第21話 誰得?
「さて、どうしようかしら」
地面に転がるドワーフたちとエルフたち。
ドワーフたちは虫の息だし大斧を持っていたドワーフもかなりキツそう。わたしがやったんだけど。
エルフたちもほとんどが重傷。
リーダー格の女エルフも片耳が無くなって今も痛みに顔を歪めている。わたしがやったんだけど。
「クロユリ、子供たちも疲れが見えるわ。あまり時間をかけたくない」
「そうなのよね」
襲ってきたから返り討ちにしたけど、わたしとしても早く魔王城に行きたい。
今はカトレアに土壁を作ってもらって臨時の休憩所で非戦闘員たちは休ませている。
人間ならとりあえず殺して終わりたいけど、ドワーフとエルフって初めて見たし、色々と聞きたいことがあるのよね。ただの興味だけど。
「クロユリ様、ヤツらクロユリ様が幼女のお姿から少女のお姿へと変化した事を知りませんでしたが、幼女のお姿はニンゲンたちしか目撃しておりません。協力関係、又は情報共有を行っているかと」
「そういえばそうね」
情報を共有していた割にはドワーフたちとエルフたちの襲撃がかち合って悪態ついてたわね。
ドワーフとエルフが仲悪いって設定のファンタジーあったけど、ほんとなのね。
「じゃあこうしましょ」
どれだけ仲が悪いのか実験。
面白そう。
「まずドワーフとエルフのリーダーをわたしたちの捕虜とするわ」
「殺せ。下賎な者はおろか、ドワーフなぞと同じ捕虜になるなんて穢らわッ!」
女エルフがまだ生意気だったので顎を蹴り上げた。
「喋っていいなんてまだ言ってないわよ?」
「触れッ!……ぅぅ……」
うるさい。
「次勝手に喋ったら貴女の歯が全部無くなるわよ」
重傷のエルフたちがわたしを睨む。
それなりにこの女エルフは慕われているらしい。
「お喋りさんが静かになったところで、わたしからのステキな提案よ?」
さて、どんな反応をするのかしら。楽しみ。
「ドワーフとエルフのリーダーに選ばせてあげるわ」
カトレアがわたしの顔を見て頭を抱えていた。
そんな顔をする事ないと思うのだけども。
「あなたたち2人が了承すれば部下たちは逃がしてあげるわ」
わたしは大斧ドワーフと女エルフの顔をまじまじと見つめた。
女エルフ、ほんとに綺麗な顔。
「わたしの条件は1つ。2人が今ここでキスをすること」
「「はぁぁぁぁ?!」」
2人とも顔が真っ赤。
残念なのは照れじゃなくて怒りの方っぽいこと。
「長耳となんぞ死んでもごめんだ!!」
「こんな醜い者との接吻なぞ!死んだ方がマシだ!」
ちょっとカトレア、どうして明後日の方向を見ているの?せっかく面白そうなのに。
レビナス、なんで貴女もゲテモノを見るような目でわたしを見るのかしら?あとで拷問しようかしら。
「じゃあ部下たちは今殺すわ♪」
殺気全開で大鎌を召喚して軽快にわたしは今にも死にそうな2人の部下達の元へと歩く。
「ま!待て!……」
わたしの殺気にあてられたのか、ドワーフは声を張り上げた。
女エルフはぷるぷると顔を震わせているけど、怒りを抑えようと必死みたい。
「何かしらドワーフさん?」
わたしはにっこりと笑顔で大斧ドワーフの顔を見た。
「……部下が助かるのだろう」
「ドドルガ隊長!俺らの事はいい!見捨ててくれ」
どんだけ嫌いなのよお互い。
大斧ドワーフはドドルガというらしい。
今知ったわ。3秒後には忘れてしまいそうだけど。
「……信じていいんだな?」
「隊長!……」
「ええ。信じてくれていいわ。わたし、嘘が好きじゃないもの」
そうしてわたしは次に女エルフの前へと歩みを進めた。
「貴女はどうするの?」
「……」
「レフィーネ様!どうかそんな奴との接吻だけは!」
女エルフの部下も、麗しのレフィーネ様の唇は何としても護りたいらしい。
互いを想う心って素晴らしいわね。
「どうするの?」
レフィーネはわたしを穴が空くほど睨み付けている。
そんな鬼の形相のレフィーネの耳元でわたしは囁いた。
「……貴女からのディープキスでさらに部下に回復魔法をプレゼント♪……」
そうなったらカトレアに頑張って貰わないといけないわね。ごめんねカトレア。
ま、レビナスの部下にも回復魔法使える子いるし、大丈夫よね。
「……わかった……」
「そう!嬉しいわ!わたしがいいって言うまでよ!」
どんな顔を2人はするのかしら!
「でわでわ!種族の壁を超えた仲間想いの2人!誓いのキスを!!」
地面に膝まづいて後ろ手に縛られながら少しずつ顔を近づける2人。
一体誰得かと思う展開なのだけれど、わたし得よ。
全く恥じらいも色気もない2人のキス。
そしてレフィーネ様は自ら舌を絡ませるのか?!
ワクワクが止まらない!
2人の周りには熱いエールが贈られているわ!
ヤジに罵倒にPーとかPーとか嗚咽とかお祭り騒ぎ!
……エルフも吐いたりするのね。
互いに肩を震わせながらも唇がくっついた。
わたしの合図があるまでと言ってあるからか、2人は我慢強く触れ合わせている。
2人の熱いキスをまじまじと至近距離で見つめるわたしにレフィーネは諦めたのか、頬から感動の涙を流して舌を絡ませた。
周りからは歓声と悲鳴が上がる!
たっぷり10秒、ドワーフも察したのか絡め合っていた。
「おめでとう!合格よ!」
そう言った瞬間2人は即座に離れて吐いた。
吐くタイミングも同じなのね。
一周回ってやっぱり仲がいいんだとわたしは思うわ。
「こんな嫌そうなディープキスは初めてよ!」
「「死ねクソがッ!」」
そしてわたしはしたり顔でこう言った。
「わたしはクロユリ。呪いと愛を司る魔王よ?よろしくね♪」
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