第17話 変化5
食べ終わると、今日からは互いに食べた感想を書き留める。
「書くのは一行だけでも良いよ」
「ちなみに佐野真綾、お前はどういう風に書いているんだ?」
「えっ? 前見せてなかったっけ……?」
「表紙は見たが中身は見ていない」
「そ、そうだっけ……」
「何を渋ることがある」
「うっ……、じゃ、じゃあ」
神楽小路は受け取ったノートをパラパラと見ていく。とある一日は以下の通りである。
四月二十八日
朝 おにぎり(シャケ)二個 寝坊した。お母さんが置いてくれてたからバスで食べた。
昼 からあげカレー、アロエヨーグルト
おやつ コロッケ 駅の前で移動販売のコロッケ屋さんが! ホクホクしてておいしかった。
夜 白飯、ワカメのみそ汁、サバの味噌煮、サラダ、ケーキ二個(ショートケーキとチーズケーキ) お母さんがケーキ買ってきてくれた。たぶん隣駅の大きなホテルのケーキ。ショートケーキは甘さがかなり抑えられて、物足りなくてチーズケーキも食べてしまった。
ノートを閉じ、佐野に返す。
「なるほど、こう書いていくのか。……それにしても、間食が多くないか? ほぼ毎日だが」
「お母さんと同じこと言う。この世界はおいしいものが多すぎるのが悪いんだよ。それなのに、時間は二十四時間だし、満腹中枢なんて備えちゃてるし。食べたいものが追いつかないよ」
「……お前の思考にはついていけないものがある」
と、会話していると、
「お、真綾じゃん」
二人のいるテーブルに一人の女性がやってきた。オーバーサイズの黒Tシャツの胸元にでかでかと猫の大きな顔写真が印刷されていてインパクトがある。デニムのショートパンツ、ビビットなピンクの厚底スニーカーに、黒のキャンバスリュックとスポーティーな服装。長くしなやかな黒髪はポニーテールにしている。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。