20 バレンタインの戦闘訓練
「現金、ですか?」
いつもと変わらず、のんびりした日常をすごしている私です。お昼に出てきた美味しいご飯を食べていたところで一緒に食べていたルールーが仕事の話をし始めます。
「そうです。農業も発展しましたし、食料を維持するだけなら大丈夫ですが、肉や魚などの食料は不足してます。あと、嗜好品もないですから……交易を開始して現金を入手、そして取引をするべきかと」
「うーん、前も交易を狙ってこの周辺を視察しましたが、無理そうでしたよ?」
前に周辺地域の偵察を頼みましたが、周辺には小さな村しかなく、交易ができるような感じではありません。
ルールーの話では、ここは王国の辺境で近くに帝国があるという立地のようですから、帝国に伝手を求めるという手もありますが……厳しいと思います。
「いえ、それが行けそうな手をわたくしが見つけてまいりました」
「行けそうな手?」
「聖女会のメンバーに元商人がいるんですけど、その者がこの辺を根城にしているキャラバンがあると言うのです」
あ、聖女会っていうのはルールーの連れてきた皆さんのことです。これまたふざけた名前ですが、彼らからすると本気で言ってるみたいなのであまり表立って文句を言えません。恥ずかしいからやめて欲しいんですけど……。
「キャラバン、危なくないですか?」
「大丈夫だと思います。彼らは義賊のような真似もしているようですから」
逆に危険に聞こえるのですけど。義賊っていうと聞こえはいいですが、襲われる側からするとただの賊です。
「もし交渉することになったら、私を呼んでください。あと腕自慢の悪魔たちも」
「かしこまりました」
そういって仕事の話は終わります。よし、これで今日の私の仕事は終わりです。
ご飯を食べ終わったら、作ってくれた人達にお礼を言って外に出ます。今日は、珍しくすることがあるのです。
「バレンタイン、言われた通り見に来ましたよ」
「マーガレット! 来てくれてありがとう」
今日することと言うのは子供達の戦闘訓練の見学です。バレンタインがどうしても見に来て欲しいと言うので来ました。
「よーし、みんな、今日はマーガレットが来てくれてるから、いつも以上に張り切っていくぞー!」
「「「おー!」」」
バレンタインはちゃんと子供たちの教官を出来ているようですね。ちなみに、私の他にもちゃんとエルフ、悪魔、人間から1人ずつ見張りがいます。子供達だけだと危ないですからね。
にしても、どんな感じで訓練するのでしょう? 子供ですから、軽い運動でしょうか?
「今日は昨日と同じで5対5の集団戦をやるぞ! 魔法は禁止、身体強化も禁止だ、フィールドは岩場、先に敵陣地の旗を取った方が勝ちだ。よし、それじゃあ昨日のグループでやるぞー」
前言撤回です。めちゃくちゃ本気でした。というか、身体強化は私も使えるようになったの最近なんですけど……なんで使えるんです?
「よし、フィールドは……これでいいな! じゃあーはじめ!」
バレンタインが魔法で岩場のフィールドを作り出します。そして、掛け声と同時に子供達のグループのうち2つが模擬戦を開始しました。
「模擬戦? 凄まじい連携力と戦闘密度ですけど」
悪魔、エルフ、人間、それぞれの子供達は緻密に連携をとりながら集団戦を行っていきます。いやいや、連携力だけじゃなく個人の技量もやばいです。魔力無しなら絶対に私は勝てません。というか見学に来てる元王国騎士も口をぽっかり開けて見てます。
そうですよね、その反応が正解ですよね?
「よし、そこまで! 一班の勝ちだな。二班は連携に頼りすぎじゃないか? もう少し個人個人の技量を活かして攻めてもいいと思うぞ」
「わかった! バレンタイン先生!」
バレンタイン、ちゃんと先生をしてますね。
「どうだマーガレット、ちゃんと教えてるだろ?」
「末恐ろしいほどに。しかし、どこで覚えたんですか? 子供達にあそこまでの技術を教えるのは難しかったでしょう?」
「そんな事ないぞ? 私の知ってる事を教えてるだけだ!」
バレンタインはそう言いますが……あ、いつも見張りをしてくれてるエルフさん? はいはい、バレンタインは教えることに関して天才的な才能をもってると。
「これは大人にもやった方がいいかもしれませんね……バレンタイン、今度希望する大人にも戦闘訓練させて上げてください」
「わかったぞ、マーガレットは?」
「私ですか? 私は……そうですね、私より強い人が現れたら参加しましょう」
「それ……参加する気ないだろ?」
バレンタインが胡乱気な目線を向けてきます。いやいや、もしかしたら私よりも強いひとが現れるかもしれないじゃないですか。そうなったら参加します。
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