第29話
「それじゃあ採取の方はお願いします」
「任せてください」
「分かったわ、任せてちょうだい」
今日のダンジョン探索は工藤さんとハルカの二人にお願いすることになった。
この頃の工藤さんはダンジョンでモフリンベアーと出会えないかと考えていて、よく採取の仕事を頑張ってくれている。
ハルカは工藤さん1人でダンジョンを行かせるのは危険だと言って、後は彼女を監視するという理由でともに行動をしている…が普通に一緒にモフリンベアーをモフモフしたいだけだろう。
特に2人の中が険悪ということもなく2人だけで何か話をしているところを何度か見たこともあるので安心して送り出している私だ。
一方の私はアヤメと共に森と砂浜の中間地点あたり、足元に丈の短い草が多少生えた緑の絨毯のような場所に立っている。
所々ヤシの木とか生えてるのでほんのり南国気分になれる心地のいい場所だ。
この頃はテントも立てっぱなしでよくテントの中の寝袋で寝ている。
この緑の絨毯にブルーシートの一つも引いて昼寝でもすれば最高の気分で寝れるだろう。
ダンジョンの外は冬だというのにこのダンジョンの中は温暖なのだ。
寒いのが普通に苦手な私はついついダンジョンに入り浸ってしまう。
アパートは暖房をつけても寒いからな~、そんなことを考えているとアヤメが私に話をかけてきた。
「それで? これから何かすることでもあるのヒロキ君~?」
「今日は少し用事があって、アヤメにはそれに付き合って欲しいんだ」
「オ~ケ~、分かったわ」
この前のイフリートとの戦闘でハルカとアヤメが私に支援系のスキルを使った。
後で話を聞いてみるとそれらのスキルは元から使えたのではなくダンジョンが成長した際に新たに使えるようになったスキルらしいのだ。
ダンジョンコアであるハルカとアヤメはダンジョンが成長することによって成長する存在ということだ。
そこでさらに話を聞いていくとなんとアヤメはさらなるスキルをゲットしたらしい。
アヤメが得た新たなスキル。そのスキルの名は『アイテムキューブ』である。
私がいる世界、つまり地球にある物体、そこそこの大きさ以上の生物とかは無理らしいのだがそれらをアイテム化して保存することができるというスキルなのだ。
以前見せてもらった時はお湯を入れて3分経ったカップラーメンを対象に使ってもらった。
アヤメがスキルを発動するとそのカップラーメンが半透明の手のひらに乗るくらいの大きさのキューブ状の物体の中に閉じ込められたのだ。
カップラーメンが小さくなったことにも驚いたがそのキューブ状の物体に入れている間は時間の経過がなくなるという話をアヤメにされた。
つまりほとんどの物の保存が可能になるということである。
今後のダンジョン育成計画を鑑みても大量の食料の保存問題だったり、大きくてダンジョンゲートを通過できない物の運搬だったりも可能とするとんでもないスキルである。
アヤメがスキルを解除するとキューブの中の物は元の大きさ、元の状態で目の前に現れた。
そのカップラーメンは普通に美味かった、麺も伸びてなかったのでアヤメの言葉を信用できる。
そんなわけで是非ともそのスキルの力を借りたいと今回アヤメに協力をお願いしたのだ。
「今日はアヤメには私と一緒にちょっと地球の方に来てもらいたいんだ、少し高い買い物したくてね」
「えっ買い物デート? 悪くないんじゃない~けど後でハルカに怒られるかもね~?」
「なんでだい?」
アヤメと軽口を叩きながら我々はダンジョンゲートに向かう、アパートを出た私が向かうのは近所の個人経営している車屋さんである。
アヤメには以前変身してもらったブレスレットに変身してもらっている。
彼女は見た目がいいので目立つし銃なんていうのは論外、このブレスレットなら変に目立つこともないだろう。
「よし到着したよ」
「ここが目的地? 随分とこじんまりとしてるわね~」
まっ何しろ個人の店だしね。
基本的に車が好きなだけでしてる店だから店を大きくするみたいなつもりはないらしいのだ。
私は車なんて持った事はいないがここで働いている店長さんとはちょっとしたことで知り合いで。
たまにこうやって顔を出しているのだ、店の中に入るとアラフィフくらいのおっさんが顔を見せた。
「いらっしゃい…て一河か。こんな時間に来るなんて珍しいな」
「まあいろいろあって、それについてもちょっと話をしたいし久しぶりに会いに来たんだよ」
「今は客もいないし別にいいぞ、それでどうしたんだよ」
このアラフィフの名前は
とりあえず会社を辞めたことと探索者になって今色々やっていることについても話そうかな。
さすがにダンジョンを手に入れたなんて話はいずれするにしてもまだまだ先の事になりそうだけど…。
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