第33話

 ギルドを出た2人は時間は遅かったがそのままワッツの武器屋に向かうとまだ店は開いていた。


 奥からワッツが出てくるとダンジョンをクリアしたことを報告する。するとワッツがこの前と同じくレミーを呼んで来てくれといいダンが防具屋からレミーを呼び出して武器屋に戻ると2人の前でボスを倒してダンジョンをクリアしたことを報告する。


「お前らなら早晩やるだろうとは思ってたよ」


「それにしてもちゃんと13層、14層で鍛錬をしていけると確信が持ててから挑戦しただなんて立派よ。普通なら2ヶ月以上も同じ場所で鍛錬なんて誰もしないわよ。大抵は鍛錬に飽きちゃうのよね。そうして進んでいって大怪我をするか最悪死んじゃうのよ」


 ワッツもレミーも目の前の2人の行動パターンはある程度予想していた。しっかりと鍛錬してからフロアを攻略していたんだろうと思っていた。


 そうしてボスのトロル戦の話をするデイブとダン。最後まで聞いていたワッツ。


「2人組の戦い方もしっかりと身についている様じゃないか。聞いているだけで安定して倒したんだろうとわかる」


 ワッツの言葉にレミーも頷く。


「それでこれからどうするんだ?」


「少し休んでそれからレーゲンスに行こうかと思ってる」


 デイブが言うと


「レーゲンスか。目的は移動の道中での鍛錬と向こうでの鍛錬か?」


「そう。鍛錬と自分たちの見聞を広めるのが目的かな」


 なるほどと頷いてから


「俺達が行ったのは随分と前の話だが」


 そう言ってワッツが話しだした。移動は徒歩で60日程度と長いが基本は街道を歩いている分にはそう危険はないらしい。道中はほとんどが荒野だが出てくる魔獣はせいぜいランクBクラスだったと。そして続けて、


「ただこれは随分と前の話だからな。とは言ってもお前らなら移動は問題はないだろう。道中で仮にランクAが出てきても問題なく倒せるだろう。逆に言うと道中では相手が弱すぎて鍛錬にならないかもしれないぞ。そしてレーゲンスだが街自体がこのヴェルスよりも大きい、人も多い。そして街の周囲にダンジョンはある。腕試しはできるはずだ」


「なるほど。じゃあ距離は60日程かかるけど街自体はここやラウンロイドと変わらないってことか」


「そうだな。街の中には何でもある。もちろん冒険者ギルドもだ。暫く腰を据えて鍛錬するといいだろう」


 ワッツが話をした後でレミーが、


「レーゲンスは大きな街よ。街が大きいということはいろんな人がいるってこと。冒険者についても同じね。皆がいい人ばかりじゃない。中には他所から来た冒険者を下に見て暴言を吐いたり喧嘩を売ってくるのもいるでしょう」


 そう言ってから2人を見て


「そう言う時は遠慮しちゃだめよ。叩きのめすの。この2人にはどうやっても勝てない。そう思わせる位にしないと逆になめられるわよ」

 

 女性のレミーの口から過激な言葉がでてきて逆にびっくりする2人。隣でワッツも苦笑しながらも


「こいつの言う通りだ。最初が肝心だ。売られた喧嘩は買うんだ。そして叩きのめせ。お前らならできる、遠慮はするな。ただし殺すな」


 目の前の2人は冒険者の時に何度もそういう場面に遭遇してそうして何度も喧嘩を売ってきた相手を地面に叩きつけてきたんだろう。ワッツに喧嘩を売るとは相手も見る目がないやつだったんだなと話を聞きながらダンは思っていた。



 ダンジョンをクリアした翌日は完全休養日になった。

 デイブは情報収集目的でギルドにきていた。


「よう、デイブ。今日は1人かい?」


「そうなんだよ。今日は完全休養日でね」


 そう言って顔馴染みの知り合いと挨拶をしてから誰かレーゲンスについて詳しい奴を知らないかいと聞くと1人が


「ちょうどレーゲンスからやってきたというパーティがいるぞ。さっき話をしたらそう言っていた。今ギルマスに挨拶してるはずだからここで待ってたら戻ってくるんじゃないか?」


 そう言うので知り合いと雑談をしているとあいつらだよと教えてくれる。そちらに顔を向けるとちょうどギルドの奥から出てきた5人組がいた。


 デイブの知り合いが声をかけると彼らが酒場に入ってきた。


「こいつはデイブ。二人組のランクAの片割れだよ。なんでもレーゲンスについて教えて欲しいって言ってるんだ。教えてやってくれないか?」


 デイブは近づいてきた5人と挨拶をする。


「赤魔道士のデイブだ。ランクはA。ここヴェルス所属でもう1人暗黒剣士の男と2人組のパーティを組んでいる」


「2人組でランクA?」


 黙って聞いていたリーダー格の男が声をだした。するとデイブの知り合いが


「こいつともう1人のダンという暗黒剣士の2人、こいつらめちゃくちゃ強いぞ。昨日も難易度の高いダンジョンを2人でクリアしてきている。腕は折り紙付きだ」


 その言葉にびっくりする5人だがよろしくと言いながら自己紹介をして酒場の隅に移動してテーブルに座る。


ランス 盾

スコット 戦士

ボブ 戦士

ミオ 僧侶

ジョアンナ 精霊士


 5人組でランクは全員がA。僧侶と精霊士は女性だ。


「で、レーゲンスについて聞きたいって?」


 ランスが聞いてくるとそうなんだよと言い


「武者修行で2人で行こうかなと思って。途中の街道の様子やレーゲンスの様子、気をつけた方がいいことなど事前にわかれば良いかなと思ってさ」


 と明るい口調で聞いてくる


 デイブは社交的で明るい性格だ。大抵の冒険者とすぐに打ち解けることができる。当人の性格もあるんだろうが当人は普通に話をしているだけでいつの間にか相手との垣根が低くなる。


 ランスは同じメンバーと顔を合わせてからデイブを見ると、


「俺達は昨日護衛クエストで商人に同行してこのヴェルスにやってきたんだよ。レーゲンスから60日弱の移動だった。道中は大きなトラブルはなかった。せいぜいランクB、たまにランクAが単体で出てくる位だったよ」


 デイブは相槌を打ちながらランスの話を聞いている。

 ランスの隣に座っている戦士のスコットが


「レーゲンスの街も基本はここと同じさ。ギルドがあって街の周辺には魔獣がいるそして少し歩けばダンジョンがある。俺達はまだこの街はよく知らないが売っているものについてもそう大差はないだろう」


「今朝ジョアンナと2人で街を歩いてみたけどレーゲンスにあるものはこっちでも売ってたわよ。値段も似たり寄ったりだった」


 僧侶のミオが言うと隣でそうそうとジョアンナも言う。


「となると特に準備したりする必要はなさそうだね」


「水」


 そう言ったのは僧侶のミオ。


「こことレーゲンスの間はほとんどが荒野で川がないの。水は多めに持っていくといいわ。でないと大変なことになるから」


「なるほど途中に川がないのか。それはいい情報だ。たっぷりと水を持っていくよ」


 デイブが言い、


「それでレーゲンスの周辺の魔獣のレベルは?」


「大抵の街と同じだろう。ランクCからランクB、森の奥に行きゃあランクAもいる」


「なるほど。それとダンジョンか」


 その言葉に頷くランス。


「結構でかい街だ。ゆっくりして街も楽しんでくれよ」

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