第2話『引越ししましょうか』

100万円手に入れてしまった……


どうやらミアンさんの話によると、

お店に住込をしてロメロちゃんの面倒をみることも含めてのお給料らしい……


「引っ越しのお金を必要でしょ?だから先払い♪」

とのことらしい


高収入にしてもコレは貰いすぎなのでは?


「まぁいいか!!とりあえず今日はオーナーに辞めるって伝えよう……あぁ……引き止められたらなんて言おうかなぁ?引き止められたら今日から住込できないし……でも、何よりお客様には申し訳ないなぁ……メイク専門店で働くことになったらもう担当出来ないのかぁ……そこだけは本当に寂しいなぁ……」


なんだか足取りも重くなる……


「おっ?!サダハル辞めるのか!わかった!みんなもお前が辞めたら喜ぶよ!!よし!今日の予約のお客さんには伝えておくからお前は何も言わずに帰っていいよ!自己都合退職にしとくからなー!!退職金もらえるなんて思うなよ!あと、今まで担当したお客さんには絶対になんも言うなよー!なんか噂を聞いたりでもしたら訴えちゃうからねー!」




……………





「いままでありがとうございました……」


なんだコレ?


あっけなさすぎでは?

むしろなんかスゲー言われたし……


え?

俺の美容師人生こんな感じ?


オーナーに何を言われようと、

お店のために!お客様のために!って理不尽なことにも一生懸命耐えて頑張って来たのに……


悔しいなぁ……

涙が出てくる……


家の前までシクシク泣きながらと歩いていたらもう夜になっていた……


「こんばんは。」


素敵な女性の声


振り返るとおしとやかな声の感じからはイメージのつかない胸元がザックリと空いている真っ黒なボンテージライダースを着こなすスタイル抜群のサラサラの金髪美女がいた


「あっ(汗)こんにちは!えっと?」


すっ……


「えっ?」


その美女はすっと僕の目を拭ってくれた


「はじめまして。エマと言います。

アンドウさんのお引っ越しのお手伝いをしてくるようにと青野さんから言われて来ました。」


「あっ!そうなんですね!すみません……いま家に着いたところで……急ぎますね!」


ガチャ


「急なことでぜんぜん片付いてなくてすみません……」


扉を開けるとそこは今まで苦楽を共にした部屋


「うぅ……」


なんだかいろんな感情が込み上げてきた


堪えろ……俺……


「うわぁーーーーー……」


いい歳になって女性に涙を見られるのは恥ずかったがそんなことはどうでもいいくらい止まらなかった


エマさんはそんな俺をそっと後ろから抱き締めてくれた


母のような安心感に包まれながら俺は泣きじゃくった



ガバッ!!



泣き疲れて俺は眠ってしまっていたらしい……

どのくらい眠っていたのだろう


「すみません!俺寝ちゃってたみたいで!」


あれ?


「お引っ越しの準備はもう大丈夫ですよ。もう終わりましたので。」


荷物は1つもなく、まるで新築のように綺麗になった部屋を見てビックリした


「エマさんが1人でやってくれたんですか?」


「はい。そのために来たので。」


大人の男一人暮らしだけどそれなりに荷物あったんだけど……

1人でできるものなのか?


「ありがとうございます……」


「ではオーバールックへ向かいましょうか。」


「あっ!はい!」


先ほど大号泣してそのまま眠ってしまった手前めちゃくちゃ気まずくてエマさんになんて話しかけたらいいかわからない……


はぁー……


なんてこったー……

こんな綺麗な女性に泣きつくとは……

やらかしてるなぁ……


そんなこんな考えてるとお店に着いた


チャリンチャリン♪


「カラスデさーん。アンドウさん着きましたよー。」


あーあ……


何も話さずに着いちゃった……


俺の泣き顔ひどいんだろうなぁ……


鏡の自分の顔を見る


なんてひどい顔だよ……


???



あれ?


俺の前にいるエマさんが鏡に映ってない?!


えっ?


どうゆうこと?!



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