第二話 皆生温泉とアキの初授業(Part 2)
アキ達とは別行程で皆生温泉へと向かっている者達がいる。
玄四朗のアンテナよりも高い精度で怪奇現象に遭遇してしまう一団。
そう、DoDoTVの三橋達である。
決して怪奇を愛しているのでは無いのに、なぜか怪奇現象を引き寄せてしまう運命の男が率いるこのメンバー、果たして今度はどのような事に巻き込まれるのであろうか。
「おいっ! 岩田っ! まだ着かねぇのかよっ!」
途中の渋滞もあり大幅に遅れたロケバスの中でイライラとしながら煙草をふかす三橋。
「しょーが無いですよ! 車なんですからっ!」
スポーツドリンクを飲みながらハンドルを握る岩田。
「わたし達も飛行機で行きたかったですよねぇ・・・。三波さん?」
ストローを差したオレンジジュースを片手に溜息をつくすず。
「取材だから、仕方ないかなぁ・・・。あっ! 見えてきましたよ、皆生温泉っ!」
三波が車窓から顔を覗かせる。
「やっと、見えて来たかぁ?」
三橋も窓の外へと目を向けた。
その途端に、ゾクリとした悪寒を感じる三橋。
(おいおい、また来やがったぜ。このイヤ~な予感が・・・。俺って呪われてるのか・・・?)
三橋の視線の先では三波が笑っている。
こうして、DoDoTVのメンバーも皆生温泉に到着しようとしていたのである。
アキと生徒達は着替えを済ませ、大広間に集まる。
「失礼します」
女将が挨拶に訪れるのを見て、慌ててアキが出迎える。
「この度はお世話になります。【テルマエ学園】の温水アキです」
ペコリと頭を下げるアキ。
「お世話になりまぁす!」
生徒達もアキに倣って頭を下げる。
「まぁ、随分とお元気な生徒さん達ですこと!」
女将は上品に、ほほほっと笑う。
「皆様は温泉旅館の御子息・御息女様と伺っております。―申し遅れました。私、当旅館【大徳園】の女将を務めております、大徳寺瑚都で御座います。本日はようこそおいで下さいました」
女将が顔を上げて、アキや生徒達を順に流すような視線を送る。
(わぁ、なんて綺麗な女将さんなんだろ・・・)
アキは見つめられてドキリとする。
龍麗・鈴麗・玄四朗・謙匠も心なしか頬に朱が差している。
「今から昼食をお運び致しますね。当館自慢の『牛骨ラーメン』で御座います。牛エキスを濃縮し、あっさりしたスープがモチモチ麺に絡まり絶妙な味わいとなっております。ゆっくりとお召し上がり下さいませ」
女将が下がると仲居達が続々と昼食を運んで来る。
空腹だったアキ達は、あっと言う間にラーメンを平らげたのであった。
美味しいと舌鼓を打ちながら・・・
それから、しばらくしてーー
DoDoTVの面々も【大徳園】へと到着する。
「おーっ、何だか老舗旅館って感じがしますねぇ」
岩田が先導するように入って来る。
「あっ、【テルマエ学園】御一行様って書いてますよぉ」
すずの言葉に三波も・・・
「でも、【DoDoTV】御一行様は無しね・・・」
3人が揃って三橋を振り替える。
「ふふふ・・・」
嬉しそうに笑う三橋。
「俺が歓迎板に書かない様にって頼んでおいたんだよ」
「どうしてですかぁ?」
腑に落ちない顔をして、すずが尋ねる。
「それはな・・・。温水先生をびっくりさせてやろうと思ってな! 三波、突撃インタビュー頼むぜっ!」
へへへっと笑いながら、三橋は三波の肩を押す。
「な~んか、悪趣味って感じですけどぉ!」
「まぁ、オジサンだから仕方無いんじゃない!」
クスクスと笑うすずと三波。
「んっ!? 何か言ったかぁ?」
「いいえ~。何もぉ」
三橋の問いに答える、すずと三波。
それを見て、ヤレヤレという表情を浮かべる岩田だった。
周囲が闇に包まれる頃――
アキ達は長い渡り廊下を歩いて浴場へと向かう。
左右を見回すとライトアップされた枯山水の庭園が広がっている。
「日本のわび・さび・・・。日本文化、素晴らしいですっ!」
アリスは外国人らしく大袈裟なリアクションを見せる。
「わび・さび~♬ わび・さび~♬」
果凛はなぜかスキップしながら、歌らしきものを歌っている。
「果凛っ! あんた、本当に分かってんのっ!? わびさびって言うのは・・・!」
紬が言いかけた瞬間。
「わっさび~♬・からしぃ~♬・しょうがぁ~♬」
果凛が声高らかに歌い出し、杏南も・・・
「おしょうゆぅ~♬ ぽんずぅ~♬」
更に、あまね迄が・・・
「かつおぶしぃぃぃっ♬」
キャハハハッと笑い転げる三人。
「ちょっと、このおバカ天然トリオっ! 透桜子も何か言ってってば・・・」
「枯山水・・・。手入れが大変でしょうね・・・」
透桜子は庭園に見入っていて話を聞いて無かったようだ。
「さすが・・・。老舗旅館・・・」
紬の横を通り過ぎる湊帆も、全く意に介さずという感じで見入っている。
(駄目だわ・・・。こんな低レベルの連中と一緒にいたら・・・)
頭を抱える紬の肩がポンっと軽く叩かれる。
振り向くとアキの姿が・・・
「どうしたの? 早く行こう!」
「温水先生は、あんなの見て何も思わないんですか?」
「うんっ? 皆すごーく、元気だなって思うよ」
(まだ、まともなのは留学生のアリスかぁ・・・。この学園に来て良かったのかな・・・)
先行きの不安を感じる紬であった。
「おいっ、ヤモリっ!あれを見て見ろっ!あの石、人面石じゃねっ?」
さすがは玄四朗。
何でもオカルト現象に結び付けるのはある意味、才能と言えるだろう。
「何言ってるのさ、普通の石だよ~」
苦笑する謙匠。
龍麗と鈴麗もしばし足を止めて庭園に見入っている。
心なしか、アリスとの距離を取っている様だ。
「でも、綺麗だなぁ・・・」
庭園を見るアキが呟いた時、前方から涼やかな風が吹いたように感じるアキ。
(えっ!? 風・・・?)
だが、風などは吹いていない。
(んっ!?)
アキとアリスが何かを感じ同じ方向へと顔を向ける。
廊下の行き止まりの先に、マスクで顔を覆っている男の子が1人佇んでいる。
(ふーん、気配を消していたのに気付かれたか・・・。それも、女2人・・・)
アキとアリスの視線が男の子の視線と交差する。
(こいつ、何か背負ってやがるな。かなり強い、いや高貴な・・・。それと、外人さんはかなりの修羅場をくぐってやがる。面白れぇ)
音も無く、すれ違う一瞬の出来事。
アキとアリスが振り返ると、男の子の姿は、もう見えない。
(今の男、完全に気配を消していた。ワタシがここまで気付けないなんて、何者なの?)
アリスは苦虫を噛み潰したような顔を垣間見せる。
(あの男の子、また逢える気がする・・・)
アリスとは真逆にアキは優しい微笑を見せる。
アキの予感は遠からず的中する事になるのだが・・・
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