第14話
「アリスさん!?」
ブルーノは気を失って倒れたアリスを抱きかかえた。
「……なんて冷たい手だ……。魔力を消費しすぎたせいか?」
ブルーノはアリスを抱きかかえたまま、アリスの家へ歩いて行った。
「家の鍵はカバンの中だろうか? 少し失礼します、アリスさん」
そう言うと、ブルーノはアリスのカバンを開け家の鍵を探し出した。
「これかな?」
ブルーノは鍵をドアノブの下の鍵穴にはめて回した。
ドアがカチリといって、開いた。
「良かった。アリスさん、家に入りますよ」
「……」
アリスの返事は無かった。
ブルーノは暖炉の火をおこし、部屋を暖めた。
そしてアリスのコートを脱がせ、そっと長椅子に寝そべらせた。
「アリスさん、アリスさん」
「……寒い」
アリスはうなされながら、呟いた。
ブルーノは部屋から毛布を探しだし、アリスにかけた。
「アリスさん、台所をお借りしますね」
「……はい」
アリス声は小さくて消えそうだったし、その肌は血の気が引いて真っ白になっていた。
ブルーノは急いでホットワインを作ると、アリスに言った。
「アリスさん、スパイスと蜂蜜の入ったホットワインです。飲んで暖まって下さい」
「……ありがとう、ブルーノ様」
アリスはゆっくりと上体を起こして、長椅子に腰掛け直した。
「熱いですから、気をつけて下さいね」
ブルーノはホットワインをアリスに渡した。
アリスは少しずつ、それを飲んだ。
だんだんと、肌に血の気が戻ってくる。
「アリス様、無理なさらないで下さい。森では心臓が止まるかと思いました」
「ブルーノ様、ごめんなさい。でも、封印しなければ、あのドラゴンは殺されてしまったでしょう? 可哀想です」
アリスの言葉に、ブルーノはため息を着いてから微笑んだ。
「仕方の無い方ですね、アリスさんは」
ブルーノの言葉に、アリスは俯いた。
「それにしても何故、ドラゴンの封印が解かれていたのかしら?」
「それは、占い師のエメリーとマーク医師が関わっているようです」
「え!?」
驚いたアリスは持っていたホットワインを落としそうになった。
「落ち着いて下さい、アリスさん」
ブルーノはワインがこぼれないように、アリスの手を支えた。
「そういえば森の木が、先月男女の二人組が森の奥のほこらの方に歩いて行ったと言っていたわ」
アリスは不安そうな表情でブルーノを見つめた。
「多分、エメリー達がアリス様を陥れるために、ドラゴンを解放したのでしょう」
「え!? それはどういう意味ですか?」
ブルーノは言葉を選ぼうとしたが、うまく言えなかった。
「アリスさん、エメリーとマークはアリスさんを森から追い出したいんですよ」
「……それは困ります。私には行くところが無いんです」
ブルーノはアリスの言葉を聞いて、その両手を優しく握りしめた。
「アリスさん、エメリーとマークのことは私に任せて下さい」
「ブルーノ様?」
心配するアリスにブルーノは笑って言った。
「アリスさん、私は町では一目置かれる存在なんですよ? 町長に話を通しておきます」
アリスはブルーノの笑い声につられて、微笑んでいた。
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