第8話 最終グループ
《清華side》
わたしは関係者席で電光掲示板に写ったのが見て信じられないことが起きている。
「
「そうなんだよ、いつになったら暫定二位になってくれるのか……」
隣にいるのは
琉莉香ちゃんとは二年ぶりに会ったのでついつい話し込んでいたの。
涼香ちゃんは暫定九位、みつ姉は暫定十二位だ。
あと女子シングルの前にフリーダンスが行われたアイスダンスで琉莉香ちゃんたちは結果が出ていてベテランカップルに僅差で二位の成績を出している。
おそらくオリンピックと世界選手権の補欠、四大陸選手権に派遣される可能性が一番大きい。
「でも、マジでトリプルアクセルと跳んだのはすごいな」
彼の隣に
『滑走順に選手をご紹介いたします。十九番、
「美樹ちゃ~~ん!」
「がんばれ!」
みんなで叫ぶと美樹ちゃんが聞こえたのか、笑顔で手を振ってくれるのが見えた。
『二十番、
「あの子だよね? トリプルアクセル跳んだの」
「うん、とてもすごかったよねえ」
「うん……マジで公式練習でね、四回転サルコウを跳んだって聞いたけど」
「そうだよね、ジュニアグランプリファイナルに出るのがすごかったもん」
「その試合見てたけど。死ぬかと思った」
大阪であったグランプリファイナルで佑李君が初めて優勝しているんだけど、ジュニアグランプリファイナルに出場していた黒木美愛ちゃんもすごかったの。
わたしは子どもの頃に笑顔で話すことが多いのもある。
『二十一番、
一条姉妹がここで出てくるのがとても意外で驚いてしまった。
フリーも滑走順抽選をするんだけど……こんな順番があるんだなと思っている。
わたしは友香ちゃんの滑走順を知っているので、少しだけ心配していたんだ。
「大丈夫かな?
「だよな」
『二十三番、
そう。
友香ちゃんは一番最後に滑る、最終滑走だったんだ。
それを引いたときの彼女は絶望しかなくて、信じられないような表情をしていた。
「友香ちゃん、がんばれ!」
友香ちゃんはプルシアンブルーのミニジャケットに白いワンピース姿をしている。
「マジでアニメに忠実だよね。めちゃくちゃ似てたもん」
「わざわざ許可を取ったくらいだから、思い入れはすごいんだよ」
「すごいよね……友香ちゃん」
そのときには笑顔で滑ってきているのが安心しているんだ。
子どもの頃に練習でよく見る顔をしているのを見て、楽しみにしている。
すぐにトリプルアクセルを跳んでいる選手が多いなと思った。
このグループの半分はそれを武器にしている選手たちだったんだ。
そのときだった。
ジュニアで最上位にいる黒木美愛ちゃんが四回転ジャンプを踏み切ったんだ。
四回転トウループをきれいに降りて、さらにサルコウも成功させているのが見えた。
それを見て、同じくジュニアから出場していて暫定九位の涼香ちゃんの顔が険しくなっている。
「マジで跳んできたんだ……すごい」
「あの子、もともと宮崎にいてスケートがしたくて、福岡に来たって。もともとジャンプも天性の才能を持っているみたいで、小学校一年の頃にはトリプル五種類は揃えていたくらいだし……すごい」
「マジか」
わたしはそれを見てすごいなと思ってしまった。
美愛ちゃんの演技を見るのは初めてだった。
彼女はまだ中一、十三歳であんなに跳べるなら、成長期も簡単に乗り越えることができるかもしれない。
その後に咲良ちゃんが四回転サルコウを跳んでいたりしていたんだ。
さらに笑顔で楽しそうにしているのが見えたりしていたんだ。
「美愛ちゃんってマジで今度のミラノ・コルティナに出れんじゃね?」
「う~ん、オリンピック後恒例のルール改正が無ければな」
「確かにね、シニアの年齢上げようって噂出てるよね」
「十七歳だっけ? 最終的に引き上げるのは」
「うん、でも文花ちゃんは大丈夫だよ」
そのときに友香ちゃんがきれいなトリプルルッツ+トリプルトウループを跳んでいるのが見えた。
友香ちゃんはまとめる力が強いから、とても良いかもしれない。
風のなかで滑ってきているのがとても良いなと思っているとわかっていた。
残り一分になってきたときだった。
紫苑さんが四回転トウループに挑戦しているのが見えた。
「ええ‼ マジで紫苑さん」
「四回転……」
わたしは信じられないと思ったりしているんだ。
あの位置に行ってみたいなと思っていたのに、今年はダメだった。
理由はわかっている、緊張してしまったんだ。
特別な空気がすごい怖かった。
六分間練習が終わったアナウンスが流れて、最初に滑る美樹ちゃんが滑るのを待っていたんだ。
会場がしだいに静かになってきている。
『十九番、舘野美樹さん、聖橋学院大学』
会場のボルテージがしだいに上がって、熱気がこもって氷が解けそうだ。
でも、それ以上に熱い戦いが続いているはずだ。
「清華ちゃんから感化されたのか、みんな高難度の構成に目指してる」
そのときに流れてきた『カルメン』の勢いのある序曲が流れてきた。
トリプルルッツ+トリプルトウループを跳んで、そのジャンプはお手本みたいなものだった。
「きれい」
「お手本みたい」
そのときの美樹ちゃんはすぐにトリプルアクセルを跳んで、観客席はとても振動が伝わってくる。
歓声と拍手でみんなが驚いてしまう。
ノーミスで終わった美樹ちゃんはとても笑顔でリンクをお辞儀してから、キス&クライへ向かって歩いて行くみたいだった。
点数はフリー自体だと二位、ショートプログラムとの合計では暫定一位になっていた。ここでようやく順位が下がってしまったけど、なんかホッとしてしまう。
「抜かされたけど、何となく安心してる」
「そうだね。でも、ここまで抜かされない美樹ちゃんもヤバいけどね」
「確かにね」
わたしはそれを聞いて何となくすっきりしている。
その次がジュニアの子でとても注目が多くなっている選手だった。
楽しそうな笑顔で滑ってきているのがわかっているのかもしれない。
美樹ちゃんと比べてとても幼くて華奢な体つきをして、それがすぐにハッとさせられてしまう。今シーズンからジュニアになったばかりの子がここまでになっているのはすごいと思っていた。
『二十番、黒木美愛さん、クリスタル福岡FSC』
淡いピンクの衣装を着ている美愛ちゃんがとてもかわいい雰囲気が伝わってくる。
曲はあまり聞いたことがない曲だった。
「この曲、『春の精霊』じゃない? ほら、清華ちゃんが使っていた『冬の精霊』と同じ『四季の精霊』からの抜粋じゃない?」
「あ、それだ! すごいな……」
美愛ちゃんはあっという間にトップスピードに乗ってクルッと後ろを向いてトウループを跳んだ。
そのまま着氷してから、トリプルトウループを跳んで、着氷の勢いを殺さずに次にトリプルアクセルを跳ぶ。
美愛ちゃんはステップシークエンスがあまり得意じゃないのか、少しだけつたない印象が起きていてレベルが少し取りにくいみたいだ。
でも演技構成点もレベルを上げることができればいいのかもしれない、まだジュニアに上がったばかりなので体力が無くなってきているのが見えてきた。
さすがにジュニア一年目でシニアのプログラムに慣れることはとても厳しい、フリーがたった三十秒伸びただけなのにとてもきついのがとても身にしみてわかっている。
息が上がってきている美愛ちゃんは上手くジャンプが跳べなくなってきているのが見えて、しだいに応援する暖かい拍手を会場のなかであちこちに起きたりしていることが多いの。
「美愛ちゃん、スタミナをつければとんでもないバケモンになるよ」
「わかる! めちゃくちゃ脅威になるよ」
美愛ちゃんは減点とかが重なっているけど、フリーの得点がわたしのを抜いてショートとの合計で暫定二位になっているのが見えた。
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