41 その頃村は
sideアダム
僕の名前はアダム。マーガレットお母さんに作られた生き人形。生まれたばかりだけど、生き人形だから多くの知識を持ってる。
みんなには内緒だけど、古の魔法に刻まれた記憶とかも持ってる。世界を滅ぼす魔法とか、人を生み出す魔法とか、使わないものばかりだから言う必要もないんだけどね。
最初は村でみんなと暮らすのは緊張したけど、最近はだいぶ慣れてきた。
お母さんはなんか湖の方へ行くみたい。僕はどうしようかな、とりあえずナオキと合流しよう。
「ナオキー!」
「アダム、今日は何して遊ぶ?」
ナオキはお母さんが連れ帰ってきた元勇者パーティで、記憶が無いみたい。
記憶を戻す魔法も知ってるから、かけてあげようとしたんだけど上手くいかなかった。なんでだろう?
「そうだなぁ、バレンタインとヤニム、マトンと遊ぶのは?」
「たしかに、今日は訓練おやすみって言ってたし」
よく遊ぶ面子なんだけど、訓練がある日だとなんだかんだで遊びから訓練になっちゃうんだよね。
「バレンタイン!」
「ん? アダムとナオキか。どうしたんだー?」
「遊ぼうかと思って、ヤニムとマトンは?」
「2人とも、酒が飲みたいって引きこもってるよ、私も誘われたけど断った」
「バレンタイン、お母さんにお酒禁止されてるもんね」
「……」
バレンタインは酔うと暴れるみたい。
「いいから、遊ぶぞアダム! ナオキもいるし、模擬戦でもするか?」
「それだといつもの訓練になっちゃうよ」
3人で何をしようか話し合う。うーん、遊びって改めて考えるとなかなか出てこない。実際に遊んでると色々思いつくのに……。
「あ、そうだ! たまにはお菓子とか作るのは……どうしたの? ふたりとも」
なんか、ナオキとバレンタインの表情が怖い。なんだろう? 2人とも村の外へと視線を向けてる。
「……アダム、マーガレットさんと連絡を取れるか?」
ナオキがかなり焦った様子で僕に聞いてくる。魔法でいつでもお母さんとは連絡とれるよ?
「何言ってるのさ……そんなの出来るに決まって……あれ? 出来ない?」
「やっぱりか。バレンタイン、不味いぞこれ」
「結界か? ……ナオキ、アダムを守りながら結界の解除を」
バレンタインもすごく真剣な顔をしてる。しかも、いつもとは違って濃厚な魔力を練り始めてる。
「バレンタインは?」
「私は、とりあえず結界を壊してみる。《魔槍》」
バレンタインが投げた魔槍は空に向かって一直線に向かってく。だけど、上空で何かに阻まれるようにして爆発しちゃった。
「バレンタインの魔槍でも傷一つついてないな。かなりの結界だぞ」
「結構本気で投げたんだけどな……解除は?」
「難しい。短時間じゃ無理だ」
僕も結界を作ってる魔法を解析してみる。うわ……なにこれ、使われてる術式は簡単だけど、物凄い数を組み合わせてるから解除にすごく時間がかかりそう。
「……! すごい数が村に近づいてきてる?! どうするバレンタイン」
「私たちで村を守るしかない。さっきので村のみんなも気づいてるはずだから、みんなで、マーガレットが帰るまで守る!」
バレンタイン、すごくかっこいい。
「アダム、戦えない人を集めーー」
「わかった!」
お母さんから習った転移の魔法で戦えない人を全員この場に集める。
「次は?」
「おぉ……ええと、ゴーレムで守れる?」
「任せて」
100体くらいいればいいかな? とりあえずつくけれるだけ作っておこう。村の外周にも設置したいから……全部で500体くらいつくった。足りるかな?
「……さすがマーガレットの子供」
えへへ、褒められた。あ、けど気を抜いてる場合じゃない。外周のゴーレムが攻撃を受けてる。
「バレンタイン、ゴーレムが壊され始めてる」
「わかった。アダムはここで防衛。ナオキも一緒にいて結界の解除を」
「「わかった」」
「私はこの村に攻めてきたアホを泣かしてくる!」
そういってバレンタインは飛んでいっちゃう。心配だけど、バレンタインが強いのは知ってるし、僕は僕の仕事をしなきゃ。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
sideバレンタイン
戦えない人達はアダム達に任せても大丈夫なはず。敵の魔力からして、多分#天使__・__#だ。
このねちっこくてしつこい感じ、多分悪魔たちもみんな気づいてるから各自で戦い始めるはず。指揮はとれないけど、私が教えこんでるのは少数で動く戦い方だから、きっとみんな大丈夫。
問題は、アーさんとマーガレットがいないしフェンやシラユキも戦えないところ。
私が大物を倒すしかない。
マーガレット城の方はかなりの数がいるけど、強いやつはいないから大丈夫。
強い気配は……4つ。多分かなり上位の天使たち。そのうち1つの方に向かってるけど、多分私に気づいてるな?
「……おお、やっときましたか。魔界の者よ」
「座天使か」
座天使、天使の位の中では上から三番目。燃える車輪をいくつも浮かべてるからコイツらの見た目はわかりやすい。
なんでこいつらほどの天使がこの村に来たんだ? マーガレット、厄介事を呼びすぎじゃないか?
「さよう、我は座天使ソロネ。魔界の者よ、この村を守らんとするのだな」
「当たり前だ」
「愚かな……力の差も分からないのか?」
たしかに、前の私なら多分勝てない。けど、マーガレットと戦ってから私も強くなったんだ。
なにより、私に戦い以外の幸せを教えてくれたこの村を傷つけさせる訳には行かない。
「うるさいクソ天使。かかってきなよ、泣かせてやる」
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