おばけちゃんのはっぴーダンジョン計画~カジノとゲームで搾り取る、鬼畜ダンジョンできました~

@Bulbasaur

第1話 チュートリアル

 まっくら。

 とりあえずまっすぐ歩く。あれ、急に明るくなった。

 そこは石造りの部屋だった。正方形で、10人くらいがダンスするにはちょうどよい程度の広さ。その中央に、私は立っていた。

 はて? と思って後ろを振り返ると、そこにはセーブポイント感にあふれるクリスタルが直立していた。

 そうか、私はクリスタルの中にいたのか。

 いやいや、幽霊じゃあるまいし、そんなとこから出れるはずがない。



 あれ? 私の手、透けてない?

 もしかして、死んだの、私。というか、ここはどこ? 私はだれ?



 ま、いっか。なんとかなるよ。




 とりあえず、セーブポイントみたいなクリスタルに手をかざす。するとゲームのステータスみたいな画面が現れる。

 画面上部にはモンスターやアイテム、トラップなどのタブが並んでいる。特に目を引くのが、ダンジョンのタブ。

 このタブを選択すると、さいの目に区切られた立方体が浮かび上がる。中央にはミニチュアにしたようなこの部屋が映し出されており、それ以外の場所は空白になっている。

 なぜかわかる。これはコアルーム。ダンジョンの心臓となるダンジョンコアを置く場所だ。そしてコアが奪われると、私は消えてしまうということも。

 顔を上げて、セーブポイントもとい、ダンジョンコアに視線を移す。

 自分のことはぜんぜん思い出せないけど、このダンジョンの知識はあるようだ。ふしぎ、とは思うけれど。使い方がわかるんだからラッキーと思おう。



 ひとまず、マップを確認してみる。どうやら山の中腹にあるらしい。いまのダンジョンレベルで見える範囲には町らしき影はない。あら残念。

 そのうちレベルが上がれば見えるようになるかな?

 レベルというのはDPという魔力を消費することで上昇する。レベルが上がるとダンジョンが広くなって、さらに作れるモンスターも増えて、アイテムやトラップもすごくなるんだって。

 あとでいいか。

 今優先するのは、外に出てみること。出入口は崩落していて、これをどかすのは骨だ。おばけだから骨ないんだけどね。

 マップで方角を確認して、地上を目指す。壁に向かってれっつらごー!



 地中を突き進むこと数十分。ようやく地上に出られた。

 一直線に進んだ割に、だいぶ時間を取られた。結構遠かったんだなぁ。……私、おうちに帰れるかしら?

 なんとかなるか。

 地上は今、お昼らしい。さんさんと太陽が照りつける青空の下、木々が風に遊ばれて、笑うように葉を鳴らす。

 そういえば、私って太陽って大丈夫なのかな? 別に痛くもなんともないし、大丈夫か。

 気にしても仕方がない。今は情報が必要なんだし。



 まっすぐ右に向かう。しばらく行くと、澄んだ小川が、音を立てて流れていた。

 覗き込むと、銀の髪をもつ少女が映し出された。年は10歳前後、おっとりとした見た目で、苦労とか知らなさそうな顔をしている。私が自分の顔を触ってみると、映る少女の姿も、同じように顔を触っている。

 立ち上がって、くるりと回ってみる。川に映るその少女も、同じように回った。シンプルなデザインの白いワンピースが、ふわりと舞う。

 うん、私だよね。

 おばけなのに、水面に映るんだ。ふしぎ。




 この小川はモンスターたちの水飲み場にもなっているようで、ブラックウルフの親子が、こちらを気にしながらも水を飲んでいた。

 ウルフとはいうけれど、その大きさは日本でいうところのクマ並で、子供ですら大型犬くらいの大きさがある。

 はて? なんで日本とか知ってるんだろ? というか、ここは日本なの? 知識の中では、日本にはモンスターとかいないはずなんだけど。

 うーん、わかんにゃす。

 思い出そうとしても、ここがどこで、私が何者かなんて、全然わからなかった。

 ゲームやらマンガやらアニメやら、そういうのは簡単に思い出せるのに。自分のことになると、とんと思い出せない。


 ううん、と考え事をする私の体を、木の棒が通過する。ちらりと視線を向けると、ゴブリンが3体ほど、私に向かって威嚇するようにきーきー言っている。彼らの縄張りに入ってしまったのかな?

 ひとしきりわめいた後、かんしゃくを起こすように手に持った武器で私に殴りかかる。

 まぁ、私はおばけだから、どんなに攻撃しても無駄なんだけどね。

 よく見るとこの3体、きちんとした装備を付けている。木の棒はその先端に尖らせた石を括りつけてあるし、獣の皮を使った胸当てを身に着けている。これらはゴブリンが作ったものだろう。

 原始的だけど、素人の作ったものではない。

 こうした装備を作れるのは、ゴブリンたちの中に、道具を作る専門のワーカーがいるからだ。なら、この付近にゴブリンの集落があるのかな? 末端にも武器を渡せるくらいに装備が整っているなら、それなりに数がいるはずだし。


 ほんと、なんでこんなこと知ってて、自分のことを知らないんだろ?




 探索を終えたので、ダンジョンに戻ることにする。

 近くにゴブリンの集落があるし、道らしいものは一応あるけど、獣道よりはましって程度。あんまり人の往来は期待できないかも。

 うーん。どうしたものか。



 考えても仕方がない。

 とりあえず、ダンジョンを作ろうか。






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