【別府・5】どうなる?狐のごん(兵衛)

 やはりこんな逆転現象は必然か……

 https://kakuyomu.jp/works/16816927860630530111/episodes/16816927861495669749


 ◇ ◇ ◇ ◇


 1559年4月下旬

 上杉本陣

 本庄実乃

(ドラゴンの若い頃からの軍師役)



「なんとか敵陣へ乗り込みましたな」


 中条殿が機転を利かせて南風の弱まりを読んで、白煙を充満させた。そこへ南から大胡の射撃をものともせず突っ込んだ。今頃、白煙の中死闘が繰り広げられているであろう。


「まだだ。他の3方向が分厚い。これを内側から崩せば勝利だが……」


 西の大胡の陣を見やり、御本城様はピンと張りつめていらっしゃる。

 戦場では天賦の才を発揮成される。正しく軍神といえよう。

 儂も目を凝らして白煙の中を伺った。


 ◇ ◇ ◇ ◇


 方陣南部正面

 高崎権兵衛

(あまり可愛くない狐)



「ツーマンセルで1人ずつ仕留めよ! 銃剣の者の背後に散弾拳銃!」


 中隊長が叫ぶ。

 それは俺が言わなければ狙われるだろうが。

 お前……名前は誰だったか?


 いつも冷やかしで中隊長2号と呼んでいたから忘れちまった。

 悪いなぁ。


 お前、凛々しすぎるから目立つ。


 だからもっと引っ込んでいろよ。敵のど真ん中に居やがる。俺は小隊長がやられた右翼を受け持っているが、これはまずいなぁ。


 白煙が南面を覆う前に確認した限りでは、西の揚北衆らしき精鋭が1500位は南部に移動していた。

 これが全部突撃してきたとしたら、この250名の南部正面は持ちこたえられるか?


 敵は手槍を持っている。

 長柄は捨ててきたらしい。

 中には弓兵も混じり出した。

 近距離で矢を放ってくる。


 乱戦だなぁ。


 俺は手足が短い。

 大して役には立てん。


 だから拳銃を9丁持っている。

 重いったらない。

(べ、別に九尾の狐じゃない!と、自分で突っ込む)


 そして背後には従兵。

 要らんといったんだがなぁ。


 旅団長の命令で付けられた。

 普段は一緒になって家の庭に作った畑を耕しているが、此奴は槍の使い手だ。


 幸い此奴だけは手槍を持っている。

 頼もしい。

 鍬の方が似合ってるんだがなぁ


「大隊長! 第2中隊長負傷! 重傷の模様。指揮は第1小隊長が継承!」


 目立っていたからしょうがないか。

 この仇は……

 というわけにはいきそうもないな。


 目の前に越後兵4名が迫る。

 手にした冬木式は長さ半間ちょっと(1m10cm)。これ以上長いと小兵の兵が弾薬を込められなくなる。


 そのため、このような手槍との取っ組み合いには長さが足りない。そこで長巻を思い浮かべるような銃剣を付けている。


 刃渡り1尺以上(40cm)以上の大脇差を付ける。


 これでも手槍に先手を取られる。

 そこで誰が考案したのか、片鎌槍のような鉤爪を下に付けた。

 これで槍を巻き取り柄に沿って前進し突きを入れる。

 これが大胡の銃剣術だ。


 右の敵兵が最初に動いた。

 構わず腰だめで近距離射撃。

 どてっぱらに大穴が開いた。


 左の敵がひるまずに突っかけてくる。

 槍を巻き取って近づき胸を刺す。


 倒れた敵を踏んで銃剣を引き抜いたところに、他の2名が近寄る。


 こいつはやばい。


 と思った途端に銃声。

 従兵がピストルを発射して、一人を射殺。


 俺は眼で感謝の意を伝えて、怯んでいる敵に銃剣をしっかりと保持し腰を低くして構え、突っ込んでいった。


「大隊長! 西正面から2個小隊援軍に来ました! 敵左翼を蹴散らします!」


 後ろから声がした。

 馬鹿! 中隊長4号! 

 自分でこっちへ来るな!

 西に何かあったらどうする?!


 しかたない。


「射撃後、銃剣で突っ込め! 敵後続を狙え。撃てぃ!」


 ◇ ◇ ◇ ◇


 上杉本陣


 本庄実乃

(忠臣だけど大熊との派閥争いで大変)



 乱戦となった。

 これは思ったより揚北衆に被害が出る。

 何とかせねば。


「右翼の大熊を西に回り込ませ、手薄になっていよう西を攻めよ」


 やはりそれしかあるまい。

 大熊に手柄を立てさせるのは本望ではないが、このままでは損耗が大きすぎる。

 一気に片を付けねば。


 直ぐに手配させるよう命を伝えるがそれで間に合うのか?

 別動隊の殆どが突っ込んでいよう。


 それに従い大胡も西から兵を引き抜き南に当てていよう。

 乱戦の方が付くまでに大熊が突っ込むことが出来るか? 

 それで勝負が決まるであろう。


「申し上げます! 南の上条後衛から使い番! 南方より大胡らしき兵多数!1000は下らぬ模様!!」


「距離は!?」


 焦りから声が裏返った。


「すぐに鉄砲の射程圏に!」


 ぱぱぱぱ~ん!

 ぱぱぱぱ~ん!

 ぱぱぱぱ~ん!


 南方から一斉射撃音。


 これで南部正面は裏崩れするであろう。

 あちらは戦線崩壊じゃ。


「その備え、どちらへ向かうか見て参れ」


 その必要は無さそうだ。

 煙が晴れてきた。


 南方間近に青紫の甲冑を纏った軍勢約1000。

 その後ろにも1000程は続いていよう。大胡の陣の西をかすめ北へ足早に行軍していた。その者たちの足が、更に速くなって小走りに近くなっていく。


 太鼓の音が聞こえてきた。あれに合わせて行軍して来たのか? 

 聞こえなかったのが不思議だ。


「敵は誰じゃ」


「はっ! 大胡には珍しく旗印を掲げています! 白地に青く桔梗紋。

 あれは……」


 聞いたことがある。

 大胡には緊急の際に手当として派遣される部隊があるという。


 確か……

「きゅうきゅうばこにキンカン」

 と言っていたか。


 「明智十兵衛光秀! 滝山城守備隊です!」



 🔸🔸🔸🔸🔸🔸🔸🔸🔸🔸🔸🔸🔸


 お読みくださりありがとうございます。



 作者の趣味です。

 やっぱり光秀っていい奴だと思うんです。真面目で朝廷を蔑ろにしない教養人。かつ戦術・内政に長け、ついでに鉄砲も上手だった。

 ただ惜しむらくは「機会主義者」(そうでなければ出世しません)で周りから嫉妬を買っていた。それを秀吉みたいにずる賢く躱せなくてドツボに嵌まった。

 だけど平民には優しい。妻にも子にも優しい。


 何処が悪いのよ?

 彼奴(魔王)を止めねば今頃日本、なくなっていたかもよ?

 英雄じゃん?

 ということで「もっとひどい破壊者」な魔王を補佐していただきます。こっちの魔王は日本をどのようにしていくのか??

 お楽しみに~




 ナポレオン時代のデータでちょっと合わないと思うのですが、参考までに。

 オーストリア軍の行軍速度が太鼓に合わせて1分間に90歩。

 フランス軍がラ・マルセイエーズ(今の国歌)を歌いながら1分間に120歩平均だそうです。凄まじい行軍速度だったそうで。

 アウステルリッツの会戦でナポレオン旗下の最高の元帥?ダヴーの部隊4300(大砲も12門あった)は110kmを48時間行軍、そのまま戦場に突っ込んでいきました。これが決定的な一撃となって大勝利します。1日55kmってどんなよ? それで戦闘突入ですよw

 道路の状況にもよりますが、この明智軍もまだまだ甘いと思いますね。




 ついでに書くと、筆者の一番好きな自作品は

【転生ヲタク光秀。本能寺したくな~~い!!】

 転生ヲタク光秀。引きニート希望中:おまいら放せっ!俺は絶対に本能寺しないからな!勝手に陰謀めぐらすな!

 https://kakuyomu.jp/works/16817330647991289437


 です。


 ぜひご覧ください。

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