第17話 イルミネーション彼女 (4日目)
1階がすべて駐車場になっているタイプの大きな電気屋さんに僕達は入った。エスカレータで2階に上がり、ドライヤーの置いてあるコーナーに行った。ドライヤーと言っても、3000円台のものから4万円台のものまでいろいろとある。僕は髪をブリーチして染めているので、普通の人よりもドライヤーに対して関心はあったが、やはり男性はそこまでこだわらない人が多いだろう。結局僕も安いドライヤーを使っていたわけだ。
彼女はドライヤーを鑑定でもするように見て回っていた。僕もあまりよく分からないけれど、それとなく見て回った。
「これどうかなー?」
彼女が指さしたのは2万3000円くらいのなかなか良いドライヤーだ。僕は他のドライヤーとの違いもよく分からなかったが、彼女が欲しがっていたので「それでいいんじゃない」と言った。
彼女はコテも欲しいと言った。コテとは髪を巻いたりするヘアアイロンのことである。彼女は数千円の安いコテを持ってきた。コテにはドライヤー程のこだわりは無いようだ。
「半分お金出してくれる?」と彼女が言った。
僕はそもそも全額出すつもりでいたので、いいよと言ってお会計をした。
電気屋を出た後、僕達はカフェに行ってまったりして過ごした。日が落ちるのが早いので、カフェを出た時には既に薄暗くなっていた。街はイルミネーションが施され、冬のいい雰囲気を漂わせていた。僕達はそんな街を何となく歩いていた。僕は近くの少し高台のような場所のある大きな公園を知っていたので、そこに行こうと提案した。彼女も行きたいと言った。
その公園まで歩いていく道も、冬というだけで何となくロマンティックな感じがするし、何となくカップルが多い気がする。
僕はこの季節、いつも寂しい思いをしていた。恋人が出来たことは何度かあるが、何故かクリスマスシーズンはいつも一人だった。一人の時は憂鬱でしか無かったクリスマスシーズンだが、こうして彼女の隣で歩いていると良いものだなと思った。
彼女は僕の腕にくっついて歩いていた。
「なんか、クリスマスって感じだね」と彼女が言った。
「そうだね、クリスマスまでまだ少しあるけどね」と返した。
なんのイベントでもそうだが、イベント前は1ヶ月ほど前からその到来を待ちわびて、その雰囲気に街が飲まれるものだが、1日でも過ぎてしまうと全ての飾りなどが撤収されてしまう。僕はイベントの終わった次の日の、何もかもがすぐに失われるようなあの感じがとても苦手だった。その点で言えば、クリスマスは終わってもすぐ正月の雰囲気に飲まれるので、寂しくはなくて良いものだとも思った。
僕達はただただ冬の道を歩いていった。
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