できるものから確認を。できないものがあれば午前中にでも海兵隊クワンティコ航空施設に行って確認しましょう』









 ソフィアさんの持つ吸血鬼のスキルを検証した結果、次のような感じだった。


精神操作E 意識を飛ばしたり眠らせたりする。何かを指示したり命令を守らせたりするような効果は無い。


噛みつきE 実演を拒否されたので分からない。ソフィアさんもこのスキルは使ったことがないけど吸血鬼男爵から聞いた説明だと歯が鋭く丈夫になって嚙みつく力が強まり首も太く丈夫になる。スキルレベルによって強さが変化する。吸血鬼男爵の場合はライオンぐらいらしい。ソフィアさんの場合は犬ぐらいって言われたとのこと。


飛行E 空を飛べる。細かい制御はあまりできないらしい。速度もあまり出ない。


変身E 髪色、肌の色、顔のつくりを多少変化させる。吸血男爵は全くの別人に変化できるらしい。


血液操作E 血液を動かしたりできる。ソフィアさんのレベルでは大したことはできない。


怪力E 力が強くなる。ソフィアさんの場合は屈強な成人男子程度になる。


再生E 未確認。


鑑定E 茜ちゃんの「鑑定」と類似するが性能は低い(単に相性の問題かもしれないけど)。私たちを鑑定しても文字化けが多く不完全。レベルが上がったらどうなのかは分からない。




「ヨシ、吸血鬼スキルのことはだいたい分かったから「吸血鬼の種」を消してしまおうか。「噛みつき」とか「生命力吸収」とか試さなくても良いでしょう?」



 みんなも頷くので吸血鬼の種を消去してみようーー消去!




名前 ソフィア・タッカー  

種族 人(女性)

年齢 23  体力 G  魔力D

魔法 ー

身体強化 ー

スキル 精神操作E 噛みつきE 飛行E 

   変身E 血液操作E 怪力E

   鑑定E

称号 亜神(時空)アリスの信者



「吸血鬼の種を消したら吸血鬼じゃなくなった! でも吸血鬼スキルは残ってるね……スキルは吸血鬼であることとは関係なく独立して存在するのかな? でもソフィアさんが嫌がってた『噛みつき』とかは消しておこうーー消去!


「ついでに「精神操作」に対する抵抗力を上げておこうーー各種耐性をーー転写!」



名前 ソフィア・タッカー  

種族 人(女性)

年齢 23  体力 G  魔力D

魔法 ー

身体強化 睡眠耐性7麻痺耐性7毒耐性6

   恐怖耐性9嘔吐耐性9

スキル 精神操作E 飛行E 変身E

   鑑定E

称号 亜神(時空)アリスの信者




「ソフィアさん、これで吸血鬼男爵の「精神操作」攻撃は回避できると思いますよ?スキルのうち吸血鬼を連想しないものは残しました。嫌だったら言ってください」


『アリスちゃん? 精神操作は回避できるのは分かったけど、「吸血鬼の種」の埋め込み攻撃は回避できるのかな?』


『ああ、恐らくですけど「吸血鬼の種」の埋め込み攻撃は神技でいえば「精神構造体干渉」の系統なんです。睡眠耐性、恐怖耐性とかを持ってるとレジスト確率は高くなると思うけど断言できないかなー』


『そっか。分かんないならしょうがないね』





♢♢♢♢





 視認できない敵からの正体不明の攻撃を受けて右足を失った吸血鬼男爵ジョセフ・ゲオルゲ達吸血鬼五人は亜神アリスの住居から撤退するためスキル「闇魔法」の「潜航」を使って闇空間に潜り込んだ。


 闇空間は高さ2mくらいの平面で前後左右にどこまでも続いている。吸血鬼男爵達はまず「再生」を使って応急処置をする。出血は止められたが失われた体組織は栄養を取り込まないと再生しない……再生を行える場所まで逃げないと。



名前 ジョセフ・ゲオルゲ  

種族 吸血鬼(男性) 

年齢 1221  体力 G  魔力D

魔法 ー

身体強化 ー

スキル 闇魔法C 土魔法C 火魔法C 

   精神操作C 噛みつきC 飛行C 

   変身C 血液操作C 霧化C 

   怪力C 再生C 鑑定C 種まきC

称号 吸血鬼男爵



 闇空間に潜航中は外の様子が全く分からない。今回に限っては片足を失っているため早めに地上に帰らないと死んでしまうかもしれない。




 吸血鬼男爵ジョセフ・ゲオルゲは何とか片足で移動。他の吸血鬼は体の欠損がなかったのでほぼ回復していて気を失った士爵を抱えつつも余裕で50mほど移動した。


 直径10cmほどの覗き穴をあけて外を見てみると木の生い茂った庭のようだった。頭を出すと四方を壁で囲まれた庭らしい。


 ゆっくりと外部を観察して安全であると納得した後に闇空間から出た吸血鬼達。





 住宅のガラス窓に近づいて鍵のある場所の隣りのガラス面を火魔法で加熱する。ガスバーナーのような青く輝く火炎をガラスに放射して3秒ほどで手が入るほどの大きさで窓が溶け落ちた。


 鍵を開けて住宅に侵入した吸血鬼達は住人を精神操作で深く眠らせる。吸血鬼男爵ジョセフ・ゲオルゲは「噛みつき」と「血液操作」で住人の血液を取り込んで欠損した右足の修復にとりかかった。


 住人を殺してしまうと騒ぎが大きくなるため死なない程度に加減しながら何人もの住人の血液を奪って右足を「再生」するための養分を得ようとする吸血鬼ジョセフ・ゲオルゲ。


 血だけだと水っぽくて質量が足りないのでキッチンに行って冷蔵庫から肉やら卵やらを片っ端から取り込んで一息ついたところで吸血鬼公爵に電話をする。




「もしもし、公爵閣下、ジョセフ・ゲオルゲです……亜神と思われるアリス・コーディ襲撃に失敗して撤退しましたがソフィア・タッカーはたぶん囚われました」


「なに? おまえ、自信満々だったじゃないか。どうした?」


「真なる吸血鬼五人を含む六人で住宅に侵入後、姿の見えない敵から精神攻撃を受けて士爵二人とソフィア・タッカーは行動不能に……私はソフィアを連れて撤退中に右足に正体不明の攻撃を受けてひざから下を喪失。姿の見えない敵が複数接近するのを感じたため闇空間に潜航して逃走しました……」



「……手強いのか? 亜神とはいえ、強さは我々と大して違わないはずだが……そうなると方針を考え直す必要があるな……」







 吸血鬼男爵ジョセフ・ゲオルゲは吸血鬼公爵に亜神アリスの住居で起こったこと全ての詳細を報告した。


 その後にワシントンまで同道して送らせた北の国の国連事務所職員を車で迎えに来させると夜が明ける前にニューヨークへ向けて撤退していった。



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