第31話
一旦街に戻った2日後、2人はダンジョンの14層に飛んでいた。
「今日でケリをつけるぞ」
背中にデイブの声を聞き通路に進み出したダン。途中で出会う2体、3体のランクSをデイブと2人でさっくりと倒しながらフロアを攻略していく
このダンジョンで相当数のランクSを討伐して鍛錬をしてきた彼らに取っては今やランクSの単体は相手にならない程で、複数体でもまるでランクBを相手にしている様に剣と魔法で蹴散らしながら進んでいった。
そうして15層に降りる階段を見つける。
階段を降りると予想通りそこはボス部屋で目の前に大きな門、その左にはレバーがある。
「さて何が出てくるか」
ボス部屋の前で休憩しながらの打ち合わせだ。
「何がきてもボスを挟む様に立って正面と背中から交互にタゲを取りながら攻撃するってことで」
「わかった」
休憩が終わると立ち上がる2人。ダンが2本の片手剣を抜いて扉の前に立ちデイブがレバーの前に。お互いに顔を見合わせて頷くとデイブがレバーを下げた。
ゆっくりと扉が左右に開いていく。そうして中の様子が見えてきた。
「トロルだ。オークの上位種だな。しかもジョブはナイトだ」
ダンの後ろに立ったデイブが声を出す。2人の目の前には身長が3メートル近いトロルが1体広場になっている中央に立っている。そしてそのトロルは鎧を身につけて左手には大きな盾、右手にはこれまた大きな片手剣を持って睨みつけている。
「どんなタイプでもやることは一緒さ。目の間にいるこいつを倒すだけだからな」
ダンはそう言うと広場に入っていった。少し遅れてデイブも広場に入る。トロルは最初に広場に入ってきたダンをじっと見ていて、ダンが右に移動するとそちらに体を向けてきた。その間にデイブが左側に移動してトロルを前後から挟む立ち位置になる。
睨み合ったかと思うと大柄な体からは想像もつかない速さでトロルが片手剣を突き出してきた。それを読んでいたダンは身体をずらせて剣を交わし、同時に片手剣でトロルの右手の鎧に覆われていない部分に剣を振る。
背後からデイブが雷の精霊魔法を首の後ろ、これも鎧で覆われてない部分に撃ち込むと身体をデイブの方に向けたその瞬間にダンの片手剣が首の後ろを狙う。
大きな叫び声を上げながら片手剣を振り回してくるトロル。鎧に剣や魔法を当ててもダメージが与えられないと見た2人は最初から鎧で覆われていない皮膚を直接剣を魔法で狙っていく。このあたりは14層であらゆるタイプのランクSとの戦闘を経験してきた2人ならではだ。
トロルは前後から交互に、ときには連続して鎧をしていない身体を正確に攻撃され、一方自分の攻撃は交わされて剣が当たらない中で徐々にイライラとしてきたのか動きが大きくなってきていた。
動きが大きくなると隙が出てくる。徹底的に剣と魔法で同じ場所、手首と首の後ろを攻撃する2人。トロルが背中を向ければ精霊魔法を、こちらを向けば剣と常に前後から攻撃を仕掛けて、それを続けていく。
厳しい鍛錬を続けていた2人は長時間の戦闘でも疲れにくい体になっていた、その上ダンはジョブの特性で剣で切り裂くと体力が回復するのでほとんど疲れていない。
休みなく攻撃を続ける2人。そしてトロルはその動きが段々と遅くなってきた。
「これで決めてやる!」
デイブの攻撃でトロルが背中を向けたそのときにダンは大きくジャンプすると両手に持った片手剣を何度もトロルの首の後ろに振ると、大きな叫び声を上げたトロルの首と胴体が離れて首がそのまま広場に落ち、遅れてトロルの胴体がドスンと音を立てて広場に倒れた。
「やったぜ!」
ハイタッチをしているとトロルが光の粒になって消え、その場に宝箱が現れた。デイブが箱を開けると中には大きな魔石、そしてバンダナと腕輪、指輪が入っていた。
デイブがそれらを魔石にしまうと広場の隅に石板が現れていた。
「始まりのダンジョンと同じだな」
「そう言う事だ」
そうして2人は石板にカードを当てると地上に戻っていく。
そうして夕刻にヴェルスの街に戻ってきた2人。ヴェルスに戻るとそのままギルドに顔を出してダンジョンのボスを倒したと言い、ギルマスとの面談を求め、受付嬢に案内されて奥の執務室に入っていった。
「ダンジョンクリアしたのか?」
ソファに座るなり聞いてくるプリンストン。
テーブルの上にボスを倒した宝箱から出た魔石やアイテムを並べていくデイブ。
「ボスは何だったんだ?」
「ナイトタイプのトロルだった。鎧を着て盾を持って片手剣を持ってたよ」
「魔石を確認するが間違いないな。それがボスだ」
プリンストンは目の前の2人が攻略しているダンジョンについて調べていた。ワッツとレミーとここで当時のボスの種族やジョブについても事前に聞いていたのだ。
そうして
「強かったか?」
これにはダンが答える。
「鎧を着ているから硬かったよ。でも強くはなかったかな。結局俺もデイブも一度もダメージを喰らわなかったからな」
「どうやって倒したんだ?」
「2人で剣と魔法で鎧を着ていない手首の部分と首の後ろ、この2箇所だけを何度も攻撃したんだよ。丁度ボスを挟む様に立ってダンが剣の時は俺が魔法で。その逆もそうして休む事なくこの2箇所だけ集中的に攻撃して倒した」
デイブの説明を聞いていたギルマスは思わず唸り声を上げる。難易度が高いダンジョンボス。それを2人でしかも同じ場所を何度も攻撃しながらも自分たちは一切ダメージを受けずに倒し切る。普通ならありえない話だ。この2人はまた数段強くなってるのか。
その思いは顔には出さずに、
「なるほど2人だからこそのやり方だな」
「そうかもしれない」
そうしていると査定をしていた受付嬢が部屋に戻ってきた。
「魔石はトロルで間違いありません。そして装備品ですがバンダナは素早さを上げる効果がついています。腕輪は二刀流効果アップ、そして指輪は精霊魔法の威力が増す指輪です」
「ちょっと待って、それって俺たちに必要なものばかりじゃないの」
思わずダンが言うとデイブもドンピシャのが出てるじゃないかと言う。
「ダンジョンはな」
そう言ったプリンストンによるとダンジョンではボス戦に挑戦したパーティメンバーのジョブに関連した装備や武器が出るらしい。
「理由はわかっていない。5人でクリアすると5人のジョブに関係ある装備や武器がランダムで出る。お前さん達は2人だ。しかも同じ系統のジョブだ。だから全てドンピシャのが出てきたんだと思うぞ」
そうなってるのかとダンはギルマスの説明を聞きながら納得していた。なるほどと声に出して納得したデイブ。そうしてテーブルの上の指輪を手に取ると
「ダン、お前はバンダナと腕輪だ。俺はこの指輪をもらう」
「指輪だけでいいのか?」
「次のダンジョンで出たら優先的にもらうさ」
そうしてその場で新しい装備を身につけた2人。それを見ているギルマス。2人が装備を終えると、
「それでこれからはどうするんだ? 他のダンジョンにも挑戦するのかい?」
「いや、このダンジョンをクリアしたらレーゲンスに行こうと決めていたんだ。2人で武者修行に行く予定さ」
「なるほど。お前達なら普通にレーゲンスまで行けるだろう」
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