巻添降下

空は高く、地へと堕ちる

 一人は嫌だ。

 誰かを巻き込みたい。巻き込まないと満足出来ない。

 だから、身体を借りて私は一緒に飛ぶ。

 羽をもがれた鳥はその紐なしバンジーに、落下する景色を、事実を認識して、恐怖を抱きながら、死んでいく。

 そうして、地面に衝突してできるのは、鮮やかな紅の花。

 彼岸花のように美しい、肉塊だった。

 楽しかった。こうすれば仲間が増えるから。

 みんな、一人で死ぬのが嫌だから、どんどんと私の真似をする。

 ある日、道化の仮面をつけた人が現れた。

 どこか明るい様子で、彼は言った。


「“さぁ、ホラー映画の開幕だ”」


 仮面の下はきっと、笑ってるに違いない。

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