【忍城・2】強行突破はお手の物
地図です
https://kakuyomu.jp/users/pon_zu/news/16816927860881237407
◇ ◇ ◇ ◇
1559年4月下旬
忍城北半里
東雲尚政
「この配置。完全に誘っているな。南が弱すぎる。唯一の攻撃口に2000しか配置して居らん。東の御塚山本陣が約3000と言うところか。旗印からは数百の古河公方の手勢がいるか」
三方向を荒川に囲まれた忍城。
普通なら南から攻城する兵がわんさかいるはずだ。北と西は500もいれば十分。そこに北は2000、西に1000とか、見え見えだ。
しかし、その内動くだろう。
敵もこっちが竜騎兵と分かったんだ。
こちらからは先手は打てん。
やるとすれば西の攻囲勢だ。此奴をかく乱する程度しかできん。
どうせ作戦目的は遅滞運動だ。このまま待っていてもいいんだが……
雨が降ると火縄が濡れて我攻めの危険が。将又増水して攻囲軍側が不利か。
どうする?
「敵に動きあり! 稲荷山より敵本隊下山しつつあり。東方へ向かう模様」
おっと、こうしちゃいられん。
早く戻らないと南で孤立する。
機動力があるのはこういう時は便利だな。
「前方3段索敵しつつ本隊に合流する。罠に嵌まるような間抜けは置いて行くぞ!」
皆が笑って馬を輪乗り(注1)しながら馬首廻らす。
皆、乗馬の達人になった。
体格の良い奴なら馬上槍も行けるだろう。騎兵銃は皆装填済みのものを4丁持っている。鞍の左右に2丁、腰の後ろに2丁だ。
大分重いが頑強な馬を配備している。東国の馬を大分かっさらってきたからな。
足軽の移動速度の数倍は速い。普通にいけば15分(注2)もすれば、半里(2km)離れている本隊に辿り着ける。
「旅団長! 渡河地点に敵兵! およそ300!」
索敵の騎兵が戻ってきた。
よくやった。
埋伏か。
先だっては隠れてこちらを奥深くへ誘ったか。
やはり軍神だな。
やることが憎いぜ。
ついつい|顎鬚(あごひげ)に手が行く。この55号は顎鬚にし、左右に広げたのだが、つい下へ引っ張ってしまう。顔が逆に長く見えてしてしまうではないか!
西へ逃げる手もあるが、あそこは泥濘が酷いという。
そこかしこにある。
「推し通る! 第3中隊。正面で左右の敵に散弾発射後、後退。第2中隊、槍で突撃。振り回せる奴は槍だけで戦ってもいいぞ! 訓練の成果を越後の田舎者に見せてやれ!」
ここまでくれば、もう鬨の声で十分だ。敵もこちらに発見されたことは悟っている。目の前3町もない。
ああ。
上杉本隊は北10町に迫っているか。
一気に押し通らねばやばいな。
吾妻の奴が北から攪乱してくれるだろう。
できればこっちの埋伏の背後を襲ってくれれば……
「敵後方、友軍。第1大隊の先鋒です! 散弾発射4連射。敵伏兵逃走に入りました」
やっぱり吾妻は切れるな。
ただ待機しているだけじゃなく四方八方へ隈なく物見を放っていたか。もう少し腹が座って、部下から信頼されれば俺の後釜も任せられる。
前方に退路が出来た。
さて仕切り直しだ。地図に敵陣の情報を書き込んだことで今回の散歩は終了だな。
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注1)
輪乗り:騎馬の高等技術。
乗馬をその場で8の字に動かし、
騎乗手の体を常に前に向けている乗り方。
源平合戦に置いて
東国武者は当たり前に出来たが
西国武士はほとんどできなかったと伝えられている。
騎馬技術の勝利ともいえる。
注2)
大胡の技術進歩がある程度進行したので今後は時間を時分で統一します。
でもまだ日時計なのかな(^▽^;)
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