スナイパーお姉ちゃん

デルタイオン

第一章

スラムのお肉屋さん

ああ、我が正義。我が罪。我が愛しき者を救う鉄槌は、我が身から放たれたり。

しかし、それは届きはしない。

それを理解しても我が身は止まらぬ。

それこそが可能性。

届くはずのないこの世から抜け出す入り口。

もしも神が居るならば。


「…フゥ~。その入り口。壊すなり何なりとしてみやがれ。クソ女神がよ。」



~AM 09:34~



そのスラムは砂で覆われビルが嵐をなんとか防いでくれるから、なんとか存在している1つの町である。

その町は果物、水。

そして、怪物の死骸。

それが盛んに売られている。

その死骸は万能薬にも、武器にも、アクセサリーにもなる。

食用ではないのが惜しいが、全ての部位が町を構成する上で1つ残らず利用されている。

人類の隣人。

馬鈴薯が生命の種なら、その怪物は死の種。

急激に増えた人口を減らしてくれる唯一の生物だ。

さて、話を戻してスラムのとある一角の出会いの話である。

とある一角では夫婦で経営しているお肉屋があった。

売られている肉は砂漠で取れる希少な肉から、隣町から毎回来る安い肉を扱っていた

そこにマントを着た1人の女性が現れた。


「あの~、すみません。ピグーの肉ってありますか?」


「ピグーの肉?それならあるが…それよりも旨くて安い肉なら沢山あるよ?この肉とかどうだい?」


店番の女性はとある肉に指を指しました。タパラグです。

ピグーの肉よりも0.85$安いです。

ですが、女性は…


「いえ、長持ちするお肉が良いのです。」


そう言いポケットから財布を取り出しました。


「ああ、あんたハンターかい?」


「ええ、そう見えませんでしたか?」


ハンターの女性が首をコテンと傾げ、疑問を示しました。


「いや~、あまりにも美人でハンターとは思わなかったさ。ハンターってのは男がやるもんだと思っていてね?」


「ああ、なるほど。お肉は50gでお願いします。」


「あいよ。オマケしとこうかい?」


「いえ、大丈夫です。」


そして、肉を受け取るとマントに隠れていた背嚢に入れた。

素材は見ればわかるし、ハンターなら大抵はその素材だろう。

それは怪物の革で出来た背嚢だった。

黒く、光りを吸収する背嚢はハンターにとって必需品なのだ。

怪物は昼よりも夜のほうが遭遇率が高い。

だから、こうやって月明かりを反射しない物を好むのだ。

女性は背を向けて歩き始めた。

その背中には背嚢の膨らみとはまた別の膨らみがあった。

店番の女性はそれが武器なのだとわかった。


「あんな嬢ちゃんも化け物を倒す時代か…やな時代になったもんだね~?」


そう言いその背中を見送った。

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