37 村を守りましょう(2)
「召喚獣如きで僕を止められると思うなよ! うぉぉぉぉぉ! 《英雄の剣》!」
『お、俺が召喚獣だと?! 巫山戯るなよ人間、ちょ、待て! お前勇者か?! 痛っ、止まれ!』
「止まれと言われてとまるものか!」
『ぬぐおっ! 貴様ぁぁぁ!』
「かかってこい駄龍が!」
よしよし、フォーレイと勇者はいい感じに戦ってますね。若干フォーレイが押され気味な気もしますが、すぐに持ち直すでしょう。
「あんな龍まで……どこまで邪悪に落ちれば気が済むのよあんた!」
「別に邪悪に落ちたわけじゃありませんよ」
勇者の仲間にがすごい数の魔法を同時発動させて私目掛けて飛ばしてきますが、あれくらいなら弱体化してても大丈夫です。
いや、大丈夫どころか乗っ取れますね。
「どうぞ、お返しします」
「へ? うわぁ?! 何すんのよ!」
上手く連携して防がれてしまいました。うーん、勇者の仲間はさすがに強いですね。いちばん厄介なのは小太りの人ですけど。
あの人、私に敵意を持ってるわけじゃなさそうなんですよねー、戦いには一番貢献してますが。
「あんたが王国に厄災をもたらしてるんでしょう?!」
「厄災という程のことはしてませんよ? 現に、国民に被害はないでしょう?」
「王や騎士団はとっても困ってたわよ!」
それこそ、本来の望みに近いんですが。私のことを全く信じず、挙句の果てには婚約破棄して追放ですよ? 多少嫌がらせしてもいいでしょう。
勇者の仲間は止まる気がなさそうですね。勇者とフォーレイは……うわぁ、地形が変わり果ててます。凄い戦いですね。
『グハハハハハ! 世界の異物として生まれたくせに、その程度のものなのか? 勇者ぁ!』
「くっ、悪しき龍め! 滅びろ!」
フォーレイ、頑張ってますね。そのまま勇者を抑えてて貰えると助かるんですが。
なんにせよ、こっちもそろそろ終わらせましょう。
「ふん。無駄よ! あなたはこっちの魔法で弱体化してる。しかもその効果はどんどん重くなっていくのよ」
たしかに、最初よりも弱体化していますね。小太りの人の魔法のせいです。だけど……私の魔力を抑える魔法、しかもその効果を重くするほどの強烈な魔法を使うのはとても大変なはずです。
「魔法をといた方がいいですよ? あまり無理をすると身体が持ちません」
「そんな嘘信じるわけないでしょ! やれるわよね? たとえ命を削ったとしてもやり続けなさい」
小太りの人に向ける視線。とても仲間に向けるものではありませんね。訳ありな感じです。
「さっさと堕落の聖女を仕留めるわよ! 相当弱ってるんだから」
「弱ってる……果たしてそうですかね」
私の言葉に、勇者の仲間たちは首を傾げます。
「たしかに、男の人の魔法で、私は魔法が弱っています。ですが、身体強化は使えます」
身体強化は体外に魔力を出す訳ではありませんから、魔法とは少し違います。
「身体強化? あんたみたいのが使ったところで何ができるのよ! 黙って死になさい。《豪炎の息吹》」
おっきな炎の塊が飛んできます。全然信じてもらえませんが……身体強化をしてもちゃんと戦えるんですよ?
だって、私の魔力全てをつかって身体強化をするんですから。
例えこれが街を焼き尽くすほどの炎だろうと、かるく払うだけでこの通り。
「……え? かき消したの? 嘘でしょう?」
嘘じゃないですよ。
「覚悟してくださいね? 加減が難しいんですよ……ほら」
軽く地面を踏みしめます。凄まじい衝撃と共に地面が割れました。
地割れは勇者の仲間達に届く寸前で止まりましたね。
「嘘……でしょ? 化け物じゃない……こんなの」
「わかりましたか? 大人しく負けを認めて帰ってくれると助かるんですが」
「そんな訳には行かないな」
『そうだな』
なんか、勇者とフォーレイの声が重なって聞こえた気がするんですが。
うわ、なんか戦闘をやめて私に敵意を向けてるじゃないですか。
『気づいたのだ。俺はお前を倒したくてここに来たということにな!』
「一生気づかなくて良かったんですけどね」
ここにきてフォーレイが敵に回りましたか。面倒ですね。
仕方なく、フォーレイを先に戦闘不能にしようとしたところで勇者の怒声が聞こえてきます。
怒られてるのは小太りの人ですね。勇者に殴られたようで頬を抑えてうずくまっています。
「おい、なんでお前は魔法を使わない! お前の役割を全うしろ!」
「む、無理だ。これ以上使ったら死ぬんだよ!」
小太りの人の言う通りです。それ以上無理に魔法を使うと死にますよ。
「死んでも使え! それがお前の役目だろうが! お前みたいな存在が勇者である僕のパーティにはいれているのだから、それくらいやって見せろ!」
……随分なものいいですね。事情は分かりませんが、勇者のやることとは思えません。小太りの人はもう一度勇者に殴られてしまいます。
その時、首につけた首輪が見えます。……あんなものを使うとは。追い返して村を守るのが目的でしたが、追加です。あの小太りの人を助けましょう。
勇者の振り上げた拳を受け止めます。そしてそのまま殴り飛ばします。
「なっ、どこから現れーーへぶっ?!」
勇者は遥か彼方へ吹き飛んでいきます。骨は折れても死にはしないでしょう。こんなものを使う非道でも、勇者は勇者ですから。
「そのまま星になればいいんですよ。こんなものを使って」
小太りの人につけられた首輪は、通称奴隷の首輪です。禁忌とされてるやつですね。犯罪者でもそうそう使わないですよこんなもの。
『ゆ、勇者?!』
「ついでにあなたも帰ってくださいフォーレイ」
『グフォ?!』
フォーレイの背後にゲートをたてて、殴り飛ばして魔界に押し返します。
「はい。あとはあなた達ですが……星になるか負けを認めるかです」
勇者は星にしました。生きてはいるでしょうけどね。
「負けを認める?! そんなこと出来るわけーー」
「じゃあ星になってください」
「え、ちょ、やめ、きゃぁぁぁぁぁ?!」
全員投げ飛ばしました。遥か彼方に行ってしまうでしょうが、勇者とも同じ方向なので大丈夫でしょう。
「……凄いな。ホントに人なのか?」
「人ですよ。じっとしててくださいね、今外しますから」
奴隷の首輪なんてつけてても何一ついいことはありません。理不尽に虐げられた姿も可哀想ですし、勇者という存在がこんなものを使っていることにも腹が立ちます。
「無理だ。これは外せないものだと聞いた。古い神がつくったのものーー」
「はい、外れました」
「嘘だろ?!」
ちょっと手こずりましたが、これくらい外せますよ。
「さぁ。これで自由です」
「……」
呆然としてますね。できれば連れ帰って休ませたいところですが、まずは残った兵士を何とかしましょう。
魔法で声を大きくしてっと。
「聞こえますか? 勇者は負けました。これ以上は戦っても無駄なのはわかってると思うので、諦めてくださいね」
戦意喪失してますが、念の為にもう少し脅かしましょうか。
「あなたは先に帰っててください。アーさんという悪魔がいるはずです」
アーさんには魔法で話を伝えておきます。ということでゲートでノアに送りました。
さぁ、心を折りましょうか!
思いっきり……地面を殴ります! とりゃ!
「……街ひとつ分くらいの穴が出来ましたね。兵士は……あぁ、これは心が折れましたね。大丈夫でしょう」
これでもうノアには来ないでしょう。それじゃあ、帰るとしましょう。とても疲れました。はやくアダムを抱きしめてフェンをもふりましょう。
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