奪いあい #10

私も急いで車に乗り込み、男子寮に向かう車。


りく先輩「大丈夫?寒くない?」


心愛「今日は暑かったしちょうどいいですよっ!」

  (れん先輩に嫉妬もあるんだろうけど、りく先輩が水をかけたことはさすがに...でもあそこまで完璧だと嫉妬する気持ちもわかるし私もりく先輩の本当の優しさを今日見たから...)


りく先輩「ここちゃんは優しいんだね。こんな最低なことしたのにっ...」


心愛「私こそ最低ですよ。りく先輩の気持ちも考えるって言ったのに気持ちはっきりせずに曖昧にして...」


りく先輩「そんなことまで気にしてたの!?」


心愛「はいっ...」


りく先輩「はぁ...今すぐどっちを選べなんてもう言わないから今は僕たちに守られる。それだけでいいよっ。れんもそう思ってるはずっ!」


心愛「あっ、ありがとうございます...」


りく先輩「ほらっもう着くよ!笑って笑って!」


そう言って私のほっぺを引っ張り、無邪気な笑顔を私に見せるりく先輩。

れん先輩とはまた違った安心感から少し心が安らいだ。


道はかなり混んでいて少し時間が経ってしまったけど、なんとか男子寮についた。車を降りるとりく先輩は私の手を持ってまた恋人繋ぎをする。

昨日よりも時間が早かったからか周りには帰ってくる男子生徒がちらほらいた。


りょう「心愛?」


心愛「り、りょう君っ!?」


そこには男子寮に入ろうとするりょう君がいた。

こっちを見るなり険しい顔をしてりく先輩に問いかける。


りょう「おい、こんな時間まで何してた。」


りく先輩「ん〜??何って遊んでご飯食べて、今かられんと3人でお泊まり会っ♪」


りょう「なっ...!?」


りく先輩「なになにっ?りょうも参加するっ?」


りょう「うるせえ。心愛はそれでいいのかよ!!」


心愛「い、いいっていうか...」

  (正直、りょう君が公開告白した時以来...ずっと先輩たちが守ってくれたり、連れ出してくれて、今は先輩たちの方が一緒にいると楽しくて安心する...)


りょう君と目を合わせられず、なぜか締め付けられる心にりく先輩と繋いでいる手に力が入ってしまう。

そんな私を見て何も言わずにいきなり男子寮に戻っていくりょう君。


りく先輩「ここちゃんよかったのっ??それにその表情、りょうより僕たちに惚れちゃった!?」


心愛「え!?ち、ちが...!//」


りく先輩「え〜違うんだ〜残念だな〜...まあれんも待ってることだろうし、行こっか!」

   (このままならりょうとは引き離せそうだな。)


そう言って繋いでいる私の手を引っ張り、エレベーターに向かうりく先輩。

最上階のボタンを押し、れん先輩の部屋に向かう。

ドアの前に立つと、お店での出来事を思い出して少し気まずくなってきた。


ガチャッ


自分の部屋のように容赦なく部屋のドアを開けるりく先輩。


れん先輩「遅かったな。」


そこにはお風呂上がりなのか上半身裸で長い髪をタオルで乾かしているれん先輩がいた。


心愛「え、えっと...//」


れん先輩「男の裸くらい見たことあんだろ?それに昨日の夜あんな姿になってたくせに。笑」


少し意地悪に微笑むれん先輩


心愛「そ、それは...//」

  (思ったよりれん先輩普通だ...もっと怒ってるかと思った...)


りく先輩「ここちゃん先にお風呂入ってきたらっ??それとも僕と一緒に入るっ?♡」


心愛「は、入りませんっ!」


れん先輩「お、りくに拒否反応か?笑」


心愛「そういうわけじゃ...!も、もう入ってきます!」


れん先輩「まって心愛。これ、用意しといたから使って。」


そう言うと、リビングのソファの上にある紙袋を渡してきた。

中身を見ると、人気ブランド服のピンクのパジャマと、可愛らしい下着が入っていた。


心愛「こ、これって...」


れん先輩「パジャマは華からのプレゼント。今日会って仲良くなりたいからってお前ら来る間にこの家にモデルのスタッフ使って持ってきた。下着はりくからサイズ聞いたから合ってると思うけど俺たちからのプレゼント。」


りく先輩「僕の手すごいんだよ〜!触っただけでサイズ分かっちゃうの!」


心愛「さ、サイズって...// でも私何もしてないのにこんなの...」


れん先輩「いいからっ。風呂入ってこいっ。」


そう言って私の背中を押しながらバスルームに連れて行くれん先輩。

私がバスルームに入るとれん先輩はリビングに戻っていく。

ドアを閉めて1人になると今日あった出来事が頭によぎった。


---------お風呂-----------

お風呂に浸かってのんびり今日のことを考えていた。


心愛(自分の部屋だと面倒くさくてお風呂浸からないからやっぱり新鮮だな...。それにしても今日楽しかった...。

りく先輩すごく優しかったしそれに照れちゃう自分もいた。誰が好きかなんてまだわかんないけど今はりく先輩に言われた通り深く考えずにこうやって過ごしてる方がいいのかも...。)


ガラガラッ


心愛「え!?」


りく先輩「ねえ一緒入ってもい?」


いきなりドアが空いたかと思えばそこには服を脱いで腰にバスタオル一枚巻いたりく先輩がいた。


心愛「だ、だめです!!し、閉めてください!!それにれん先輩は!?」


りく先輩「テレビ見ながらソファでうたた寝しちゃった♪」


心愛「そんな...とにかくダメです!」


りく先輩「え〜見ないから!ね!」


心愛「今見てるじゃないですか!//」


そう言っている間にズカズカ入ってきて、私の前でバスタオルを外して勝手に体を洗い出すりく先輩。


心愛(いやいやいや、何この状況!?と、とりあえず髪を洗ってる隙にそっと抜け出そう...。)


りく先輩が髪を洗い出し、前が見えていない隙に浴槽から足を出して忍び足でお風呂を出ようとする。


りく先輩「ここちゃ〜ん??見えてるよ?」


あとちょっとでドアに手が届きそうなところで手を引っ張られた。振り返るとこっちを見ているりく先輩。


心愛「...!// み、見ないでください!!」


りく先輩「もう昨日見てるしいいじゃんか〜!ほら、お風呂に戻らないとずっとそんな格好で立ってるの??まあ僕は大歓迎だけどねっ」


落ち着いて考えればそのまま無理やり上がってもよかったのに、パニックになっていた私は、言われるがまま浴槽に戻り、またお風呂に浸かってしまった。


りく先輩「ねえ一緒に浸かってもいい?」


と言いながら返事なんか待たずに浴槽に入ってくるりく先輩。


心愛「えぇ!?あ、あの...!」


私の後ろから抱きつくような体勢で座って浴槽の中でりく先輩の腕に包まれる。

恥ずかしさがなぜか安心感に変わって少し眠くなってくる。


りく先輩「今日、楽しかった。毎日放課後2人で過ごせたらいいのに。」


心愛「私も楽しかったです。今日りく先輩言いましたよね?今すぐ誰か選ぶことないって。だから私もちゃんと一人一人と向き合ってちゃんとゆっくり考えます。」


りく先輩「ん〜〜〜!嬉しい!」

  (向き合うのは俺だけでいいんだけどなあ...)


私を後ろから抱きしめるりく先輩の腕の力がもっと強くなる。


心愛「く、苦しいです!」


りく先輩「ごめんごめん笑 そろそろあがろっか!待ってねっ」


チュッ


心愛「!!//」


急に触れるだけの軽いキスをされ、お風呂から上がるりく先輩。お風呂でのぼせているのか、顔が熱くなっていくのが自分でもわかる。


りく先輩「はいこれ。恥ずかしいんでしょ??」


バスタオルを持ってきて渡してくれた。


心愛「あ、ありがとうございます...」


お礼を言いながら先輩の顔を見上げると、腰にタオルを巻いて、細身なのにしっかりある腹筋。揺れるピアスに水が滴る銀髪の髪、普段とはまた違った雰囲気のりく先輩に見惚みとれてしまっていた。


りく先輩「ここちゃん。僕のこと気になってんでしょ?」


心愛「そ、そんなんじゃ...!もう上がりますよ!ほら!」


私もお風呂を上がってりく先輩を後ろ向きにさせ見られないようパジャマに急いで着替える。


りく先輩「ねえ振り返っちゃダメ?」


心愛「まだです!」


りく先輩「だって〜ブラのサイズちゃんと合ってるか確認しないと〜」


心愛「しなくていいです!!...着替えましたよっ」


りく先輩「ここちゃん...」


心愛「は、はい...」

 (え、何...?パジャマ似合ってなかったとか...?)


りく先輩「めっっっちゃくちゃ可愛い!!似合ってる!!」


そう言って思い切り抱きしめてくるりく先輩


心愛「は、はなひてふだひゃい(離してください)!」


りく先輩「こ〜んなに可愛いここちゃん我慢出来るわけないじゃんっ!」


ガラガラッ


れん先輩「お前らなにやってんの?」


心愛「!?」


りく先輩「あ、れん起きたんだ!見てみて!パジャマ姿たまんなくない!?」


れん先輩「あ、え、ま、まぁな...//」


りく先輩「でしょでしょ!こんなの抱きしめないわけにいかないよ〜」


れん先輩「そ、そうじゃねえんだよ。なんでここにりくがいんのかって話してんだよ」


りく先輩「え?だって今日3人で泊まるんでしょ?」


れん先輩「はぁ...お前...わざと話逸らしてんだろ...」


ため息をつき呆れた表情をしたれん先輩は、りく先輩の耳を思いっきり引っ張りリビングに連れていかれた。


りく先輩「痛い!いたたたた!痛い痛い!」


心愛「え!?あ、あの、先輩!?」


れん先輩「ごめん心愛。髪でも乾かして少し待っててねっ。」


いきなり騒がしくなったかと思えば急に1人になり静かになる。


心愛(い、今何が起こったの...?とりあえず髪乾かそ)


いつの間にかこの環境に少し慣れてきている私は少しりく先輩の安否が心配になりながらも言われた通り髪を乾かしていた。


心愛(髪...乾かし終わったけどリビング行ってもいいのかな...)


恐る恐るリビングに行くと部屋のど真ん中にれん先輩が立っていた。その前には正座をして何やら反省させられてるりく先輩の姿があった。


れん先輩「だから心愛に何したか聞いてんだろ。」


りく先輩「あいつが可愛すぎんだもん...// 今日なんてゲームセンターでお菓子1つとる度にめちゃくちゃ喜ぶんだよ。たまんねえだろそんなん...」


れん先輩「話にならねえ...」


心愛「あ、あの...」


れん先輩「あ、丁度いい時に来たっ。ねえお風呂入ってる時りくに何かされた?」


心愛「え、えっと...お風呂に入ってきて一緒に浴槽浸かって...」


りく先輩「うわぁぁぁ(泣)ここちゃん言わないでよ...(泣)」


れん先輩「り〜く〜??」


りく先輩「ご、ごめんって!もう強引にお風呂入らない!」


れん先輩「今日も俺が心愛と寝る。昨日みたいなことあったら明日の生徒会の仕事増やすからな。」


りく先輩「うっ...わかったよ...」


心愛「あの...えっとー...」


れん先輩「心愛、先に寝室行っててくれる?」


心愛「わかりましたっ」


りく先輩「え〜もうちょっとこっちで遊ぼうよ〜」


れん先輩「お前のせいで心愛余計に疲れてんだろ。お前はソファで黙って寝てろ。」


りく先輩に対するれん先輩の威圧感から、あえて何も言わずそのままれん先輩の寝室に向かった。

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