第30話 VS 血眼オオカミ軍団

『ああっ、もう! しつこい!』

『くっ! まさか頭領クラスがいるとは……』

『ブレイハム様!絶対に馬車から出ないでください!』


『わ、わかった』

『ひぃっ!』


 騎士の隊長らしき人物が血眼オオカミに槍を振るうが、綺麗にバックステップを踏まれて距離を取られてしまう。周りの護衛の騎士二人も同様、槍を振るうと距離を取り……スキを見て馬車だけを攻撃する。傍から見ていると滅茶苦茶頭が良いな、血眼オオカミってやつは。


『キョウカ、右側から突っ込んで!』

『了解!』


 そうヴィナルカが言うと同時に弓を放つ。馬車を噛みちぎろうとしていた血眼オオカミの目にきれいに突き刺さる。40メートルはあるのに……すごい精度だ……


 キョウカがものすごい速度で血眼オオカミの群れの右側から突っ込み棍棒で文字通り吹き飛ばしていく。不意を打てたのか、吹き飛ばされた仲間を見て呆然としている血眼オオカミを更に吹き飛ばしていく。


 その間にもヴィナルカが弓を放ち、棒立ちになり動きの悪い血眼オオカミの目を射抜いていく。


『ご助力感謝する!』

『押し返しましょう!』

『うおぉおりゃ!』


 突然の俺たちの襲撃に血眼オオカミが陣形を乱す。その隙きを突いて騎士団の3人が槍を血眼オオカミの肩口に突き刺し跳ね飛ばす。吹き飛ばし方を見てもやはり魔力を込めている感じだな、ライオンくらいの大きさなのに中型犬みたいに吹き飛んで行く。


 血眼オオカミの半数が動揺してこちらを襲うかどうか迷っている感じだ。後ろの方にライオンを更に2回り大きくしたサイズの血眼オオカミがこちらと馬車を見比べていた。馬車にはかなりおいしい餌……ヤツが狙うべき何かがある感じだな。


「タクマさん、魔法撃ちませんか?」

「あの、ボスっぽいやつでしょ?」

「アレに打てば確かに勝敗きまりそうだな……やるか……ホムのやってた爆裂がいいけど」

「まだやってませんものね……」

「大きな火の槍じゃだめ?」

「それじゃなるべく早い槍でいきますか。」


 俺たち3人は現実の槍を左手で抱え、右手に先程の練習よりも多めの魔力で火の槍の玉を作る。エルドが、『えっ?』と言った表情で俺たちを振り返る。


 ……しまったかもな、魔法を撃つのをなにも仲間に連絡してない……射線に誰もいないし……まぁいいか。


 ヴィナルカもこちらを見て一瞬驚くが、彼女も弓に魔力を込め始める。何かをやる準備をしているみたいだ。

 キョウカも俺たちをチラッと見たら方向転換しボス方向に転身を始めていた。


「火の槍!」

「火の槍っ!」

「いけっ!」


 俺たち3人からは練習での火の槍の数倍の大きさの槍が血眼オオカミのボスにめがけて放たれる。チサトのはなった火の槍が血眼オオカミのボスの足周りに着弾し爆発を起こした後、続けて俺の槍が胴体に辺り爆発を起こす。軽く吹きとんだ後に顔面あたりにシュウトくんの火の槍が直撃し爆発を起こす。魔法の着弾で土煙が舞う。狼の姿が見えなくなってしまった。


「やったか?」

「はずれた!」

「槍と盾を構えよう!」


 そんな煙で視界が見えない中、ヴィナルカが矢に魔力を込めて煙の中に放つ。ものすごい轟音をまとった矢が煙を吹き飛ばしながら目視できなかった血眼オオカミのボスの左肩を直撃する。


「ギャウッ!」

 

 まだ生きている!ヴィナルカはあの煙の中でも見えるのか!


 満身創痍な血眼オオカミのボスがこちらを睨みつけた瞬間、


『もらったぁ!!!』


 煙の中からキョウカの魔力が爆発したかのような力強い感じで血眼オオカミのボスの顔の側面を棍棒で殴りつける!かなり大きな鈍い音と共に綺麗に血眼オオカミのボスが吹き飛ばされる。吹き飛んだ後は顔が見るに堪えない状態になっている。


 その様子を見ていた数十匹の血眼オオカミの群れは文字通り尻尾を巻いて逃げ出していく。


 気がついたらその場には20体以上の血眼オオカミの死体が散らばっていた。ここまでして何をやりたかったのだろう? あのボスオオカミは……


『タクマ!槍、かして!』

『? いいよ?』


 キョウカが俺から槍を受け取ると、先程倒した血眼オオカミたちにトドメ、と言うより血抜きをしていく。あの様子だとこの世界の人はオオカミも食べるのだね……

 

『タクマ、チサト、シュウト、ありがとう。あと、ダメ、いきなり魔法』

『ごめんなさい……』

『わりぃ……』

『え? なんで?』

『私達、あなた達、使う魔法、知ってた。だからうまく行った』


 俺たちが練習していた魔法が火の槍、火の矢、だけだったから二人が対処出来たのだろう。他の魔法だったら何が起きるかわからないから、ヴィナルカが弓矢の魔法を重ねられなかったし、キョウカが止めをうまくさせなかっただろう。

 

『俺、びっくりした、魔法使う、危ない、使う前、話、たくさんする』

『そうよ、魔法、すごく危ない。あなたの魔法、キョウカが受ける、大怪我。あと、相手を倒せない、魔獣、魔法を使った人、狙う』

『ああ、なるほど……「リアルのヘイトか……」……ごめんなさい、知らなかった』

『なにそれ?』

『魔獣、攻撃あてる。当てた人怒る、攻撃する』

『なるほど。やったらやり返される。だね』


 騎士の隊長っぽい人がこちらに近づきながら話しかけてくる。


『いやはや、連携の練習なしであそこまでやったのですか? ものすごいベテランなのですね』

『ごめんなさい、話、少しだけ分かる』


 チサトがすぐに答えてくれる。相手もヘルメットをかぶっているが女性の声だな。ヘルメットの奥の目はきれいで澄んだ感じがする。


『あ、言葉、分かる人、います?』

『あ、みんな、少し分かる。言語教習の仲間』


 俺がチサトの言葉をフォローする。


『ああ、わかりました、皆さん探索者ね。今日はありがとう。後でしっかりとお礼はさせてもらいます。後、倒した血眼オオカミはあなた達が売り払っておいて。私達には必要ないわ』


『言葉、半分くらい、わかったわ!』

『ええっと、オオカミ俺達のもの?』

『そうよ、私達はちょっと急ぐわ、あの御方は思ったより狙われやすいみたい』


 女騎士が合図を送ると、馬車に乗っていた二人を馬に乗せた二人の騎士が移動を開始する。貴族のお坊ちゃん? らしき人とそのお付きの女性といった感じだった。女騎士たちはそのまま城門に向かって早駆けで移動をし始める。魔力をまとった目で見てみると、貴族のお坊ちゃんが、ものすごいきれいな魔力をしていた。魔獣は魔力でも食べるのか?




 それから、みんなでどうやって大量の血眼オオカミを運ぼうかと思案していると、城門の方から大八車軍団がこちらに向かってくる。先程の騎士達が手配をしてくれたのだろうか?


『おお、コレは大量ですね。アルティア様から運ぶお手伝いをしろとの命を受けております』


 兵士らしき人が丁寧に挨拶をしてくれる。先程の女騎士がアルティアなのかな? そう言えばお互い名乗りもせずに立ち去ったな……それだけあのお坊ちゃんが要人だったんだろうか? かなり急いでいたものな。


『血抜きもしっかり、さすが探索者ですね』

『探索者?』

『あれ? 探索者じゃないのですか?』

『言語教習の仲間よ?』

『ああ、訓練生ですね。さすが、訓練生になれるだけはありますね、これだけの数……私達だったら死者が出ますね……』

『ごめんなさい、話、少しだけ、わかる、ゆっくり、お願い』

『ああ、そうですね。わかりました……』


 そんな話をしていると遠くで『おおっ!』というざわめきが聞こえる。なんだ?と俺たちが目を向けると、血眼オオカミのボスの死体を見てざわついていた様だ。


『でかい、大物ですね』

『これは……領主様に報告だな』

『災厄の前触れでしたっけ、頭領クラスがかなり巨大になるのは……』

『そうかもしれないね、俺たちも実際目にしてきたわけじゃない、忘れずに報告だな……』


 半分くらいはネイティブ語だったので聞き取れなかったが、かなり巨大で、大変なことが起きるみたいなのはわかった。一番言葉のわかるヴィナルカも耳をピコピコさせながら色々考えている様だった。




 それから兵士達に狩人協会に獲物を運んでもらい査定をしてもらう。経費や税金を差っ引いても、合計少銀貨440枚にもなった。焼け焦げていた毛皮は値引きされたが、それでも査定の半分がボスオオカミだったらしく、魔石がかなり高値だったらしい。報酬を受け取ると俺たちはさすがに気疲れをしたのでそのまま宿に帰り、報酬を山分けしてから夜ご飯をみんなで食べて、いつも通りに言語トレーニングを行ってから床に着いた。


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